国際宇宙ステーション(ISS)に接続されたボーイングの宇宙船「スターライナー」=NASA提供
【ヒューストン=花房良祐】
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は25日、航空宇宙大手の米ボーイングが宇宙船「スターライナー」事業の売却を検討していると伝えた。
スターライナーはこのほど、初めての有人飛行を実施したが、不具合で無人の帰還となりプロジェクトが失敗した。旅客機の品質問題に直面する同社の不採算事業の1つになっている。
初期の検討段階で実際の売却につながるかは不透明という。月面開発用の大型ロケット「SLS」などの宇宙関連事業は継続するとしている。
スターライナーは米航空宇宙局(NASA)から国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士の商用輸送を請け負う事業。初の有人飛行を6月に実施したが、設備の不具合が発生して無人での帰還を余儀なくされた。テストパイロット2人は25年2月に別の宇宙船で帰還する予定だ。
スターライナー事業は開発の遅れもあり、2024年7〜9月期に約2億5000万ドル(約380億円)の追加損失を計上。累計損失は18億ドル超に膨らんでいる。
ISSは30年に運用を停止する計画でもあり、宇宙飛行士を基地に輸送する業務の収益性にも懸念が高まっている。
スターライナーはNASAから請け負っている事業なだけに、事業売却が実現すれば米国の宇宙開発計画への影響も避けられない。
ケリー・オルトバーグ最高経営責任者(CEO)は23日に「コア事業の民間機と防衛事業は長期的に会社に残るが、効率化できたりメインの目標から注意を引き離したりする周辺事業もある」と話しており、経営再建に向け、事業売却を進める意向を示している。
米航空機大手ボーイングが苦境に陥っています。品質問題と労働組合のストライキで小型・大型機の生産ができず、2024年7〜9月期決算は巨額の最終赤字を計上しました。最新ニュースと解説記事をまとめました。
日経記事2024.10.26より引用