風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

透明になる、高次脳機能障害と中国での一期一会

2010年01月04日 06時37分01秒 | エッセイ、随筆、小説



 

ジェニファー、信じられる?
シャワーのように空から降ってきたの、お金が。
混乱しないでね?と私は言った。

シンガポール系チャイニーズのジェニファーは、
何が起こったの?というような不思議な表情を浮かべている。
これは私の元にやってきた。けれど、私のものではないの。
私も自分の目を疑ったのよ。頬も抓ってみた。でも、夢ではなく、現実に起こっていることだった。

それはそれは美しい光景よ。
シャワーの先にはエメラルド色の海が広がっていて、空も青く澄み渡っている。
メディケーションを終えた私を部屋に送ってくれた後、大きな窓を開けて、部屋とテラスとつなげたの。
風が心地よく部屋に入ってきて、空気を入れ替えた。ソファーで寛ぐ私の髪も、頬も撫でた。
そこにね、何枚もの紙が部屋に舞い込んできたの。
はじめは何が起こっているのか自分でもわからなかったのよ。
赤い、この国の紙幣だとわかると、なぜかあなたの顔が浮かんだ。
と同時に、私の中に潜んでいる雑念も。

これは私の元にシャワーのように降り注いだものだけれど、私のものではないの。
だから、あなたに渡したいの。
たぶん中国では大金よ。でも、あなたなら生かした使い方ができると信じている。
私は欲しいものはもう何もないのよ。
それに、このお金を私が手元に置いたら、初夢で会話した中国人のレディに怒られるわ。
そうそう、お土産も入れておいたから、気に入ってくれると嬉しいわ。

紙袋を渡す。
ジェニファーはまだ理解しきれていない。
私だって今でも信じられないの。
夢みたいな話だけど、でも現実に起こったこと。
あなたとならシェアできると思って、仕事中なのに呼びだしちゃった、ごめんね。
と私は微笑んだ。
私の隣でジェニファーはぽろぽろと涙を流している。
泣かないで、ジェニファー。

私が新年を中国の、南に位置する島で過ごそうと思ったのは、本当に突然のことだった。
古くからの友人に相談すると、同行したいと言う。
そのかわりになんだけど・・・・・ともぞもぞした後、すべてを彼の経営する会社持ちで、と。
私が相談したのは紛れもなく資金面の調達だった。
話をしたいことがある。だから、現地で相談に乗って欲しいんだけど、いい?

渡航計画が突然だったにも関わらず、チャーター機の最後の座席を確保することができた。
ホテルもラグジュアリー、一度泊まってみたいと思っていた憧れのホテルを予約、
部屋も指定できた。
が、話はとんとん拍子に進んだものの、私の体調が崩れてしまったことで、
何度か断りの連絡を入れるものの、友人はキャンセルをする気配を一向にみせない。
きっと、行けると信じている。
だって、君はあの国に呼ばれているんだから、と繰り返されてきた。

すべてが順調に運んだ。
いいや、私の夢のすべてが叶い、今後の道筋が通ったと言っても過言ではないとも思う。
元旦からホテルの最高責任者をつかまえて、5時間もの間、いろいろな会話を交わした。
当初、押しかけたとき、アポが取れないか・・・と尋ねたら、正月のため多忙との回答、
にも関わらず、私たち5時間も話をしているけど大丈夫なの?と私に心配されるまでに会話が弾んだ。
そして、ひとりの女性を紹介してくれた。
それが、Spa全体を取り仕切るキャリアウーマンのジャニファーだった。
彼女は若くて美しかった。
しかも、その美しさは力強いものだ。
私、彼女とは一生の友達になると思いますので、その旨よろしく、と最高責任者へウィンクを投げる。
そして、私たちはケラケラと笑った。

ジェニファー、信じられる?
シャワーのように空から降ってきたの、お金が。
混乱しないでね?と私は言った。

シンガポール系チャイニーズのジェニファーは、
何が起こったの?というような不思議な表情を浮かべている。
これは私の元にやってきた。けれど、私のものではないの。
私も自分の目を疑ったのよ。頬も抓ってみた。でも、夢ではなく、現実に起こっていることだった。

続く・・・・・