友人のピアニストから、コンサートのお誘いをいただいた。なんと、当日のお誘い。イタリア人で普段はイタリアを中心に活躍する彼女、この機会を逃すのは惜しい、と会社の帰りにそのまま伺った。
ところが、これが間違いの元であった。なんと、そのコンサートはプライベートコンサート。主催者のマダムのご自宅での極めてプライベートなコンサートだったのである。出席者、ロングドレスではないけれど、皆さんイブニング用のショートドレスに着替えていらっしゃる。。。
外からは普通の家にしか見えないのだけれど、一歩足を踏み入れると、お手伝いさんが複数、壁にはタペストリーが掛かり、お部屋の中には、古い絵画、銀器、陶器。。。やっぱりロンドンにはいくらもお金持ちっていらっしゃるのね、と感嘆。
そして勿論、挨拶はNice to meet youではないのである。あの、マイ・フェア・レディの「How (pause) do you do ... (smile) ...」。相当場違いな私。
ああ、大失敗。なぜこういう日に限ってパンツスーツなんだろう。深く反省。
マダム所有の1920年代製造のスタインウェイで、友人がバッハ、リスト、ショパン、ドビュッシーを弾く。彼女はとても小柄なのだけれど、いつもパワフル。でも、今日はショパンの英雄ポロネーズが印象に残った。ちょっと優しい、歌う英雄。
帰り際、マダムに今日の非礼を詫びると、明日、別のコンサートがあるから、いらっしゃい、と再びお誘いを受ける。
明日こそリベンジ!
パリの街を初めて訪れたのは、15年前のこと。そして、この街と恋に落ちた。
このところ、お友達と一緒に行動する事が多く、彼女たちとの楽しい話で頭の中がいっぱいだったけれど、久しぶりに一人でパリの街を歩いて、この街の魅力を再発見。
まるで美術品のような日用品、秋冬コレクションのディスプレイ、幾つ胃があっても足りそうにない数の美味しそうなケーキ屋、パン屋。さらに歴史の中から生まれて来た、あるいは歴史の舞台でもあった場所、建物。
そして、恋に欠かせないのは記憶。この場所は、もう私の中で一つの「場」として記憶されている。パリは君について回る、といったのはヘミングウェイだけれど、私にはこのカフェがついて回っている。
おっとこれでは、カフェではなく、ご飯がついて回っている、ってことだわ。まあ、いいか、本当のことだから。
友人を空港で見送るまでの、ほんの数時間ではあったけれど、パリに恋している自分を再確認する事ができた、幸せなひととき。
また、近いうちに戻ってこよう。永遠の恋人の元へ。