早期・希望退職の募集が相次ぐ(東京・丸の内の通勤風景)
2024年の上場企業の早期・希望退職の募集人数が11月中旬時点で約1万人に迫る水準となったことが分かった。
23年の年間と比べて約3倍の水準で、直近では新型コロナウイルス禍の影響を受けた21年の年間に次ぐ勢いで推移している。
東京商工リサーチの集計によると、上場企業が24年11月15日までに募集した早期・希望退職者は53社の計9219人だった。
21年(84社、1万5892人)に次ぐ3年ぶりの水準。過去にコロナ禍などの特殊要因がなく1万人を突破していたのは19年の1万1351人だった。
希望退職を募集している企業を業種別にみると、電気機器が13社で全体の25%を占め最多だった。
情報通信が8社(15%)で続いた。富士通は10月末をメドに間接部門の幹部社員を対象に希望退職を募集した。人数は明らかにしていないが間接支援部門の生産性を高める狙いだ。
10月以降、希望退職の募集を明らかにした武田薬品工業は国内の削減対象人員規模を明らかにしておらず、今回の集計に含まれていない。
今後、年末にかけ新たな早期退職を募集する企業が出て、集計人数がさらに増える可能性もある。
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人手を確保するために賃上げが相次ぐ一方で、早期・希望退職も活発に募集する――矛盾する経営行動のように思えますが、企業が人材の取捨選択を厳しく行い始めている証しです。
今後も事業の成長を支えてくれる社員には好待遇で応え、そうでない社員には転職・退社を促す。日本企業も、ドライな人材戦略を取るように変わりつつあるようです。
ここ2年、多くの企業が他社に負けじと賃上げをしてきました。ただ生産性向上・業績改善が伴わない賃上げはそろそろ限界。
賃上げ原資が尽きてきます。黒字リストラは今後さらに増えそうです。働き手はエンプロイアビリティ(employability=雇われる力)を上げて、備えるしかありません。