風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

お城と水と火の国へ(阿蘇) 2-(2)

2015-09-20 | 九州
2-(1)からの続きです。

○ 阿蘇山の南側へ

宮地駅にやってきた豊肥本線に乗ってほどなくして、さっちゃんが「せっかくここまで来たんだから、途中で南阿蘇鉄道に乗り換えてみない?」と言いました。
もともとこの日は、阿蘇神社方面に行くか、南阿蘇鉄道に乗るかと、二択で考えていたのです。

時刻表を見ると、電車の時間も大丈夫そうなので、立野駅で乗り換えることにしました。
土地勘がないのでこういう時、わかる人にひらめいてもらえると助かるわ~。



立野駅に着き、電車を降りました。
「秘湯の里とスイッチバックのある駅」と書かれています。
そう、この駅でスイッチバックするんです。



スイッチバックの説明もありました。
この駅と隣の赤水駅は、約8 ㎞の距離で標高差が約190 mあるというすごい勾配のため、電車はジグザグに動いていきます。
箱根と飯能で経験したことがあって、電車が逆方向に動くと、わくわくします。



先程までいたのは、阿蘇山の北側になりますが、この駅で今度は南側の方にぐるりと移動します。
立野駅は乗換駅なのに、どちらのホームも無人改札。
昼寝中の猫を見ながら、鉄道がやってくるのを待ちます。

○ ビールトレイン

やってきた鉄道は、一両かと思いきや、もっと長いものでした。
(観光シーズンの夏だからかな?)と思いましたが、どうも二両目以降は雰囲気が違います。



近くに来ると、「納涼ビール列車」と書かれていました。
ビール列車!
夏になると、東京湾や横浜港に納涼船が浮かぶのはわかります。
でも、納涼列車はなじみがなかったので、テンションが上がりました。

待っていた人たちは、単なる乗客だけではなかったようです。
「普通の列車に乗る人は1両目に。ビール列車の人は2両目から」と運転士が声を張り上げます。
小さなホームに券売機はなく、乗ってから車両内で精算する仕組みですが、列車の到着に合わせて、いつのまにかビール列車用のブースが作られており、水前寺清子風髪形のおばさまがハッピ姿で受付をしていました。
昨日、熊本の中心部に水前寺公園があると知り、チータが熊本出身だったと知りました。八代亜紀もですね。
わらわらと、チータの周りに男性陣が集まり出しました。



本数が少ないため、列車はすぐには発車せず、車両に入ってもしばらく待っています。
ヒマなので、運転席を撮影したりしていました。
なかなかすてきなコーナーです。



ぞくぞくと乗客がやってきますが、みんなチータから買ったチケットを片手に、1両目を素通りして2両目に向かいます。
ビール列車、大繁盛!

結構不便な場所にある駅ですが、みんなビール飲みたさと納涼のためにやってくるんでしょうね。
意外と一人参加の男性が多い様子で、出発前はとても静かでした。
まあ、カンパイしたらすぐに打ち解けるんでしょうけれど。



発車前になると、1両目の方も混みだして、立っている人もいっぱいになりました。
ようやく、普通列車1両+ビール列車2両は発車しましたが、その直後に突然キキーッ!と急ブレーキをかけます。
座っていても身体が大きく揺れるほどで、(隣の車両のビールは大丈夫だったかな)と、そっちの方を心配しました。
かなり肝を冷やしましたが、特に何の説明もなく、再び列車は動きだしました。

○ 雄大な南阿蘇



列車は雄大な自然の中を走って行きます。
ずっと下の方に渓谷が見え、(ここも高山なんだなあ)と思います。





○ 南阿蘇水の生まれる里白水高原駅

途中の「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」で降りました。
ここは1992年4月1日誕生した、漢字で書くと日本一長い駅名。(文字数14文字、読み仮名22文字)
うん、覚えられません!

ちなみに、一時期一畑電鉄の「ルイス・C.ティファニー庭園美術館前」駅(文字数18文字、読み仮名23文字)に、日本一の座を奪われていたものの、美術館がなくなり駅名を「松江イングリッシュガーデン前駅」に改称したことで、この駅が再び一番に返り咲いたとのこと。
現在の二番目は、鹿島臨海鉄道の「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅」(文字数13文字、読み仮名22文字)だそうです。
どんな世界にも、競争ってあるものですね。



8角形のログハウスのような新しそうな駅ですが、ここも無人。
ほかに地元の高校生2名が降りましたが、すぐに駅からいなくなりました。



○ 2つの水源探し

この辺りにも水源がいくつかあるようなので、散策がてら探してみることにしました。
本当に阿蘇は、あちこちで湧き水が出ていて、みずみずしいところです。



駅にあった地図を頭に入れて歩き始めましたが、標識がないため、道に迷ったかと不安になりはじめます。
道を聞こうにも人が全く通りませんでしたが、なんとか目的地の水源にたどり着きました。



短い鉄橋の下にある、寺坂水源です。お寺の入り口にあり、昔はここで身を清めて、参拝したそうです。
湧水量は毎分5トン。えーっ、すごい量ですね。



湧き水のすぐそばに立つお寺、正教寺の山門は、小さいながらも立派なものでした。



それからさらに歩いて行くと、民家の裏にひっそりと川地後水源がありました。
そこには、帰宅途中らしき男の子がおり、水をタオルに湿らせて首を冷やし、スッキリして家へと向かったようでした。

泉は本当にきれいで、あめんぼうがいました。
湧き続けているから水が濁ることもないんですね。



湧き水の泉をいくつも見て、すっかり気持ちよくなりました。
辺りは広々とした阿蘇の自然が、視界360度に広がっています。
ここはカルデラ内。こんなに青々としている場所だなんて。

○ カルデラ内ウォーキング

散歩にうってつけの快適な環境。
道は一本だし、おそらくこのまま歩いて行くと隣の駅に着くでしょう。
駅舎が、なんだかおもしろそうだったし。



というわけで、阿蘇の山々を眺めながら、てくてく歩いて行きました。
何もないようなところでも、通り沿いに家はちらほらあり、住んでいる人がいるんだなあと思います。
噴火は怖いでしょうけれど、でも日々美しい自然の中で暮らせる人たち。
うらやましくはあります。



これは何でしょうね~?同じ形をした用途不明の小屋が3つ、並んでいました。
カラオケボックスならぬ、カラオケハウスとか?
しかも、7と8の小屋の間に小屋があります・・・7.5?



大きな鳥居がありました。西宮(下田西野宮)神社です。
阿蘇神社の西にあるお宮のために、西野宮と呼ばれるそうです。
鳥居の向こうに大きく見えるのは、阿蘇山山頂付近。





もちろん阿蘇山を祀っている神社ですが、阿蘇大明神のほかにもご祭神を15柱お祀りしているそうです。
自然の豊かな恵みを受けているこの辺りは、逆に自然の猛威も受ける場所になるため、神様への祈りは欠かせないのでしょう。

○ 駅は城郭風で温泉

30分ほど歩いても、駅らしいものが何もないため、(線路と外れてしまってないかな)とだんだん心配になってきましたが、そのうちに小さな集落にさしかかり、標識が見えてきました。
角を曲がるとあらびっくり。
すぐ目の前に、お城の天守閣のような建物がありました。
「これ、駅だよね?」と恐る恐る近寄ります。
ここが、目指していた下田温泉駅でした。おそらく昔、この辺りにお城があったんでしょうね。



ここは、駅舎内で温泉に入れるという珍しい場所。
駅舎の戸をガラガラと開けると、そこには番台があり、おじいさんとおばあさんが座っていました。
南阿蘇鉄道に、有人駅があったのね!
いえ、どう見ても、駅員ではなく温泉の受付をしているようです。

○ カップル限定幸せの石

駅舎前の地図に載っていた「幸せの石」の場所を聞いたら、番台の横にいたおばさんが「そこの駐車場にあるわよ」と教えてくれました。
お礼を言って向かうと、背後からガラガラと駅の引き戸が開く音がして(駅なのにスライドドア!)、おばさんが「彼氏を一緒に連れてこなきゃだめよォ~!」と声を張り上げました。
ん??どういうこと?
二人で首をひねります。

ここだ!と思って近寄ったら、枝を積み重ねた小山だったりして、うろうろ探して見つけた石。



大きな石に穴が開いており、カップルがその穴に手を通して握り合うと恋が叶うと言われているそうです。
なるほど、そういうわけね~!



あいにく女二人で来ている私たち。
一人で両手をつないでみましたが、あまりに寂しすぎるので、「さっちゃん、一緒に手をつなごう」と、2人で手を握り合いました。
これで私たちはラブラブカップルに・・・ヒロポンごめーん、なりゆきでー(笑)。

○ あやしい恋みくじ

さっちゃんは、石の横にある「恋みくじ」の機械に目が吸い寄せられています。
「なにこれ!?あやしい・・・(喜)!」
あやしいものが大好きなさっちゃん。一瞬前に私とラブラブしたことは、もうすっかり忘れているようです。
「100円って書いてある~!ほんとに出てくるかな?」

普通の人は「あやしい=近寄らない」という行動をとるところを、あえて「あやしい=どうなるかチャレンジだ!」と試してみるさっちゃん。
勇者です。
でもまさかねと笑っていたら、本当に100円を投下しました!
ゴトッと高価の落ちる音。
さっちゃんーー!ほんとにやっちゃったー!



わあ、どんなドラマが起こるの?
2人でかたずをのんで、その後の変化を見守ります。
一秒、二秒。
・・・シーン。

「なにも起こらないー!」と泣き笑いのさっちゃん。
う~ん。

「でもまあ、100円分は楽しめたからいいや」と気持ちを切り替える彼女でしたが、「一応、聞いてみようよ」と言いました。
使えないのなら、張り紙をするか、コイン投入口をふさいでおいた方がいいと思うのです。
第二のさっちゃんがいるかもしれませんからね。

駅舎に戻って、番台のおじいさんたちにその話をしました。
「そうだね、紙を貼っておくよ」と言われるかと思ったら、「ああ、あれ」と訳知り顔でうなずかれます。
知ってて放置かーい!と思ったら、おもむろに身をかがめて、箱を取り出して見せました。
そこには、おみくじがごっそり入っていたので、びっくり。
「あの中に入れておくと湿気がすごいからね。ここから取って」
そういう展開ですかー!

「さあ、さっちゃん、お金入れたんだから」「私にはヒロポンがいるから、代わりに取って」(いまさらー!笑)
譲り合って、結局私が取ったものは・・・
末吉ー!き、凶の手前…。

「愛情運」のお告げは、
「面影を思い描けど叶わぬ愛の儚さよ 楽しかった日々はもうかえらない」
ギャー!メロディつけたらバラードだー!



阿蘇の神様に、人生の厳しさを教えられました。ああう。

○ 阿蘇下田城ふれあい温泉駅

ホームに入ります。「阿蘇下田城」と書かれています。
駅がお城ってことかな?
ここは下田温泉駅といわれていますが、それは通称で、正式な駅名は「阿蘇下田城ふれあい温泉駅」 (文字数11文字)というそうです。
これまた長い駅名だなあと思ったら、こちらは日本で5番目に長い文字数。
「とうきょうスカイツリー駅」と同じ数です。

南阿蘇鉄道に、2つも長さベスト5にランクインしている駅名があるとは。
この辺りの人たちは、気が長いんでしょうね。
ただ、隣の駅の名は「加勢駅」と2文字でした。



すぐに列車がやって来ました。でもこれは逆方向行きです。
これも、三両編成のうち二両はビール列車になっていました。
単線なので、この列車が終点まで行き、再び戻ってきたものに、私たちは乗ります。時間はたっぷりあります。



○ 阿蘇とアイス

なにかと予想外の展開続きで、楽しくなりました。
恋みくじのお返しに、アイスをゴチします。
さっちゃんはしろくま。私は、阿蘇の景色を見ながら食べたくなったソフトクリームにしました。



ホームのベンチには、部活帰りのような大きな荷物を持った湯上りの少年二人が身体をふいており、背後の壁からは「あ~~」という気持ちよさそうな声が聞こえてきました。
壁一枚はさんで、駅ナカ温泉です。
のんびりと列車を待ちながら温泉につかるというのもまた、いいですね。



○ 帰りの静かな列車

辺りが薄暗くなってきた頃に、待っていた列車がやってきました。



またもや3両編成で、目の前に止まったのは2両目のビール列車。
往復の帰り道なので、中のみんなはもうかなり出来上がっているようでした。
2両目のドアはあかず、1両目から運転士さんが手招きしたので、走って乗り込みます。



行きとは違い、とてもクラシカルな車両でした。
オリエント急行気分です。乗ったことないけど。
とても空いていて、隣の車両では宴会が繰り広げられているとは思えない静けさです。



○ 宴会客と一緒のカオス

快適に終点の立野駅まで戻り、先ほど降りた熊本駅行きのJRに再び乗り換えました。
さっきいた猫ちゃんと再び会いました。



でもここで気が付いたんです。
ビール電車の乗客も、同じ電車に乗り込んでくるということに!

これまでは車両が分かれていましたが、乗り換えたらもうみんな一緒。
今度は2両しかないので、逃れようもありません。
冷房のきいた車両内に、お酒の匂いがムンムン充満します。
みんな、仲良しになったようで、和やかな雰囲気。
ガッハッハという笑い声がそこかしこで起こっています。
かわきもののおつまみも、ボックス席を超えて飛び交っています。

さっきの車両の数からいっても、1:2ですから、シラフよりも酔っぱらいの乗客の方が倍はいるということですね。
シラフ車両に乗客はほとんどいませんでしたし、下田温泉駅にいた少年たちは途中下車していきました。
つまり、さっきのビール車両に私たちがうっかり入ってしまったような状態です。
間違ってゾンビ電車に乗ってしまったような、明らかに間違ったところに来ちゃった気分。
ワッハッハと止まらない笑いの渦の中、私たちは予想外の状態に目を合わせて笑いをこらえながら、電車に揺られていきました。

男性の方が圧倒的に多く、世代を超えて語り合っています。
途中駅で降りた青年二人が、車両が動き出すまで待って、中のおじさんたちにお辞儀をしてお見送りしていました。
そこまで仲良くなったのね~。

○ 甘い醤油

私たちの駅に着いた時に、ゲリラ豪雨が降りだしたので、雨宿りを兼ねてyoume(夢タウン)で買い物をします。
イオン並みの大きなスーパーで、地元の野菜コーナーが充実していました。
白瓜にしか見えない大きな白ナスの迫力。
「こっちは醤油の種類が豊富」とさっちゃんが言うとおり、醤油コーナーがありすぎて選べないほどに充実していました。

九州の醤油は甘口だそうです。
たしかに、前の九州旅行で、薩摩揚げと一緒に出された醤油は砂糖が入っているような甘さでした。
かなりのインパクトで、今でも忘れられません。

買い物を済ませた頃には雨も上がっており、家で夕飯をいただきました。



阿蘇の自然にどっぷりと使った一日でした。3日目に続きます。


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