起訴の報道が出た25日、アダムズ市長は無罪を主張する映像を公開した=AP
【ニューヨーク=弓真名】
米連邦検察は26日までに、収賄や詐欺などの容疑でニューヨーク市のエリック・アダムズ市長を起訴した。
トルコ政府などから賄賂や違法な選挙資金を受け取った疑いがもたれている。米報道によると、同市の市長が在任中に起訴されるのは初めて。
連邦検察が26日に公表した起訴状によると、アダムズ氏は収賄、詐欺、外国人の献金勧誘など5つの罪に問われている。
アダムズ氏がニューヨーク市南部ブルックリン地区の区長に選出された2014年以降、10年近くにわたり外国人実業家や少なくとも1人のトルコ政府高官から金品を得ていた。
具体的には無料や割引になった航空券の提供、海外の高級ホテルの宿泊費など10万ドル(約1400万円)を超える供与を受けていた。トルコの政府高官を含む外国人からは違法な選挙献金も受け取っていた。
これらの見返りに、アダムズ氏はニューヨークのトルコ領事館が消防検査に合格していないビルへの入居を許可するように取り計らった。
また、トルコ政府が敏感になっている第1次世界大戦中にオスマン帝国で起きたアルメニア系住民の殺害について言及しないよう求めた。実際にアダムズ氏による発言はなかったという。
無料だった旅行費用を支払った、あるいは支払う予定だったと偽るため、偽の記録を作成するように指示したという。
検察は「アダムズ氏を取り込もうとする(トルコ政府らの)複数年にわたる計画だった。アダムズ氏は違法と知りつつ(高額旅行などを)受け取り、彼らに便宜を図った」と批判した。
アダムズ氏は起訴の報道が出た25日に公表したビデオメッセージで「(起訴は)まったくの虚偽に基づいている。全身全霊で戦う」と容疑を否認したうえで、市長職を辞任しない意向を明らかにした。
米連邦捜査局(FBI)は26日早朝(現地時間)、市内にあるアダムズ氏の自宅を家宅捜索し、携帯電話を押収した。
捜査は市長を取り巻く幹部にも向けられている。
米報道によると、今月に入ってFBIが2人の副市長や顧問、学校長の携帯電話を押収した。同じく捜査対象とされるニューヨーク市警察本部長と顧問が今月に辞任に追い込まれるなど、市政は混乱している。
アダムズ氏へ辞任を求める声は高まっている。民主党左派のオカシオコルテス下院議員は米紙ニューヨーク・タイムズに「アダムズがニューヨーク市の統治を続けられるとは思えない。市のために辞任すべきだ」とコメントした。
アダムズ氏は22年、市長に就任。ニューヨーク市警に務めた経歴があり、在任中はホームレス対策などを強化し治安向上を推し進めてきた。
日経記事2024.09.27より引用