2日目からの続きです。
● 乗り場はどこ?
3日目朝、日の出時間の5時に起きてホテルをチェックアウト。
鹿児島港へと向かいます。
桜島行きという表示を見て、フェリー乗り場だと思って入った建物は、高速船の乗り場でした。
「フェリー乗り場はそこの十字路を曲がってまっすぐ」と教えてもらったものの、そこには屋久島か種子島行きのフェリーしか停まっていません。
この港からは、あちこちの島に渡る船が出ていて、乗り場もそれぞれ違うんですね。
犬の散歩のおばあさんとすれ違ったので聞いてみましたが、
「桜島ー?さて、どこかいネェ?」と分からない様子。
月曜早朝の波止場には人影はほとんどなく、聞ける人がいません。
ようやく波打ち際で、自転車をベンチにもたれかけて休憩中のおじさんを発見。
遠くから来た人なら分からないかもと思いながらもダメ元で聞いてみたところ、すくっと立って「あれだよ」と指さしてくれました。
少し離れた建物ですが、たしかにフェリーが見えます。
ああ、やっと正解を教えてもらえました!
分かりそうな人が分からず、分からなそうな人が分かる、人は見かけに寄りません。
● フェリーに乗り込む
乗り場までは歩いて7、8分。近くに見えてもそこそこ距離があります。
建物に向かっているところで、フェリーが出航していきました。
あー、行っちゃった。遠ざかる船を見送ります。
乗りたかった便でしたが、あちこちで迷っていたので、間に合いませんでした。
まあ、次の便は15分後に出るので、それほど気にしません。
フェリー乗り場に上がっていくと、係員はおらず、閑散としています。
「降りるときに検察するのでそのまま入船してください」との表示がありました。フリーな感じ。
6時台の月曜日、フェリーに観光客の姿は見えません。
代わりに、作業服のおじさんがたくさん乗っていました。
乗客のほぼ9割が、薄緑色のつなぎをきたおじさん、残り1割はスーツ姿の人たち。
島で何か工事をするのでしょう。
時間になり、滑るようにフェリーは動き出します。
海は、瀬戸内のように穏やかに凪いでいます。
● 夜明けの桜島
桜島の上に、朝日が昇っていくところ。
海には、太陽の道ができています。
山から見る御来光とはまた違う神々しさに、言葉を忘れました。
桜島桟橋の赤灯台と白灯台のところでは、釣りをしている人たちが見えました。
のんびりしていていい感じ。
● 桜島に上陸
15分の船旅を経て、桜島に到着しました。
城山展望台から全景を眺めたことはありますが、島に上陸したのはこれが初めて。
ゆっくりしたいところですが、時間的にあまり長居はできません。
島をぐるりと一周したかったのですが、かなわず。
乗り場には、サッカー日本代表の遠藤保仁選手のコーナーがありました。
ヤットさんは桜島出身なんですね。
こんな遠いところから日本代表に躍り出たなんて、すごいわ。
活火山島だけに、山の神のコノハナノサクヤヒメもあわせて祀られています。
あの女神さまが「桜島」の名前の由来になっているそうです。
少し辺りを散策して、再びフェリーに乗ります。
こちらの方には検札員がいますが、鹿児島港の方にはいません。
チェックは一度きり。ゆるいです。
● 天文館?海星館?
フェリーを降り、シャトルバスに乗って中央駅へ。
途中、天文館を通ります。
名前がきれいなので「鹿児島の天文館」といったら、完全にプラネタリウムのイメージ。
「天文館で飲んだ」などと聞くたびに(ん?)と気になっていましたが、鹿児島の中心街なんですねー。
江戸時代にこの辺りに設立された天文観測所、明時館(別名・天文館)がその名の由来だそう。
薩摩藩主の島津さんは、研究施設を建てた場所が、400年後には一大繁華街になるなんて、予想もしていなかったことでしょう。
以前、大分の「海星館」という天文台に、友人に連れて行ってもらったことがあります。
天文館?海星館?ごっちゃになってもしかたがないレベルじゃないですか!?
● ふたたびの観覧車
鹿児島中央駅のアミュプラザ鹿児島には、大きな観覧車がありました。
あれ、この光景、前にもどこかで見たような。
前日に長崎のココウォークを見上げた時と、同じ感覚になりました。
九州に来て3日目になりますが、毎日どこかで赤髪の"ぺえ"風若者を見かけます。
赤だったりピンクだったり、濃さはまちまちですが、今のモードなんでしょうか?
東京の方ではさほど見かけないので、この辺り限定でブームになっているのかしら?
● おばあさんの差し入れ
駅で、知覧行きのバスに乗り換えました。
駅前を過ぎると、とたんに結構な田舎に入り、バスは快調に飛ばしていきます。
一番前の席に座っていると、途中のバス停でおばあさんが降りる時に、
「これ、職場のみんなでね」と言って、運ちゃんに袋を渡すのが見えました。
路線バスで初めて見た、差し入れの光景!
地方のお年寄りにとって、ローカルバスは大切な移動ツールなので、運ちゃんたちを大切にしているんでしょう。
公営バスではNGかもしれませんが、民間バスで田舎の顔なじみ同士なら問題ありません。
おばあちゃんの優しさ。そしてきちんとお礼を言って受け取る運ちゃん。
心がほっこりしました。
● ステテコおじいさん
1時間ほど揺られ、武家屋敷前でバスを降りました。
観光客らしき人たちは、みんなそのまま乗っていきました。
おそらく終点の特効観音前まで行くのでしょう。
ほかに降りたのは、二つ前の停留所から乗ってきた、ほぼステテコ姿の地元のおじいさん。
町に降り立った白いステテコおじいさんのことが気になります。
(あの格好でいったいどこへ…)となんとなく目で追っていると、まっすぐバス停前のお菓子屋さんの中に入っていきました。
甘党なのかしら。
目的が分かったところで気持ちを入れ替えて、私は武家屋敷の方に向かいました。
● 知覧武家屋敷
薩摩の小京都と呼ばれる知覧は、今なお美しい緑の町並みが残っている場所です。
きちんと手をかけて保存しているのがわかります。
西郷恵一郎氏邸門
ここではNHK大河ドラマ「西郷どん」のロケも行われたそうです。
雰囲気バッチリですからね。
二日前に訪れた宮崎の飫肥(おび)の武家屋敷とは、また違う趣があります。
知覧型二ツ家
庭園もきれいに整えられています。
平日なので人が少なく、どの道を曲がっても、ほぼ独り占め状態です。
石垣と生垣の美しさ。
この一帯は国の重要伝統的建造物群保存地区、そして庭園は国の名勝に選定されています。
辺りはひたすら静か。
今がいつなのか、ここがどこなのかわからない、曖昧な夢を見ているような気持ちになりました。
● 特攻隊の地
次は特効観音の方に行こうかどうしようかと考えながら道の終わりまで歩いていくと、映画「僕は君のためだけに死にに行く」の記念碑がありました。
ここ知覧は、特攻隊の出撃基地があった場所。
戦争と時代がそうさせたとはいえ、タイトルのあまりのつらさに、足が動かなくなります。
与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の詩が思い出されました。
ああおとうとよ 君を泣く
君死にたもうことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとおしえしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや
知覧の地にいるからか、一節一節が流れるように思い出されます。
出てきた涙を止めようと、ふたたび歩き始めようとしましたが、うまくいきませんでした。
この映画は“特攻の母”とされる鳥濱トメから聞いた、特攻隊員たちの実話だそう。
つらい戦争の中でも、若い命が散った特攻隊や集団自決の悲劇は、特にいたたまれないものがあります。
歴史の事実として学び知ることは必要だと思いますが、感情的にどうにも足が進まなくなり、特攻観音まではたどり着けませんでした。
● 南九州市のマンホール
知覧町の武家屋敷、畜産、茶畑など、さまざまな細かい特徴を幾何学的にデフォルメしたデザインだそう。
見れば見るほど、複雑です。
● 知覧茶の里
知覧の茶畑。
緑茶の国内生産量の第1位は、都道府県別では静岡県がダントツですが、市町村別だとここ南九州市になるそうです。
『色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす』
「日本三銘茶」は静岡の静岡茶、京都の宇治茶、埼玉の狭山茶の3つを指しますが、
狭山茶ではなく鹿児島の知覧茶を加えることもあります。
深蒸し茶で、コクがありながらスッキリしているのが特徴ですね。
● 薩摩わかあゆ
ふたたび武家屋敷へ。今度は細道の方へと入ってみます。
保存地域のお屋敷ですが、今でも実際に人が住んでいます。
裏へ回ると、少し人が暮らしている生活感が見えました。
そのまま歩いていくと、知覧城跡にたどり着きそうでしたが、そろそろバスの時間が近づいてきたので、戻って車通りに出ました。
歩いていたら暑くなってきて、ソフトクリームが食べたくなりました。
先ほど、ステテコおじいさんが入っていった「お菓子の小田屋」に入ってみます。
江戸時代から続く老舗菓子店だそう。
ソフトもアイスもありませんでしたが、店員さんに「今日はちょうど、当店人気No.1のわかあゆが半額なんですよ」と勧められ、それをいただきました。
毎年恒例で6月中旬の3日間、「あゆまつりセール」が行われるんだそう。
それで、さっきのおじいさんは買いに来たんでしょうね。
薩摩わかあゆは、販売30年のベストセラー。
どら焼きのような生地に、牛皮のような餅菓子がくるまれたものです。
柔らかくて、もっちりモチモチとしたおいしさでした。
● 知覧ねぷた祭
7月に開催される、知覧ねぷた祭のポスターを見かけました。
知覧でねぷた?なぜ?
前に熊本城内の広場でねぶたを見たことはありますが、あれは熊本地震の復興のため。
こちらでも?弘前と?
後で調べてみました。
鹿児島県南九州市と青森県平川市が姉妹都市ということで、毎年行われているそうです。
● お茶むらいさん
南九州市のマスコットは、お茶むらいさんというそう。
お侍さんの、お茶むらいさん。かわい~い!
その2に続きます。
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知覧行きました。
懐かしく思いながら拝読しました。
知覧茶も美味しかったですよ。
今月熊本城見に行きます。
どうなっているのかな?楽しみなんです。
熊本城が公開されたと、ニュースで見ました。よかったですね~~。石垣を途方もないほど細かく確かめて、組み直していると聞いていました。
お互い、旅する身として、被災地の復興が進んでいるのなら、なにより嬉しいことですね💛