風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

博多日帰り歴史探訪 1

2015-10-28 | 九州
[2015.9.4]
○ prologue

9月に、福岡を訪れました。
3月に行って以来の半年ぶりですが、また今回も日帰り。
せめてなるべく現地に長く滞在しようと、朝早く、夜遅いフライトをとりました。
5時起きして7時半に羽田を発っても、福岡に着くのは9時半近くです。

○ さっちゃんとクロと再会

福岡空港では、さっちゃんが待っていてくれました。
7月の熊本旅行でたっぷりお世話になった彼女が、今回は熊本から出てきてくれて、お買い物がてら、私と一緒に半日過ごしてくれるのです。
九州は大きいから、熊本‐福岡間は結構距離がありますよね。ありがたいわ~。うれしいわ~。

さっちゃんも九州に来てまだ日が浅いため、お互い福岡ビギナー。
空港直結の地下鉄に乗るのにも、うろうろ、きょろきょろ。
地下鉄一日乗車券を買い、乗り込みます。これで一日、乗り降り自由になりました。
乗り込んだ車両のドアに描かれた黒い子犬に、2人で注目しました。
「これ、クロじゃない!」



阿蘇を走る観光列車、あそぼーいのキャラクターです。
キミ、阿蘇駅の犬小屋に住んでいるのに、なぜ福岡のメトロについているの?
JR九州だからでしょう。

○ 空海建立最古のお寺

まずは祇園駅で降り、私のリクエストで、東長寺に行きました。
空海(弘法大師)が日本で最初に創建したお寺です。
よく見ると、両側の木札には
「九州八十八カ所第一番霊場」「九州三十六不動尊結願霊場」と書かれています。
名刹、古刹ですね。



大きくて立派な仁王門が迎えてくれます。
でも中をのぞくと、仁王さまじゃない金ピカの人が、にらみを利かせていました。
ええと、どなた?中国の方かとお見かけしますが…。



境内に五重塔がある、広々としたお寺。
平成23年に完成したばかりのまだ新しい五重塔は、高さ23mの総檜造。
バランスの取れた、美しい姿です。



お参りをしようと本堂に行くと、お賽銭箱の横に、大きなリンがありました。
「これ、鳴らしていいのかな?」



参拝客向けの場所に置いてあるから、okと判断して、リン棒を当てました。
一般家庭の仏前にある小さいものだと「チーン・・・」という音が響きわたります。
それを期待していたら、「バコン!」という音。
予想外!さっちゃんが鳴らしても「ペコン!」と言う音でした。
音響はどこにいったの?余韻がないわ~。
分厚いのに、すごくへこみがあるので、これまで怪力の九州男児(と九州女児)に叩かれ続けてきたのでしょう。
広い拝殿の奥中央にある、秘仏の千手観音菩薩や不動明王像をお参りしました。

○ 九州の巨大仏

それから表示にしたがって、階段を上がります。
先ほどから、本殿参拝はせずに、階段にまっすぐ向かう人が結構います。

ここは大仏殿。あがったところに、福岡大仏が鎮座していました。
高さ10.8mという日本最大級の、檜の木造坐像の釈迦如来像。
撮影禁止のため、外の表示パネルの画像を載せます。



奈良や鎌倉で見慣れた大仏と違う、木の暖かみを感じます。
触れそうなくらい近くから見せてくれるため、下から見上げて拝観することになります。
衣裳のドレープの質感や量感は、木製とは思えない美しさ。
ありがたや~。

堂内には極太の大きな蝋燭が灯されていて、ルルドでもそうだったと思い出しました。
あそこでは、参拝者はプロパンガスほど巨大なろうそくを、リアカーで引いて運んでいましたが。

大きな白いろうそくの表面に、奉納者は願いを書いています。
だいたい日本人は「商売繁盛」「家内安全」「病気平癒」といった四文字熟語(?)ですが、その中で、びっしり漢字が書き込まれているものがありました。
(漢詩みたい)と思いますが、中国語が読めるさっちゃんはすばやく判読して「母国に戻っても商売がうまく行きますようにとか、あれやこれや、とにかくいっぱいお願い事が書いてあるよ」
願いを書ききれないから、大きなろうそくにしたのかも。

○ 地獄・極楽巡り

大仏の台座の中には、「地獄・極楽巡り入り口」があります。
地獄・極楽巡り!ツアーですかい。
ここに来たかったんですよね~。いそいそと地獄に向かいます。



薄暗い細道を入っていくと、ぼんやりした明かりのもとで、何枚ものおどろおどろしい地獄絵巻のレリーフが飾られており、歩いていくごとに、さまざまな地獄の説明が放送で入ります。
誰が手がけたのか、かなり強烈。思いっきり描いている感じ。
「こんなに地獄ってあるんだねー」「覚えてられないねー」
最後にあった武者地獄?は、甲冑姿の人同士が戦っていて、絵としてはやけに格好良かったです。

そこから突然、通路は真っ暗になりました。
戒壇巡りの始まりです。
わからない人は「え、なに?」と驚きそうですが、(面白いものが好きな)私たちは、お互い体験済みなので、勝手がわかっています。
「うわ、暗い」と口々に言いながら、手すりにつかまってくねくね道を進んでいくと、途中に「仏の輪」があり、じきにぼんやりと明るくなってきました。
そこが極楽でした。パーラダーイス!
わーい、地獄から極楽にこれたよー。
極楽の絵は一枚だけでした。お賽銭箱があるのもここだけでした。
まあ、地獄の絵の前でお賽銭を入れる人はいないでしょう。

地獄はたくさんあっても、極楽は一カ所なんだなあと思い、トルストイの『アンナ・カレーニナ』の冒頭の一文「幸福な家庭はすべてよく似たものであるが、不幸な家庭は皆それぞれに不幸である」を思い出しました。
(こんな場所でロシア文学!)



極楽気分のまま、入ったところと逆側の大仏の台座下から出ました。
出口の表示の方がおどろおどろしいのはなぜ?

九州一の大仏を見せてくれて、極楽巡りもさせてくれながら、拝観料がただという太っ腹のお寺。
それで参拝客が多いのでしょう。中国語があちこちで交わされていました。
境内にはいい狛犬もいたし、満足だわー。

○ 福岡城址へ

再び地下鉄に乗り、今度は大濠公園駅で降りました。
これで「おおぼり」って読むんですねー。
名前の通り、大きな公園と福岡城址があります。



お堀の横を歩きながら、「先月は、一緒に熊本城のお堀の横を歩いたね」と言いました。
ああ、熊本城は最高でした。
ここは天守閣のない城跡ですが、石垣や櫓は少し残っており、雰囲気はあります。
別名「舞鶴城」と呼ばれたそう。優雅な姿だったんでしょう。

お堀には、蓮の葉が青々と茂っていました。
カエルは水に入らずとも、渡って行けそうです。



○ 福岡ジャック?

お城の隣には陸上競技場があります。その周りには、大勢の人たちがいます。
なにか陸上競技大会でも行われているのかなと思うくらいのにぎわいぶり。
番号札を掲げて、人々を移動させている人もいます。
でも、アスリートと言うにはなんだか体型や動作がちょっと・・・。年齢も幅広いし。
大通りの反対側にまでしゃべっている声が聞こえてきますが、ガヤガヤしすぎて、なにを言っているのかわかりません。

さっちゃんが「中国人ツアーだわ」と言いました。
そうなんだ~。それにしても大勢すぎます。
総勢何人かわかりませんが、何百人単位のすごい数。
日本のツアー観光客とは比較にならない、修学旅行レベルの人数です。
「福岡ジャック?」「爆買い?」
私「みんな大型クルーズ船で来たのなら、2日後くらいには熊本にもやってくるんじゃない?」
さちこ「じゃあ、一週間後くらいには横浜で再会するかもよ」
お互いに、黙りこくります。
お城の周りで休んでいる人たちも大勢いますが、移動中の人々は、どうやら私たちと同じく天守閣跡の大天守台を目指しているようです。
ガイド風の人が声を張り上げてなにかしゃべっており、さっちゃんが「今からこの城跡で一番高いところに行きます、だって」と通訳してくれました。
このままだと、ツアーの大群と高台でかち合っちゃうわ。

混雑を避けて、彼らが向かっている表門ではなく、裏門から入りましたが、入り口が違っても結局中で会うのは一緒。
きっとみんな、撮影しだすわー。
アジアの人たちの撮影にかける情熱というか執念は、すごいものです。
みんな、本気のポーズをとって、プロマイドのように、納得がいくまで何枚も撮ります。

前に上海のバンド (外灘)を観光していたら、中国人青年に「そこ空けて」と言われて、「?」と思って場所を空けると、彼女らしき人がそこに立ってモデル顔負けの決めポーズをとりはじめ、唖然とする私の横で撮影会が始まったことがありました。
今回は日本でそんな光景が展開されるのねー!
と身構えていましたが、意外にも、そんなにカメラを構える人はいませんでした。
ほとんど見がいがなかったからでしょうか。
大天守台は展望台になっている割には見晴らしがいま一つで、私たちもカメラは取り出しませんでした。

中国の人たちは、似ている顔立ちですが、服装が全然違います。
選ぶ色も、原色が多い感じ。
日本のツアー客よりも男性が多いなと思います。日本だと、女性か退職した年配男性ばかりですが、中国はどちらかというと家族全員で参加しているみたい。
男の人は仕事を休んで参加しているのでしょう。
どこを向いても中国人、飛び交う中国語。このとき大天守台にいた日本人は、間違いなく私たち二人だけでした。



石段の上にあるのは、本丸の鬼門封じの祈念をするための祈念櫓。
遠くに注射針のようなタワーが見えました。福岡のニードルタワーでしょうか?



○ 中国人ツアー

今度は城跡から大濠公園の方へと移動します。
「いやー、びっくりしたねー」
「ここが日本なのか中国なのかわからなくなっちゃったね」
お城から離れるにつれ、日本人の世界に戻ったと思いましたが、それでもツアー札を首から下げた人を何人も見かけました。
みんな、自由行動中なの?それともはぐれてるの?

中国在住経験のあるさっちゃんは、「中国人ツアーなんて、時間に間に合わない人が続出して、全然予定通りに進まなそう」と言います。
それ、ツアーとしては致命的でないかーい。

まあ、騒がしいとはいっても、特に迷惑行為をしているわけではありません。
身なりもちゃんとしているし、それなりのステイタスの人々のようです。
「身なりと言えば、ちょっと前に、上海あたりでパジャマ姿で外出するのがはやってなかった?」
「今でもいるよ」
さっちゃん、さりげなさすぎ!

「えーっ!」
「暑いからじゃないかな」
さっちゃん、理解ありすぎ!

「まあ、今回はいなさそうだね」
「さすがに別の国に来るとなったら、おめかしするんじゃないかな」

チャイナパワーに圧倒されて、福岡城の歴史に思いを馳せることを忘れていました。
初代福岡藩主・黒田長政が建てたお城で、黒田官兵衛・長政ゆかりの場所なんですね。
でもこの前岡山で、官兵衛の入れ知恵で秀吉に水攻めされた、かわいそうな備中高松城を訪れたばかりなので、(人のお城を沈めておいてーぶー)といまいち素直になれませんでした。

○ お堀にしては大きすぎ



さて、大濠公園では、大きな池がたゆたってていました。
お城は私、公園はさっちゃんのリクエスト。
「この公園、地図で見たら、池が大きいのが気になったのよね。お堀にしては太すぎると思わない?」
むむ、目の付け所が鋭い!私は全然気がつきませんでした。
確かに太すぎる!とてもお堀とは思えません。
上の画像は、この時大濠公園駅から歩いたコース。池が目立ちますね…。

調べてみると、元々博多湾に続いていた入り江を、黒田長政がお城の外濠にしたようです。
水源まで地面を掘るより、元からある入り江を埋める方が楽ですからでしょうか。
下の画像で向こう岸のように見えるのは、池を半分に横切っている道で、その先にさらに池は広がっています。



この日は最高気温29度のとても暑い日。
寒くて天気の悪い日が一週間近く続いていたので、突然の夏のぶり返しに身体が驚いています。
九州もずっと天候不順だったそうなので、とりあえずは晴れてよかった。
さっちゃんに「日傘を持ってきたら?」と教えてもらったときには(そんなに暑いかなあ?)と半信半疑だったし、朝、東京は雨が降っていましたが、着いてみたら驚きのピーカン。
日光が眩しくて、みんな日陰に寄っています。日傘を持参して助かったわー。

○ スズメとひまわり

池の周りの遊歩道にはごつごつした石の飛び出た足つぼコーナーがあり、見てるだけで足の裏が痛くなりそう。
スズメがちゅんちゅん。ひまわりにつかまって、揺られていました。



ひまわりの花の季節はもう終わり、その種をつついているようです。
スズメがひまわりの種を食べるとは思いませんでした。
シジュウカラやヒワやイカルは、種の皮をむきやすいくちばしをしていますが、スズメも挑戦しているのかも?



○ 池の真ん中を通る

池の真ん中には、天橋立のような小道が通っています。
そこを歩くと、湖面を渡る風が涼しくて、とても快適。
両側が水面というのは、とても気持ちがいいものですね。



この池は、半分ずつ釣りが可能なエリアと禁止のエリアに分かれています。
公平ですね。
平日ですが、夏に戻った天気に呼ばれてか、スワンボートが何台も池に浮かんでいます。
乗ったことがありますが、すぐに脚が疲れちゃって、以外と大変だったんですよねー。
さっちゃんも、あるそうです。



後ろから「ヘイ、イッツ・スワンボート」という声が聞こえました。
体力がありそうな欧米の青年2人が、私たちを追い越して、ずんずん歩いていきます。
(乗っちゃえ乗っちゃえー)と、背中に向かって2人で念を送りました。
スワン男子だ!と、萌える女子もいるでしょう(たぶん)。

○ 共通点がマイナー

橋の上で、亀に餌やりをしているおじさんがおり、辺りに亀が群がっていました。
遠くの方から、食いっぱぐれまいと猛スピードで水をかき分けてくる亀もいます。
『亀は以外と速く泳ぐ』という映画を思い出したら、さっちゃんも観たことがあるそう。
戒壇巡りに、スワンボートに、若干マイナーな映画。
つくづく、彼女とは、共通点を感じます。妙なところばっかり(笑)。
好みが似ているということね。



○ 一日パスはどこいった

お昼になったので、天神でランチをしようと、地下鉄の駅に向かいました。
ここで、アクシデント発生。
なんと、私の地下鉄乗車券が見あたりません。
そうはいっても、たいていバッグのどこかにあるので、「ハハハ、ちょっと探すから待っててねー」と、はじめは余裕を持っていましたが、いくら探しても、何度探しても、見つからないのです。
こ、これは、本当に落としたのかも・・・。

まったく記憶にありませんが、さっちゃんに会ってから、心ここにあらずでラリラリ浮かれていたので、やらかしちゃったようです。
あーあ。この日はまだ使いたいのになあ。
肩を落としていたら、さっちゃんが「私、天神から熊本に帰るから、これ使って」と自分のを差し出してくれました。
わああ(涙)。なんというありがたいお言葉!
持つべき者は友ですねー!
逆にさっちゃん、手間のかかる友でごめんよー!

○ 許さんばい!

そんな私を戒めるように、にらみをきかせる大男が3人。
よくよく見ると、みんな知ってる人でした。



工藤監督の就任は知っていましたが、井原さんがアビスパの監督になっていたとは、知らなかった―!
現役時代はミスター・マリノスと呼ばれていて、横浜の人というイメージなのに~!
柱谷監督の就任も知りませんでしたが、ギラヴァンツ北九州というチーム自体初耳でした。J2なんですね。

それにしても贅沢なポスター。
誰一人九州出身ではないので、「許さんばい」とは言わないと思いますが、まあ、そこは、まあ(笑)。
往年のスポーツヒーローたちが、今も御健在のようでなによりです。

○ 鉄なべギョーザ

そうして天神に移動。
スピッツファンのさっちゃんは「マサムネ(福岡出身)ゆかりのお店に行きたーい」と言うかなと思いましたが、特にそうしたミーハー心はないようでした。
彼女が好きなのはドラムの人(佐野出身)だからかも。

天神駅に降りるのは、これが初めて。
スピッツの「さわって・かわって」の歌の出だしが「天神駅の改札口で、君のよれた笑顔~♪」。
なぜか長いこと、大阪の天神橋駅と勘違いしていたけれど、ここのことなのねー!きましたよー!
って私の方が熱烈なファンみたい。



ここの鉄なべに入りました。
鉄なべで焼いた餃子を出すお店。
なぜここにしたかというと、福岡出身の知人が、上京して食べたという蒲田の餃子にいたく感激していたからです。
「東京の餃子って大きいね!福岡のはもう小さくて物足りなくって」
そんなに喜ぶなんて、福岡のギョーザはどれほど小さいんだろうと、逆に気になっていました。



「熱いので気を付けて下さいね」と、ジュージューいう音とともに、火からおろしたての鉄なべが目の前に運ばれてきました。
餃子は、確かにミニサイズ!ご飯はたくさんですが。
これは、男の人は足らないんじゃないかしら?
それともこっちの人はお上品で、そんなに餃子を食べないの?
東京は、ギョーザ消費量一、二を争う宇都宮と浜松の間にあるので、もりもり量なんですよー。

あとで福岡出身の男性に聞いたら「足らん足らん。2人前頼むとよ」とのことでした。



鉄で焼かれたため、カリッとした皮。
本当に一口で食べられるサイズなので、肉汁が出ることもなく、食べやすかったです。
デザートには、ここのお店だけという、レアチーズ豆腐を食べました。
豆腐?ケーキ?不思議な食感。

さっちゃんは、届いたばかりというスピッツの会報を持ってきて、見せてくれました。
親切にも「次に会うときまで、持っていてもいいよ」と言ってくれましたが、そんな、ファンの方の大切な会報をお預かりするなんて恐れ多くて気が引けますわ~。
熊本滞在の折に、知らないうちに夜な夜な受けていたスピッツ強化合宿は、密かにまだ続いているようです(笑)
おかげさまで、私もかなり好きになりました!



○ よれた笑顔でお別れ

そろそろ私の方の時間が近づいてきたので、天神駅の改札まで送ってもらって、お別れしました。
別れの時はいつも寂しいもの。私は歌の通り、笑い泣きしそうな「よれた笑顔」になっていただろうなあと思います。
会ってくれてありがとう。また会おうね、さっちゃん!

その2に続きます。


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