風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

高次脳機能障害、後見人と医師の対応

2010年01月12日 16時49分21秒 | エッセイ、随筆、小説





私の後見人である行政が医師へいくつかの質問を投げた。
その回答に時間がかかり、その後、私へ医師から直接連絡が入った。

私には行政が診断書を取り寄せながら支払いを拒否しているため、
「私」が立て替えて支払いをして欲しいといきなり言われたのが去年のクリスマスイブ、
が、医師は行政に対して「診察やセラピーの未回収分」と説明しいたらしいが、
もしそれであるならばあまりにも金額が大きいので、
また話の辻褄が合わなくなりますね、と担当者が説明、
私は当初の説明と相違するんですね、
やっぱり・・・・・・と思わず言葉とため息を漏らしたのは今日の午後だ。

ちなみに行政は医師が患者である私に診断書料を請求する一ヶ月も前、
その支払いはすべて終わらせてあると説明に加えた。
どのような説明をしたところで2万円近い金額を、一割負担になっている私の医療費請求をする場合、
数十回以上の未払い金を立証しなければならなくなった。
私は診察料はその都度支払いを終わらせているため、未回収となる分は百歩譲ってセラピーだけだ。
が、通院をはじめてからわずか5ヶ月程度の間で、数万になるということは考え難い。
また、電話診察費用とした12月分における3回の請求に対しても、
私が実際に診察をキャンセルするために電話で話をしたのはわずか一回、
その後、投薬ミスの指摘のために連絡をしたのが一回、すべてに金額がかかるのはおかしい。
不信・・・・・”の二文字が色を濃くし、脳裏に張り付いて離れようとはしない。
たまたま私が気付いたものの、障害は記憶を曖昧にするために、当事者が、
ここでは障害者である「私」を指しているが、本人がおかしさに気付くのは至難の業だろうと痛感する。
もし、今までの請求に対する説明がイコールにならなかった場合、
医師法に抵触するために、医師は医師としてなにも問われないということはありません、と
行政担当者は力強く言った。
後見人である東京都にも、経過報告として本日連絡を入れて情報を共有させますね、と。

今の段階で医師に対する不信を列挙することは控えようと思う。
が、障害者を抱える家族会との面談を明日に予定しているために、
今回の、障害者自身が問題に気付けない場合を想定して、意見交換を主題にした会議を明日開催。
病院、医師名の共有は当然のことながら、ひとつひとつ当事者間が乗り越えてきた問題を掲げ、
なにが家族サポートに必要であるか、どのレベルの、年齢の、性別の、
当事者には介助が不可欠であるかを話す。

私は自分のノートに目をやる。
何度も請求金額の説明が変更するのはいかがなものだ?と自問する。
医師との信頼関係を構築できないことは残念だと思う。
が、疑問の視点を持つ意義のようなものをあらためて心に刻む。

成功するまで諦めずに目標を継続させた者を成功者と呼ぶ。
ある偉人の言葉が思い浮かぶ。
そして、物事の統治の仕方を学んでいるのだと自分に言い聞かせる。
本音を言えばもう懲り懲りだ。
なぜ、この国が不透明なのだと関係者を殴って終わりできたらどんなに楽か・・・・・と思う。
社会的地位と人間の本質や職業上適職であるか否かは、学業成績とは比例せず。







高次脳機能障害を男が理解するとき

2010年01月12日 07時56分52秒 | エッセイ、随筆、小説




ゆっくり会うのは一ヶ月ぶりかしら?と私が言う。
なにを惚けたことを・・・・・と男。
他の男たちと銀座を闊歩していたくせに、ばれていないと思っているおめでたいのは本人だけ。
笑顔を浮かべながらここぞとばかりに男は不満を列挙、
あっ、ごめんごめん、寂しかったのね?と私。
私が海外へ行ったことは知らずに、東京中の大学病院へ足を運んだらしい。
どこで誰といたんだ?といつもよりキラキラと輝く瞳と共に尋ねるものだから、
ひとりで薬抜きに七転八倒だったのよ、醜い姿は誰にも見せない主義なの、
今もこれからもあなたにも見せないわ、とさらりと台詞のような言葉を並べる。

日本橋を、銀座を、丸の内を歩いた。
左目が流れてしまっているけど、もしかしたら見えないんじゃないか?と男が私を覗き込む。
去年さ、僕がたぶん機嫌でも悪かったんだろうな、
○○○(私の名前)が食事中に席を立つのも当然だと思って反省したんだよ。
悪いことをしたと思って、可哀相なことをなんで僕がしたのかと考えると、申し訳ないと繰り返し思った。

僕の目が代役を果たせれば本望なんだけどな、とぽつり呟く。
私はなにも聞こえなかった振りを貫きながら、
なにを言ってもやっても大丈夫よ、私の記憶には出来事も会話も思い出も残らないから。
私―という物体の表面や内側を時間が通過するのは間違えない。
でも、それを留めておくためには記憶が不可欠になる。
過ぎ去る時間をある一定の感情を伴って止めるため、思い出を温かなものに包み込むためには
記憶力が必要不可欠になる。
私にはその機能が欠如しているから、あなたという存在も交わす会話も出来事も
画用紙が色彩によって飾られる一時期が仮にあったとしても、数時間後には白紙に戻っている感じ。
不思議ね、あなたの感触は肌や指が覚えているのかしらね?と微笑んだ。

髪や頬や唇を私の右手でなぞる。
私を抱き寄せる男。
頬と頬が重なる。
私の特殊事情に関わることなんてないのよ。
あなたの前で気持ちが緩んでしまうと後がしんどいのよ、だから・・・・・と言いかけてやめた。
いくら考えても「だから・・・・・」の後に続く言葉が思い出せない。
ゆっくりとやればいいよ。
好きなことをやればいい。
僕はいつでもここにいるからさ。

脳が記憶を残せないというなら、肌や感触から出来事を覚えていけばいい。
謝られても、優しくされても、それがなぜか忘れてしまうのよ。
あなたが理解をしようと思った経緯も、私たちが交わしてきた会話も、思い出も、なにもかも、
私にはぼんやりとした輪郭でしか見えない。
でも、あなたのニオイや感触や肌の温度などが語りかけてくる。
戻る場所がここだということを。