ウクライナのゼレンスキー大統領=ロイター
【ウィーン=田中孝幸】
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、同国軍が越境作戦で一部を支配下に置くロシア西部クルスク州で北朝鮮兵2人を捕虜にとったと明らかにした。
2人は負傷しており、首都キーウ(キエフ)に移送されて治安機関の職員の取り調べを受けている。
これまで北朝鮮兵が捕虜になった例は複数あったが、いずれも重傷ですぐに死亡していた。ゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)に捕虜たちの写真も投稿し「(生け捕りにするのは)容易な仕事ではなかった」と指摘した。
「ロシア軍や北朝鮮の軍人は通常、ウクライナに対する戦争への北朝鮮の関与の証拠を消すために負傷者を処刑している」と説明した。捕虜にとる作戦を成功させたウクライナの特殊部隊員らの仕事をたたえた。
情報機関のウクライナ保安庁が公開した動画によると、確保された2人のうち一人は頭部、もう一人は下肢をそれぞれ負傷し、治療を受けている。
いずれもロシア語やウクライナ語、英語を話さず、韓国の国家情報院の協力のもとで朝鮮語の通訳を介して意思疎通をしている。
一人はロシア軍の兵士としての身分証明書を持っていた(ウクライナ保安庁が公開したYouTube動画から)
一人はロシア南部のトゥバ共和国出身の軍人としての偽の身分証明書を所持していた。2005年生まれで、21年からライフル兵として北朝鮮軍で勤務していた。「ウクライナとの戦争ではなく訓練に行くつもりだった」と供述した。
24年秋にこの身分証明書を受け取った頃に、北朝鮮の部隊はロシア軍との合同作戦に関する1週間の訓練を受けたという。もう一人は1999年生まれで16年から狙撃兵として北朝鮮軍で勤務したといい、捕虜になった際には身分証明書を持っていなかった。
北朝鮮はロシアへの兵士派遣を認めていない。ゼレンスキー氏はウクライナ保安庁に対して、ジャーナリストが北朝鮮兵の捕虜たちに接触するのを認めたと述べ「世界は何が起きているのか真実を知る必要がある」と強調した。
ウクライナ側の発表によると、クルスク州には1万1千人を超える北朝鮮兵がウクライナ軍との戦闘のために派遣された。このうち3千人を超える死傷者が出ている。
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日経記事2025.1.11より引用