レイフ・オヴェ・アンスネスのピアノリサイタルを聴いた。今年(2010年)はシューマン、ショパンの生誕200年、とあって、昨日に引き続き、今日もシューマン&ショパンプログラム。リサイタル直前のピアノのレッスンで、先生に「シューマンがどうしても好きになれないんです」と告白した私であるが、今年こそはちょっとシューマンを好きになってみようと意識して聴いてみた。
が、やっぱりシューマンは苦手である。なんというか、和音が間違っているような気さえしてしまう。最初はアンスネスが間違えたのかと思ったが、何度同じあるいは同様のフレーズが来てもその音なので、シューマンの和音が嫌いなのかもしれない。アルペジオも「要らないんじゃない?」と思うのだ。これはシューマン克服には相当の時間がかかりそうだ。
子供の情景は、後半でなぜかそのままベートーベンのピアノソナタ(第21番「ワルトシュタイン」第3楽章)に移行してしまうのではないか、という変な感覚に襲われた。
シューマンの間に演奏されたGyorgy KurtagのSeletion from Jatekokという曲は2階席一列目中央という条件もよかったからかアンスネスの手の動き、体全体で作られる表情が良く見え楽しめた。また、音も非常に表情豊かで、まるで絵画が見えるようであった。絵画、といっても古典的なものではなく、とてもシンプルで無彩色な感じだ。
後半はショパンのバラード、ワルツ、ノクターン。ワルツのリズムが非常に良かった。ポーランド人でもない私が言うのもなんだが、非常に「正しい」ワルツのリズムで、この人はおそらくマズルカも正しく演奏できるのではないか。最後に演奏されたバラードの1番は、体全体が音楽と一体化して、その動きや呼吸も音楽を作るために無駄がなかった。
アンスネスはテクニックが非常に正確で、信頼の置ける演奏家、と思われた。また音色も多彩。繰り返しのある演奏では1回目と2回目では明らかに音の表情が変わっている。直前のレッスンで和音一つまともに演奏できなかった身としては、ただただ尊敬するばかり。
アンコールで演奏されたバッハもまた素晴らしく、レパートリーの広さにも感心。それにしても、さっきまでシューマン、ショパンで、いきなりバッハをこれだけ素晴らしく演奏できるなんて-プロでもなかなか居ないように思う。
以前聴いたアムランと同じ系統の演奏家ではないか?-解釈が正確でそれを確実に表現できるテクニックがある-客層もそれを裏付けているかのように思われた。