HONDA RACING SPIRITS / Reborn Tomorrow

「S2000」「FD2 TYPE-R」「FL5 TYPE- R」
車とその周辺のこと そのほか気ままに感じたこと

いなくなった犬のこと

2024-06-23 19:41:00 | Easy come,Easy go

かつて自分の家にも犬がいた。いまのように、室内で生活する犬が当たり前の時代のことではない。夏も冬も首輪と鎖でつながれ、犬小屋で大半の時間を過ごすのが普通であった頃のことだ。野良犬がうろつき、遭遇すると臆病な自分は、警戒し逃げ腰になったものだ。野犬化した群れを保健所とご近所の人たちが雨戸で行き場を防ぎ、捕獲したりもしていた。

なぜ自分の家に犬がいたのだろうか。かすかな記憶でしかない。幼少期、小学生になる前のことだったはずだ。木の棒を地面に打ち込み鎖が巻かれ、確かに犬小屋も置かれていた。庭の片すみ、ちょうど離れの南側だ。薄茶色をしてガリガリな犬、覇気はなく、吠えるでもなく。でも間違いなくそこにいた。おそらく腹をすかせたその犬が、庭に迷い込んできたのだろう。そして親父が飼ってみるか、と思ったのだろう。その時、少しは不憫に思ったのかもしれない。しかし長い日々、飼っていた記憶はない。ある日、病気でもうしょうがないから保健所に連れて行くと言って、自転車で鎖を引っ張って行ってしまった。




保健所に連れて行くということがどんなことなのか、おぼろげながら自分にも理解できたはずだ。極端に無口だった幼少の自分が、なんで?と言ったかどうかはわからないが、少なくとも表情で訴えることはしたはずだ。いまでもその出来事を覚えているということは、親父の行動に矛盾を抱き続けているからに他ならない。あまりに無力だった自分を回顧しつつ、あの犬が何度、来世を繰り返しているのか、そしてそれが満ち足りた日々を謳歌しているものかどうか、案ずるばかりだ。


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