イスラエル軍は17日、ハマス最高指導者のシンワール氏を殺害したと発表した(21年5月、ガザ)=AP
【カイロ=岐部秀光】
イスラエル軍は17日、同軍がイスラム組織ハマスの最高指導者シンワール氏を殺害したと発表した。パレスチナ自治区ガザでハマスの掃討を続けてきた同国のネタニヤフ政権にとっては大きな戦果となる。
イスラエル軍は同日、X(旧ツイッター)に「軍とシンベト(イスラエル総保安庁)は1年に及ぶ追跡の末、16日夜にシンワールを殺害したと確認した」と投稿した。ハマスはシンワール氏の安否についてコメントしていない。
ハマス、弱体化も根絶は困難
ガザの停戦交渉を再開することは少なくとも短期的には難しくなった。
シンワール氏に代わってだれがハマスの組織としての方針を決めるのか見通せない。
伝統的な抑止役の米国は大統領選挙の投票直前でイスラエルへの十分な圧力を及ぼすことができない。戦線がレバノンに拡大し、ガザ停戦協議の仲介役であるカタールやエジプトの難易度も上がった。
リーダーを失ったハマスの打撃は間違いないが、最高指導者の身を守ることは大きな目標ではなかった。
越境襲撃はヒズボラなどを巻き込む、より大がかりな地域全体の反イスラエル戦争につなげる意図だった。イスラエルがレバノンに地上侵攻しイランとの直接交戦の可能性が高まった現状はシンワール氏の計算通りともいえる。
ハマスも過激主義を強める懸念がある。現実路線だった政治部門出身のハニヤ氏がイスラエル軍に殺害され、軍事部門出身のシンワール氏が後継最高指導者の座についていたこと自体が強硬路線への傾斜を物語る。
組織としてのハマスが弱体化しても思想としてのハマスを根絶するのは不可能に近い。
ガザにおける民間人の多大な犠牲やヨルダン川西岸の違法な入植活動は、アラブ各地の反イスラエル主義や過激思想の主張を通りやすくしている。
究極の安全保障は、パレスチナとの「2国家共存」による和平のほかにないことを国際社会がイスラエルに説得できない限り、流血は続く。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
シンワール氏の殺害は諜報に基づくものではなく、たまたまパトロール中の部隊との銃撃戦で起きたものとされている。
いずれにしても、ハマスの指導者の死が停戦と人質の解放に繋がるのかに関心が持たれている。
ネタニヤフ首相は、人質を解放し武器を捨てれば域外に出ても良いと懐柔策を打ち出したが、これをガザ内外の残りの指導者足りうる人たちがどのように出るかだ。
一方、ハマスはゲリラ戦略に出るとの見方もある。バイデン大統領は、停戦と地域的な紛争の拡大を阻止する好機と見ているようだ。
仲介役のカタールやエジプト、そして中東和平に大きな影響を与えうるサウジアラビアの出方も注目される。
これを何らかの打開と称える発言もあるようですが、極めて疑問ですね。
たしかにハマスのテロは決して許されない。
しかしその根底には、国際司法裁判所も違法と勧告したイスラエルの入植拡大があります。
イスラエルはその勧告も国連の決議も無視し、違法な占領と民間人の殺戮をやめません。
レバノンでは国連軍を攻撃さえしている。
この状況下で相手指導者を殺害しても、単に軍事力で勝る側が劣る側を制圧したというだけで、そんなことは数千年前からずっとあります。
それでは二度の大戦の惨禍は防げなかったから国連やICJがあり、国際法を完全に無視した先に「二国共存」など待っているはずはない。
恐らくそれが、国際社会の声でしょう。
イスラエル軍は2024年10月1日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラに対し、イスラエルと国境を接するレバノン南部で「限定的」な地上攻撃を始めたと発表しました。
その後、イスラエル軍は、イランがイスラエルに向けて同日にミサイルを発射したと発表しました。最新ニュースと解説記事をまとめました。
続きを読む日経記事2024.10.18より引用