トランプ氏㊥は習氏㊨を取引ができる相手とみなす(2017年11月、北京)
=ロイター
ドナルド・トランプ氏が20日、米大統領に返り咲いた。独自の世界観から繰り出す「米国第一」の政策は世界を揺らす。
4年を経て超大国トップに再び上り詰めた同氏の頭の中にはどんな景色が映っているのか。
トランプ氏は2020年大統領選に敗北後、第1次政権を支えた元高官と食事の場を設けた。「貿易があれば戦争のリスクを減らせる。私はビジネスマンだ。貿易を信じている」。突然、持論を唱え始めた。
同席した元高官はいう。「トランプ氏は貿易があるところに戦争はないと考えている。中国との貿易が完全になくなれば誤解が生じる可能性が高まる」。トランプ氏が真っ先に懸念するのは偶発的な衝突から中国と戦争につながる事態だ。
不動産ビジネス、かつても難敵
トランプ氏は多数の死者を伴う戦争を嫌う。1期目、戦死した米兵の家族に電話で弔意を伝えるときは「かなり過酷だった」。
側近だったスティーブ・バノン氏は従軍経験のないトランプ氏が「死というものに慣れていない」と語った。
不動産業を営んできたトランプ氏にとって中国は常にビジネスの難敵だった。
広州にオフィスビルを建てるため08年に不動産大手の中国恒大集団と契約した。13年に北京で電力会社と大型開発で手を組んだ。いずれも金融危機や当局の汚職調査で破談となった。
米大統領として貿易は続けるが、いまの巨額の貿易赤字は中国が米国より稼いでいるとみえる。「貿易赤字イコール営業赤字」の世界観だ。不均衡を正し米国製品をもっと買ってほしい。
駐中国大使の人事から内心が透ける。大規模農場を営むデービッド・パデュー氏を指名した。政権移行チーム関係者は、1期目で農産品の輸出拡大を勝ち取った日本や中国との貿易交渉を挙げ「今回も対中国で農業を重視する」と明かす。
ディール(取引)の相手として、強い決定権を握る習近平(シー・ジンピン)国家主席は申し分ない。
独裁、習近平氏への「憧憬」
トランプ氏は17年に北京を訪れて以降、繰り返し習氏と顔を合わせた。18年3月、米メディアに「彼は今や終身の国家主席だ。いつか我々もそれを試してみる必要があるかもしれない」と独裁国家への憧憬ともとれる発言をした。
戦争ではなくビジネスを追求する。頭の中に描く戦略は明確だが死角もある。
ウクライナ侵略に踏み切ったロシアのプーチン大統領は旧ソ連やロシア帝国の復活をめざす野望を優先した。ビジネス思考に偏れば台湾統一を悲願とする習氏の出方を見誤りかねない。
米政府関係者によると、ホワイトハウスの国家安全保障会議は前政権の職員の多くが残留を認められた。ブッシュ政権(第43代)で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたスティーブン・ハドリー氏は「外交政策は想像以上に前政権に縛られる」と話す。
「私は誰も信用しない」。トランプ氏は自らの理想の実現のために各国との摩擦も辞さない。中国の脅威の最前線にいる同盟国・日本は自国の「利用価値」を示し、したたかに向き合うしかない。
(ワシントン=坂口幸裕)
ひとこと解説
トランプがやっているのは少林寺拳法の酔拳のようなもので、酔っ払いのようにみえ、本命の一撃がなにか、さっぱりわからない。
関税を課すと言いながら、まだ発動していない。
逆に就任演説でパナマ運河が中国に奪われないように、アメリカが取り戻すといった。米中関係の先行きは依然不透明だが、前途多難であることはほぼ間違いない
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2025年1月20日(現地時間)にドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。
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