ポケベルが次々に爆発し、ヒズボラの戦闘員らが死傷した(17日、ベイルート)=ロイター
【カイロ=岐部秀光】
レバノン全土で17日、親イラン武装勢力ヒズボラの戦闘員が手にしていたポケベルが一斉に爆発し多くの死傷者が出た。
防衛抑止力の回復に必死のイスラエルがサイバー技術を使い、イランやその代理勢力に警告メッセージを送った可能性がある。イノベーション(技術革新)によって戦場のルールや風景が一変しつつある現実を浮かび上がらせた。
レバノン各地で一連の爆発が集中的に発生した状況は周到な準備のうえで行われた戦略的な攻撃であることをうかがわせる。
手にしていたポケベルが「殺傷兵器」に転じた心理的な衝撃ははかりしれない。
4月のシリア首都ダマスカスのイラン公館への攻撃や、7月のイラン首都テヘランでのハマス最高幹部暗殺と同様、イスラエルは攻撃を認めず否定もしていない。
それでもイランとその代理勢力への警告のメッセージは伝わったはずだ。技術力や情報収集の優位性を明確に示した。
イスラエルにとっては国の防衛抑止力の立て直しが切実な課題だった。パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの「襲撃成功」が他の武装勢力を勢いづけた。
ミサイルやドローン(無人機)を使ったイラン代理勢力による攻撃の標的は徐々にイスラエルの主要な都市へとひろがりつつあった。
中東の伝統的な「レッドライン(越えてはならない一線)」がどこに移動したのか、誰にもわからなくなっている。
イランは4月に事前通告して民間人の被害を出さない配慮をしたとはいえ、イスラエル本土への大規模なミサイル攻撃を実行している。
イスラエルによるテヘランやレバノン首都ベイルートへの空爆もかつてでは考えられなかった。新しい技術を使った攻撃はレッドラインをさらに見えなくする。
イスラエルのサイバー技術の軍事利用は、1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)後の「平和の配当」が逆流するさまを象徴しているかもしれない。
イスラエルのテック産業の飛躍的な発展は軍の持つ人材ネットワークや技術が民間部門にシフトしたことで実現した。イスラエル軍はいま企業の技術を積極的に活用している。
2023年10月のガザ衝突発生後、イスラエルへのサイバー攻撃は2.5倍に膨らんだ。サイバーセキュリティーの分野で軍と企業の協力が加速し一部では一体化している。サイバー防衛のノウハウはサイバー攻撃のノウハウとコインの表裏だ。
イスラエルのテック産業には生成AI(人工知能)ブームの追い風も吹く。米エヌビディアは4月以降にイスラエル新興企業2社を合計10億ドルで買収すると発表した。
イスラエルによるAIの軍事利用には大きな懸念が向けられている。イスラエルのネットメディア「+972マガジン」は4月、イスラエル軍がガザにおいて戦闘員を標的としてマークするために「ゴスペル」「ラベンダー」と呼ばれるAIツールを用いていると報じた。
国連のグテレス事務総長は「生と死にかかわる決定のいかなる部分もアルゴリズムの冷酷な計算にゆだねてはならない」と述べた。イスラエル政府は報道を否定した。
ガザの衝突は一見すると住宅地やトンネル内での20世紀型の市街戦が中心だ。しかし実際はドローンや多層式ミサイル迎撃システムなど新たな軍事技術の実験場と化している面もある。急速に発展する技術をどのように国際的な戦争ルールに取り込んでいくかの議論は急務だ。
複雑な対立関係をひきずる中東では、新しい技術や戦術の使用があるたびに偶発的に全面的な戦争に突入するリスクが高まる。
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ヒズボラが使用しており今回爆発したポケベル(pager)は、英紙フィナンシャルタイムズ(FT)の報道によると、GPS機能がなくマイクやカメラもなく、非常に限られたテキストメッセージ送信機能しか伴っていないものだという。
それが一斉に爆発したのは、どのような手法によるのか。誰でも考えつくのはバッテリーの過熱。上記のFT記事によると、マルウェアにリチウム電池を過熱させて爆発させるサイバー攻撃が考えられる。
だが、それでは爆発力が限られる。
レバノン向けに出荷されたポケベルを輸送経路で止めた上で少量の爆発物をポケベルに仕込んだ可能性があるという。いずれにせよ、イスラエル・ネタニヤフ政権の強硬姿勢は危うい。
モバイル機器に使われるリチウムイオン電池の過熱による爆発は、可燃性の電解液に引火して炎を上げることが多いです。
今回の映像を見る限り炎上というより破裂というイメージで、内部に埋め込まれた爆発物が破裂したとみた方が自然です。
製品のハード/ソフトのサプライチェーンに介入する攻撃手法は一般にサプライチェーン攻撃と呼ばれ、かつてはルーターに偽のチップやソフトを組み込む攻撃などが行われていました。
近年はオープンソースソフトの開発に参加して脆弱性を組み込む新たなサプライチェーン攻撃も発覚しています。ただ、同攻撃の多くは諜報目的であり、破壊という一過性の目的に使われるケースは極めて珍しいといえます。
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