フランス国有鉄道 SNCF( Société Nationale des Chemins de fer Français)
産業革命と蒸気機関車
ジェームズ・ワットが、大量生産を可能にす るエネルギー源である蒸気機関を 1781 年に完成して産業革命が始まったイギ リスでは、続いて大量輸送のための蒸気機関車がジョージ・スティーヴンソン によって 1814 年に考案され、1830年、マンチェスター-リバプール間で初 めての鉄道が走りました。
ロスチャイルド家と鉄道産業
ヨーロッパが、フランス革命の七月革命に揺れていた頃であります。 産業都市マンチェスターと港湾都市リバプール を結んだ鉄道が大成功をおさめると、事業家、銀行家の目の色が変わってきました。
当時、馬車をしのぐものなどあるはずがないと思っていた時代です。 ロンドンのネイサンが その将来性に目を付けたときには、既に他の銀行に利権を奪われていました。
ネイサンは他の兄弟にイギリスでの 鉄道フィーバーぶりとその将来性について詳しく報告し、それぞれの国でいち早く鉄道建設の利権を確保して融資に踏み切るよう勧めました。
フェルディナンド皇帝鉄道
そしてまずオース トリア家のサロモンが鉄道建設にのりだしましたが、保守的なウィーンでは蒸気機関車が鉄の道を走る鉄道はいかがわしい怪しげなものと受け取られ、人々の「鉄の獣」に対する反発は、初めの頃のロンドン以上でした。
それでも 1835 年にオ-ストリア帝国政府から鉄道事業免許を取り付け、こうしてヨーロッパ大陸での初の鉄道は、ウィーンと北部ボヘミア間およそ 69 キロで着工されました。 その名も、『フェルディナンド皇帝鉄道』。
パリのジェームズも大々的に鉄道事業に乗り出し、まずセーヌ川沿いにパリ~サンジェルマン間の鉄道を完成させ、ついでフランス北部の諸都市とパリを結 ぶ、北方鉄道の建設に取りかかりました。
この北方鉄道が、パリ・ロスチャイルド家の 最大の資産になり、ジェームズは「鉄道王」の名をほしいままにしました。
この他のロスチャイルド兄弟は、ヨーロッパの最新の基幹産業である鉄道にいたると ころで関与しました。これらの鉄道建設には莫大な資金を必要としましたが、そのため の起債はロスチャイルド家の得意とするところです。
債券購入を一般に公 募すると、物珍しさも手伝って多数の民衆が押し寄せ、ロスチャイルド家は、ただの 「金融資本家」から「産業資本家」の顔をも持つようになりました。
ヨーロッパの政治と癒着して、その財を成した一 族も、こうした「産業資本家」として時代の変化とともに体質を変化してゆく 過程でもありました。
高速で大量に輸送できる鉄道を敷設することによって、無意識にせよ産業革命の恩恵をヨーロッパ中に広めました。 それは社会の変革を促して 人々を新時代へと導くものでもあったことは見逃せません。
こうして「資本」にもとづくことが大原則であるロスチャイルド家は、産業 が社会にしめる影響と生み出すものの大きさからからも、「産業資本家」とし ての性格を強くしていきました。
こうした時代の変化による変化は、1848 年のフ ランスの二月革命で、ルイ・ナポレオンが登場すると、かつてロスチャイルド家 がイギリスやオーストリア側につき、叔父のナポレオン・ボナパルトに不利を 働いていたことや、ナポレオン没後、復古ブルボン王朝や続いてオルレアン王 朝にすり寄ったことからも、
ルイ・ナポレオンは、金融業者に起債を頼む代わりに公債 を小口に分割して国民に購入を呼び掛ける一方、その蔵相アシル・フールとの 擁護のもとに、1852 年、ペレール兄弟に民主的な最初の銀行「動産銀行」を 創らせて、その株式の購入を国民に呼び掛けて上場させました。
すると、人民が投資 することもできる銀行だということで、フランス中を興奮の渦に巻き込み一 株 500 フランが 3 倍以上の 1600 フランに急騰する大成功を収め、それ以外 にもナポレオン三世は次々と新しいタイプの銀行を創設してゆき、いよいよパ リの「鉄道王」ジェームズを中心に(ネイサンは 1836 年死亡)事業を行っていきました。
ロスチャイルド家も出番がなくなっていきます。 そしてパリの二月革命は、もっとも封建的であったオーストリア帝国を直撃 し、広大な領地のそちらこちらで、憲法制定を求める大胆な運動がはじまり、ついに はウィーン市街でバリケードが築かれる革命が起きて、民衆は宰相メッテルニ ヒの追放を叫びました。
ウィーンのサロモンは、まもなくハンガリーのロスチャイ ルド家別邸が襲撃され、その騒ぎが再びウィーンに飛び火してハプスブルク家 も疎開するにおよんで、ついに逃げ出しました。
しかし、逃れた先のフランクフルト も革命の熱気のなかにあって、長男アムシェルの守る本家までが民衆の怒りの 前に揺れていました。
こうしてウィーン体制の崩壊とともにロスチャイルド家も没落かと思われました。 政治的不安定は一族が発行した各国の公債を暴落させます。
・ロスチャイルド財閥-9 ウィーン体制
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ただ一つ、ロンドン 分家は幸いにして政治的な対立に巻き込まれておらず、一族は踏ん張り、そ して、 1850 年7月にはフランス・ロスチャイルド家が建設していた北方鉄道が 完成して、開通式が行われました。
その記念列車の貴賓室にはルイ・ナポレオンが ジェームズと席を並べ、いくらロスチャイルド嫌いでも、当時の大事業はロ スチャイルド家の金がなければ動かないことをまざまざと見せつけるとともに、 「産業資本」の勝利を示す記念行事でした。
この鉄道が、今日のフランス国有鉄道SNCF( Société Nationale des Chemins de fer Français)で、フランス政府がロスチャイルド家から払い下げを受けたものです。 普通は政府から民間企業が払い下げを受けるものですけどね。
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