風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

夏休みには庄内の風(鳥海山) 3-(1)

2015-10-23 | 東北
2-(2)からの続きです。

○ 庄内料理のモーニング

3日目、旅行最終日の朝。朝食ビュッフェには、土地の料理が並んでいました。
庄内鶏の卵とじに、玉こんにゃく。



そしていも煮。やっぱり夏も、食べるのねー!
鍋料理と同じく、冬に食べるものととらえていた私の頭が固いのかしら~。
単に、夏にいも煮を出されたのが初めてだったということです。



土地の名産物を使った料理は、どこで食べるよりもおいしいもの。
よそっていただきました。



2泊したホテルをチェックインします。
長居をした割に、ほとんど夜しかいませんでした。
大きなホテルで、どこか昭和なレトロ感の残る内装。
この青い椅子、流線型で座り心地がよかったです。



○ 滝ガール加わる

車で駅前まで行き、アヤちゃんをピックアップ。
2日前にはアコリン、前日には私が乗ってきたのと同じ夜行バスでやってきました。
チョイスが少なく、路線は限られますが、3人が次々に3夜連続で同じバスを使っているなんて、なんだかおもしろいです。

滝ガールとして活躍中の彼女がジョインして、3人で鳥海山の滝巡りをすることに。
前に会った時に「私は吊り橋が好きだから、いつか滝と吊り橋でコラボしたいね!」と話していましたが、その後彼女は着々と滝を制覇し続けていき、もともと先に進んでいたのが、どんどん距離が開くばかり。
滝の化身じゃないかと思うほど、暇さえあれば滝を訪れている滝LOVEの彼女です。

○ いよいよ即身仏?

まず最初は滝ではなく、即身仏サマに会いに行くことに。
昨日一日かけてゆっくり覚悟、いえ決心しましたが、毎日公開されているわけではないことがわかりました。
この日は非公開日。

旅の最終日なので、がっかりして肩を落とすアコリン。
なぐさめようと手を伸ばしかけたら、パッとこちらをふり向いて「ホッとしてるでしょ?」と突っ込みが入りました。
すっ、鋭い!
まさしく図星で、ホッとしていますが、ようやく見に行く決心がついたとこだったので、(せっかく覚悟を決めたのに)と肩透かしを食らった気分。
ちょっと残念でもあります。

でも、アヤちゃんにその話をしたら「えっ、即身仏?私無理!!」と瞬時に却下されました。
「ほらー」と私。「あれー?」とアコリン。
「えっ、リカさんが行きたいんじゃないの?てっきりそうかと思った」とアヤちゃん。
「ひどいわー」とぶーぶー言うと、「リカさんいつもマニアックだから、間違いないかと思った」とのこと。
まずいわ、早急にイメージチェンジをはからなくては!

どのみちこの日は見られないので、どうしようもありません。
しぶしぶ、アコリンも諦めます。
と思ったら「そうだ、今度即身仏ツアーを企画しようっと」という小さなつぶやきが聞こえてきました。
どうやら、諦めてはいないようでした。(即身仏ツアーって~)

○ 鳥海山の滝巡り

滝ガールに案内してもらい、まずは胴腹滝へ向かいました。
滝があるのは山の中。どんどん山道を登って行き、急激な高度差に耳がウワーンとなります。



ある~日、森の中、熊さんに、出会った~♪
キャー、いやよー、出会いたくなーい!



胴腹滝とはなんだかすごいネーミングですが、鳥海山の伏流水が山腹から湧き出している様子を表した名前だそうです。
2本の滝の間に不動堂があります。昔から信仰の地だったとわかります。



水はとても美しく、苔むした大きな石をつたってお参りしました。
ここも湧き水が飲めるようになっています。



「殺菌加工を行っていないため、飲用には責任を持って」と書かれていますが、ここで殺菌加工を行うのも人工的な話なので、そのまま飲んでみました。
おいしかったです。
タンクやペットボトルを持った人たちもやってきました。

○ 虹の滝

それから、さらに山道を登り、車で行ける一番奥まで行きます。
車を停めて二の滝遊歩道を歩き、まず最初にある一の滝へ。
滝の横にある神社をお参りして、水際まで行くと、すごい水量が、ごうごうと音を立てて落ちて行きます。
じっと眺めていると、なぜか乗り物酔いをしたようなクラクラの気分になってきます。
日が射すと、かすかに虹が見えました。
一ノ滝は虹ノ滝でもあるんですね。



二の滝は、ここから30分ほど歩くことになるのだそう。
さらにその奥には、三の滝があるようです。
滝ガールのアヤちゃん一人なら迷わず行くでしょうけれど、滝ビギナーのアコリンと私にとっては大変なコースなので、別の滝に行くことにしました。

○ きららのソフト

一気に鳥海山を下り、いったん人里に戻ってきました。
鳥海山は大きな山なので、麓に至るいくつものルートがあります。
再び山中へと入る前に、アヤちゃんのリクエストで、道の駅きららによりました。
「ここのソフトクリームが食べたかったの」



彼女は鳥海高原ヨーグルトが好きで、自宅にお取り寄せしているそう。
ソフトクリームは、絞り立てのようなおいしいミルク味でした。
アコリンは、新鮮な地場野菜を段ボール一箱分買って、家に送っていました。
ふるさと便ですね。

○ 貴婦人の滝

次に訪れたのは、玉簾(たますだれ)の滝。
「たますだれって、南京玉簾かな?」と、あの竹のシャカシャカいうものを想像していきました。



ここにも、滝の前に御嶽神社があります。滝ごとに神様が祭られているみたい。
御神体のような存在なのでしょうか。



今度の滝はとても大きく、でも水量は先ほどの一の滝に比べて多くはありません。



水が簾のように見えるからだとわかりました。
まったく、南京玉簾のようではありません。そもそも南京玉簾って、どんなものかよくわかっていません。
エレガントなイメージの滝。力強いながらも、女性的な優しさが感じられて、すてきです。



先ほどは、観覧場所から眺めるだけでしたが、ここは近くまで行けるため、滝ガールは裸足になって、どんどん水の中に入って行きました。
それを見て、まねをする子供たち。
滝ガールは、やはり滝に少しでも近づきたいんでしょうね。



そばにいるだけで、細かい水の飛沫が全身に吹きかかり、ミストシャワーを浴びているようです。
とても気持ちがいいひと時でした。

○ 番地はこあら

そろそろお昼の時間なので、ランチをとることにします。
お店を探す中で発見した番地。
こあら・・・!これも、キラキラネーム?



じゃあ、隣は「かんがるー」とか「わらびー」なの?と思いましたが、いたって普通の地名です。
なぜにここだけコアラ?オーストラリアと姉妹地区?地区単位の交流って、あるの?
ユーカリの木もなさそうだし、冬には雪に覆われるだろうこの辺り。
とっても気になって、後で調べてみました。

そうしたら、「こあら」は漢字で書くと「古荒」なんだそうです。
もとからあった地名なんですね。
でもなぜ、漢字をやめたんでしょうね。元々は武士っぽいイメージだった土地が、ひらがな化でほのぼの感たっぷりになりました。

○ 落ち着けるランチ

おいしいと評判の新月ラーメン屋に行ってみたところ、ちょうどお昼時間とあって、長い行列ができていました。
店の外にまで並んでいるので、そこまでこだわっていない私たちはあっさりあきらめて、そばにある旬菜七草で昼食をとりました。



温かみのある店内に、おちつきます。
人気ラーメン店だとせわしないので、こういう処のほうが気持ち的にほっとします。
お店の人がカエル好きらしく、あちこちにカエルの置き物がありました。



鳥さんが楊枝を取ってくれるのです。わー、賢いのね!
かわいいしぐさを見たくて、楊枝、使わないのに、何回も動かしてみました。



から揚げ定食を頂きました。からりと揚がっていて、おいしかったです。
お皿のチョイスもすてき。お店の人の気配りがあちこちに感じられます。
家のそばにあったら、通いたくなるようなお店でした。



先ほどまでは山の中の滝めぐりをしていましたが、山を下りるとどこまでも緑の水田が広がります。
秋には黄金色になって、稲穂がたれるんでしょうね。

広々として気持ちのいい景色。
自然と深呼吸をしたくなるような場所では、都心のゴミゴミしたビル街にいる時よりも、食後の消化がよさそうです。



3-(2)(最終回)に続きます。


夏休みには庄内の風(遊佐町) 2-(2)

2015-10-15 | 東北
2-(1)からの続きです。

○ 普通に行けないお寺

地域の小さな神社を巡ったあとで、「いいお寺があるの」とアコリンに連れてきてもらったのが、ここ永泉寺でした。
ここが正門です。門前からしてすっごく雰囲気がありますね。
見るからに、簡単にはたどり着けません。辿り着くまでがすでに修行!
物語の世界へ入り込んだようです。



モンキーマジック気分で歩き始めました。
仁王門に至るまでの参道石段が苔むしていて歩きにくく、なかなかたどり着けません。
自由自在に伸びている木の根っこに足を取られそうになります。
坂になっているので、バランスをとりながら進むのはなかなかの難儀。ヒールで向かうなんてもってのほかです。
訪れる人を選ぶお寺だわ~。
こんな場所は、初めてです。

実際には、車用の裏道があるので、ここを通らずとも参拝できるんですけれどね。
でないと本当に、山伏とか忍者しか集まらなさそう。



私たちは、王道を通ります。
ヒールでもないし、体力も大丈夫。なら通らない手はありません。

石をつたって進んでいく途中、何度も滑りそうになりながらも、ようやく辿り着きました。
登ったところは仁王門。
その中で出迎える仁王が、こわい~。
「おい!お前、なぜ来た!」って顔で睨んでる~。
がんばってここまで到達しても、その先に進む気持ちがくじけそうになります。



仁王様の上には、深い瑠璃色を背景にした色鮮やかで美しい天井画が描かれています。
さまざまな聖人と観音様が描かれており、細かい絵柄に見とれました。



そうしてようよう、仁王門をくぐります。
境内の三方にお堂が立っていますが、シーンとして、人の気配はありませんでした。



池もあります。枯山水とは真逆の、緑たっぷりの庭園。
人の手を入れるのは最小限にとどめて、あとは自然のままにしている、趣のあるお寺でした。
住職さんはお留守で、御朱印はいただけじまい。お盆近くでお忙しいのかも。



○ 山の中の神社

参拝後、再びドライブを続けます。
大きな鳥居がありました。前日マリエさんが言っていた通り、この辺りの神社の鳥居は確かにビッグです。



大鳥居は町なかにありましたが、この鳥居の神社へ向かっていくと、道はどんどん細くなり、山の中へと入っていきました。
勾配のきつい山道で、うっそうとした緑の中に分け入っていき、(本当にこの先にあるのかな)と不安になった頃に、拝殿がありました。



剣龍神社といいます。かっこいい名前ですね。きっと言われがあるのでしょう。
龍の名のつく神社なのに、手水舎はなぜか亀のデザインでした。



立派な神社ですが、無人で、草も伸び放題で、廃墟のようにも見えます。
あまりにひっそりとした山奥にあるため、一人で来るにはなかなか勇気がいりそう。
夏だから、あまり参拝者も来ず、手をかけていないのかもしれません。活性化させたいものです。 

○ ルーツを探して

ここ遊佐町でお母様が育ったというアコリン。ご親戚の神社がこの辺りにあるらしいのですが、はっきりとわからなくなっているそうです。
そこでこの日は、観光のかたわら、地域の神社巡りをしています。
地方には、今でも神社がたくさんありますね。
神社を見つけると車を停めて、石碑に刻まれた頭領の名前を確認していますが、なかなか簡単には見つかりません。
根気と時間がかかることですからね。
私は一緒に狛犬チェックをしています。山形の狛犬もいいわ~。

アコリンの母方のお家に着きました。
おばあさまの代まで、バス停前の、広い敷地にあるこの皇大神社を管理していたそうです。
こ、この神社を管理していたんですか!わー、すごい。



ご自宅は今は無人となり、時々御親戚が建物を見ているそうです。
アコリンがこの家のことを気にしていると、前から話を聞いていました。
遠くに住んでいるとそうそう動けないため、悩ましいそうです。

親戚一族の中でも、そういったことは、気にする人でないと動かないものですからね。
私は親に「ルーツをたどれ」と言われていますが、なかなか実行に移せずにいます。
(遠くだけど、私がやらなきゃ、ほかの親戚はやらないから~)という気持ち、よくわかります...。
お互いのミッションが、いつか無事クリアできるようにと、皇大神社にお祈りしました。

○ おくりびとの場所

車に乗って、再び酒田方面に向かいました。
「おくりびと」の映画が撮影された場所を探しに行きます。

ところがなかなか探せません。自然が雄大すぎて。
いったん、遊佐駅まで戻り、改めて散策開始。
途中で湧き水を発見しました。この前の熊本旅行から、とみに湧水に目がなくなっている私。
すごい勢いで水が出ており、見ているだけで元気が出ます。
車を止めて、二人でのどを潤しました。



グーグルマップで場所の特定ができました。
月光川のほとりだとわかります。
川沿いに公園に車を停めて、うろうろと探します。



なかなか探せずに、宝探しをしているような気分になりました。
素敵な橋。大きな石が置かれており、車は通れません。



橋から川を見下ろします。川の上の土手に見えるのは、椅子?
川の土手に、ぽつんと一つ置かれた椅子です。ようやく発見したわー。

○ エアーバイオリン



そばに行って、ちょっとびっくりしました。
え、これなの・・・?
あまりにさりげなくて、近所の人が自宅から持ってきて、そのまま置き忘れたよう。
コンクリートで固定されているものかと思ったら、普通に動かせる軽い椅子でした。
誰もいたずらして持ち去ったりしないなんて、治安がいいんですねー。



ここは、主人公が川辺でチェロを弾いた場所です。
せっかくなので、私もおくりびと気分になって、椅子に座ってポーズをとってみました。
やっぱりチェロでしょう。



でも、とっさのことで格好を思い出せません。何だか違うような気がします。
じゃあやっぱり、弾いてきたバイオリンの構えにしようかな。
エアーバイオリンを奏でました。



椅子に座って辺りを眺めました。
モックン演じる主人公がチェロを弾きながら見ていた景色です。
鳥海山に庄内平野に月光川。すごくいい眺め。



こんな田舎があるっていいなあ。
こんな場所に夏にこられるって、うれしいなあ。
あまりに気持ち良くて、歌い出したくなりました。



帰り際、道端におくりびとのロケ地だと書かれたA4版の張り紙を発見。
これを探していたのに、気がつかない小ささでした。
表示を探す人は、土地に不慣れな人だから、もっとばばーんと貼りだしてほしいなあ。
東北の人は奥ゆかしいので、目立たないようにしているのでしょうか?



先ほどの橋を渡って帰ります。
フォトグラファー・アコリンが、雰囲気のいい写真を撮ってくれました。
ありがとう~!これで日中の清張フォトはなかったことに(笑)。

○ 町の中の神社

そろそろ日が傾いてきています。酒田に帰る途中、道路沿いに立派な神社があったので、立ち寄ってみました。
大物忌神社です。日中に参拝した一の宮と同じ神様を祀っているのでしょう。
ちなみに小物忌神社もあるそうです。



立派な赤い鳥居を通ります。やっぱりこの辺の鳥居は大きいのね。



境内は背の高い木々で鬱蒼としていました。
町の中にあるとは思えません。まさに社の森です。



おしゃれなしめ縄ですね。神様のネックレスのよう。
真ん中は米俵を模しているのでしょうか。



アコリンの撮影中、私はすてきな空を撮っていました。

○ 早起きスーパー

ドリンクを買おうと立ち寄ったスーパーのレジの所で、驚きの表示を見ました。



朝5時から営業!!早起き―!
地方のお盆の本気を見ました。

○ 不二家はどこに

あこりんが「不二家のケーキが食べたい」と言います。
そういえば朝から言ってるなあと気が付きます。

「言ったじゃん。きっと橋に気を取られて、忘れちゃったんだよ」
うーん、私の場合、そうかも。

「じゃあ食べよう」と、向かいましたが、彼女があると思っていた場所にお店はありませんでした。
私は全く覚えていません。
お店はいったいどこにあったのかしら?

「夢だったのかなあ。あるいは白昼夢?」
2人とも記憶が曖昧で、首をひねります。
ネットとカーナビで検索し、近くにある不二家の店舗は駅の向こうだとわかりました。
「ここ、行ったことがない場所だよね」「やっぱり私の記憶が怪しいのかなあ」
考えても答えは見えません。場所が分かったので、駅を超えて行きました。

後になって気が付いたんです。このお店、朝に遠くから看板を見たところだと。
思えばたしかに、その時アコリンは不二家のことを話し、私は橋に気を取られて生返事をしていました。
記憶は間違っていなかったわねー。



○ 旅先のバースディケーキ

「今月誕生日だったよね。ケーキをごちそうするわ」とアコリン。
ホテルの部屋で、二人でショートケーキをいただきました。
ロウソクまで準備してもらいましたが、ホテルなので火はつけずにおきました。

旅先で祝ってもらうって、新鮮です。
二十歳のバースディをバンクーバーでお祝いしてもらった時以来かも。
いい思い出を、どうもありがとう!



この日も日中はずっと暑かった夏の一日。
ゆっくりお風呂に入ってリラックスしながら、即身仏のことを考えました。
(忘れてないですよ~)
アコリンは興味本位ではなく、テレビの特集を観てとても感動したのだそう。
即身仏は、今なお生きていると言われる空海伝説にあやかっているそうです。
初めて聞いた時はショッキングでしたが、この日一日かけてこの地方の風土に触れ、ここで培われた信仰心を感じたことで、即身仏と相対する決意が少しずつ固まってきました。

よーし、明日アコリンに話をしようっと。
ハイシーズンでツインルームがとれなかったため、ホテル内ではお互いのシングルルームを行き来しています。
連泊している夜は気楽。眠くなるまで、この日撮った写真を眺めて、部屋でのんびり過ごしました。

3日目に続きます。


夏休みには庄内の風(酒田) 2-(1)

2015-10-14 | 東北
1日目からの続きです。

○ 朝の窓の外

朝、目覚めて部屋のカーテンを開くと、窓の外に明るい街が広がりました。
この日もいい天気です。



昨日の夕方と同じアングルの、朝の最上川です。
早朝のためか、大通り名のに車がほとんど通りません。



○ ラ・フランスのカレー

アコリンと、ホテルの朝食バイキングに行きました。
山形の名産、ラ・フランスのカレーと聞いて、興味しんしん。
見た目は普通のカレーで、ラ・フランスがゴロッと入っている様子はありません。
食べてもよくわかりませんでしたが、甘口でほのかに酸味のする味のカレーでした。
ルーに溶けこんでいたのでしょう。



デザートに鳥海鳥海高原ヨーグルトをいただいて、シャキッと目が覚めました。

○ レンタカー屋さんの送迎

この日から、レンタカーで移動します。
でも、部屋から町を見下ろしても、近くにレンタカー店はありません。
(どうやって行くんだろう?バスとかなければタクシーか歩きかな)と思っていたら、ホテルの入り口に、レンタカー店の係の人が立っていました。
お店は離れたところにあるため、ホテルまで迎えに来てくれたのです。
こういうサービスもあるんですね。普段、駅チカでしか車を借りたことがなかったので、新鮮な体験。
代行運転といい、交通網が入り組んでいる辺りではなじみのないサービスです。

お店の人とアコリンは、借りる前の車のチェックをしに車庫に向かいました。
店内で待っていた私を呼ぶ彼女の声がしたので、なんだろうと行ってみます。
ネコがいるとか?ヘビがいるとか?

○ 黒光りのスポーツカー

「見てー!」テンションの上がった彼女が指さすものは、流線型のスポーツカー。
「ロードスターの最新モデルが出たのよ!」と興奮口調です。



久しぶりのロードスター!最近ではスポーツカー自体あまり見かけなくなりましたが、ちゃんとバージョンアップしているんですね。
黒光りするスリムなデザインがかっこいいです。シロウト目で見てもわかります。

「乗ってもいいですか」とお店の人に許可をもらって彼女が運転席に試乗したので、私も助手席に乗りこみました。
わあ、車高が低いわー。この目線の低さ、かなり久しぶりです。

「ああ、すてき。そしてさすがのお値段・・・ハ~」と、うっとりしながらも価格にため息をつく彼女。
前々から、うすうす走り屋の気配は感じていましたが、やっぱりこういう飛ばす車が好きなのね、アコリン。
意外なギャップがいい感じです。

○ ドライブ出発

新型ロードスターを堪能してから、ファミリータイプのレンタカーで出発。そこは女性らしくね(笑)。
抜けるような空のドライブ日和に、気持ちがウキウキします。ワクワクのドライブの始まりです。

運転しながらアコリンが「あ、不二家がある」と言いました。
でも私は、その時通過中の高架橋の撮影に気を取られていて、「うん」と答えたきりでした。
このなにげない会話を二人ともすぐに忘れたため、後でさんざん悩むことになるのです…。



○ 山形はお漬物

まずは、駅のそばの彼女のご親戚宅に行きました。
車内で待っていようとしたら、わざわざ外まで出てこられた伯父さまと伯母さまに、私も一緒に家の中にあげていただきます。
地方の人は、温かくおもてなししてくれますね。

お菓子とお漬物を出していただきました。
前日の昼食の蕎麦屋といい、山形に来てから連日お漬物を食べています。
朝のバイキングにもありました。
やっぱり山形は漬物大国なんでしょうね。

会話の合間には「しゃべってること、わからないでしょう」と私のことを何度も気にかけていただき、アコリンは「通訳して」と頼まれていましたが、私の親戚の話し言葉と似ているため、さほど苦労なくヒアリング可。
会話の中に「なんじゃ」と言う言葉がたびたび出てきて(ナンジャはわからないなあ。どんな意味だろう?)と思ったら、「南ジャスコ」のことでした。
方言じゃなくて略語だったー。

○ リクエストは即身仏

親戚宅をおいとまし、改めて「今日はどこに行こうか」と考えます。
気ままな二人旅。この日はちゃんとしたプランを立てていません。

アコリンが「即身仏を見たい」と言ったので「エッ?ハッ?」と自分の耳を疑いました。
「そそそ、そくしんぶつ!?」「ギャー、いったいナゼ?」「突然言われてビックリしたよー」
うわずった声での私のリアクションにヘソを曲げることなく、彼女は丁寧に説明してくれます。
この辺りでは、即身仏とは立派な信仰の対象だということ。
この前BSでの特集番組を見て、興味をひかれるようになったということ。
「即身仏は、山形のこの辺りに集中していて、つまり即身仏の宝庫であり聖地なのよ!」

熱弁をふるう彼女。
う、うん、純粋に参拝したいという真面目な気持ち、よくわかりました。
「ファンも多いんだよ。○○僧の金のテレカは売れ行きいいらしいよ。ほら」
「キャー、画像はいいよー(必死)」
即身仏になった僧侶の名前をすらすらと言える彼女にびっくり。
それぞれの特徴をしっかり押さえています。本当に興味があるのね~。

アコリンは、私よりも慎重なタイプ。
私は割と「考えずにダイブする」タイプなので、アコリンにストップをかけてもらうことが多いのですが、いつもとは逆になっています。

友の希望を適えてあげたい気持ちはやまやまですが、やっぱり怖いのです~。
だって、ミイラじゃないですか・・・。
人々を救うために自らの意志で食を断ち、命を絶ったというその精神力たるや、とても真似ができないものです。
どうしたって、人間の生存欲求は強いものですから。
なので、仏となった僧侶に対しては深く尊敬しますが、やはり視覚的にショックが大きそう。
どうしても「こわい」という印象が強くて、(貧血を起こしそう。私は無理~)と思います。

博物館に展示されたミイラとは違って、お寺で大切に保管され、祀られているために、魂を宿って人間には制御できないほどの巨大なパワーを持っているような気もするのです。

これは、自分の中で恐怖を克服しないと、トラウマレベルで引きずりそう。
「ちょっと時間をちょうだい~」と情けない声を振り絞ると、アコリンは了解してくれました。

○ またもや長い石段

そんなわけで、即身仏の話はあとにして、この日は隣町の遊佐にある、鳥海山大物忌神社へむかいました。
これは私のリクエストです。



ここは出羽国一の宮。木の鳥居が素朴でいい味を出しています。
しかし、その先にそびえる心臓破りの石段を見たとたん、2人でげっそり。



昨日、さんざん羽黒山の石段を上りましたが、あれだけではまだ足りないと神は言うのでしょうか。
マッサージが足りなかったのか、ふくらはぎに筋肉痛が残る脚を振り上げて、長い石段をあがって行きました。

登りきったところにある拝殿の中には、さらに階段が見えます。
もう階段はいいわ~。
鳥海山そのものが御神体だから、上へ上へと続いて行くのかしら?

拝殿の柱に「防犯カメラ設置」のアラーム表示が貼られていました。
ロシア語でも書かれているところに、土地柄を感じました。
ここは日本海側ですからね~。



彩色されていない木造の拝殿よりも、その奥にある本殿の方が朱塗りで豪華。
ですがこちらは、正面からは見えません。
横から見ないと、この鮮やかさには気づかないのです。





○ とびうおラーメン

ちょうどお昼にさしかかったので、御朱印をいただいた時に、アコリンがおすすめランチを神社の人に質問しました。
十六羅漢の道の駅を勧められたので、行ってみることにします。
海の方へ出たところにありました。
名前は「サンセット十六羅漢」。日本海に沈む夕日がきれいなんでしょうね。



普通の道の駅ですが、ここのメニューは、よく見るとラーメンばっかり。建物内にはラーメン店の匂いが立ちこめています。
この店オリジナルという飛び魚ラーメンにしました。



飛び魚の粉末が入ったスープはとてもおいしかったです。魚介系スープ好きなら、気に入るでしょう。

おなかが満ちてからは、散歩がてらに波打ち際まで行きました。
きれいな海に出ましたが、目的はさらに水際にあります。





○ 手彫りの十六羅漢像

十六羅漢のところへと行ったのです。
近くのお寺の住職が、海難で命を失う漁師を悼んで、彫ったという羅漢像。



これではわからない?もっと近づいてみます。



顔をノミで彫られたような羅漢さんが、岩場のあちこちに見られます。素朴でおだやかな表情に癒されます。

日本海の海を眺めます。夏らしいきれいな水平線。
ちょうど去年のこの時期、新潟の海を眺めたことを思い出しました。

○ なりきり清張の黒い女

次に向かったのは、遊佐町にある丸池様。
名前がおもしろくて、聞くたびにニコニコします。なぜ様つきなのかしらー。人の名前みたい。

箕輪鮭孵化場前に車を停めます。
シーズンオフなのか、そこは無人で水槽には水も張られていませんでした。
少し水路沿いに歩いていきますが、その間は美しい緑の自然が広がっています。



自然に見とれていたら、アコリンが笑いをこらえながら「ちょっとこっち向いて」と言いました。
「?」と振り向くと、パチリ。
「その恰好、松本清張の世界になってるよー」



画像を見て、「ムム、確かに!」と吹きました。
この前の岡山旅行で、油断していたら真っ赤に日焼けしてしまい、しばらく肌がヒリヒリしたので、今回は厳重な日焼け防御スタイルで臨んだのです。
確かにあやしすぎるわ~、この人。

「事件の匂いがするね」「カギを握っている謎の女だ」
それとは対照的に、周りの景色は至って晴れやかで爽やかでした。





○ 木立の中の丸池様

うっそうとした木立の中に入ると、丸池様がありました。
緑色の美しい池です。木々を映して緑色になっているようです。
水の美しさに驚きます。光を受けるとキラキラといろいろな表情を見せ、青森の青池を思い出させます。
まさに神秘の泉。しばしたたずんで見とれました。

丸池様とは池の名前ではなく、この池を司る神様のこと。
池のほとりには丸池神社の社があり、宗像三姉妹が祀られていました。





ああ、飛び込みたい。
水死するのなら、こんなきれいな水の中がいいですねー。
でもそうしたら水が濁って、みんなの迷惑になりますね。
さらに水死体は水でぶよぶよに膨れるから、やっぱりやめておきましょう。



きよらかな水のある場所に惹かれます。
遊佐の町で少女時代を過ごしたという、アコリンのお母さんが羨ましくなりました。

○ 土地の神社巡り

それから、この辺りの神社をいくつか巡りました。
暑い日で、車を降りるとぐったりしがちでしたが、好みの狛犬を見つけると脇目もふらずに一目散に駆け寄る私を見て、アコリンが「ちょっと、反応が違いすぎない?」と笑います。



すてきな狛犬さんでしたー。



マンホールも、すてきー。



○ 髭面のお地蔵さん

道ばたに、お地蔵さんが並んでいました。普通は六地蔵なんですが、なんか多いですね…。
1、2・・・と数えているうちに、一体のお地蔵さんに目が吸い寄せられました。
あれ、お髭を生やしてない…?
近寄ってみましたが、やはり口の周りが黒くなっていました。

気がつけば、頭に巻かれている布はバンダナみたいだし、ちょっといなせなおじさんっぽい感じ。
海辺のバーを一人で切り盛りしている、元サーファーのマスターみたい。

これまで数えきれないほどたくさんのお地蔵さんを見てきましたが、髭面のお地蔵さんにに会うのは初めてでした。新しい!



2-(2)に続きます。


夏休みには庄内の風(鶴岡) 1-(2)

2015-10-12 | 東北
その1からの続きです。

○ 朝の宿坊の隣へ

マリエさんの車で、千葉からの参加者を鶴岡駅まで送ってから、アコリンと私の3人は、再び朝の宿坊前に戻りました。
隣の宿坊、大聖坊では修験道の修行が行われており、偶然にもアコリンとマリエさん、それぞれのお知り合いが参加しているのだそう。
私が早朝に駆け寄っていった、山伏の立っていた宿坊です。
もうすぐその修業が終わるということで、会いに行ったのです。



○ 山伏の方々がずらり

宿坊の庭で待っていると、儀式が終了し、中から手招きしてもらったので、上がりました。
大広間に、お膳がずらりと並べられて、大勢の人々が集っています。
こんなに山伏修行をした人がいたなんて。

その中を緊張しながら歩いていき、山伏の先達、星野文紘さんにご挨拶しました。
「似ているような3人がやってきたなあ」
と言って、迎えてもらいます。
一度拝見したら忘れられない、仙人のような風貌。
修行終了直後ということもあってか、現実離れしたほど野性味と精悍さに満ちていましたが、とてもきさくに歓迎していただきました。

数日に渡る厳しい修行をこなして、晴れて山伏と認められ、白装束から私服に着替えたところなので、誰もが達成感で喜びに満ちた顔をしています。
忍耐を重ね、ひたすら自分を鍛え続けた時を経たところで、全員が放つ強力なエネルギーに圧倒されます。
天井や床が抜けるんじゃないかと思うほどの、炸裂するパワフルネス。
皆さん、晴れて山伏になれたので、操る力が半端ないのかもしれません。

互いの健闘を称え合う彼らは、口々に大変だった修行エピソードを教えてくれます。
修行中は私語は一切禁止だったそうで、解禁となった今、話は怒涛のように続きましたが、そのうちにみんなで外にかき氷を食べに行く話になったので、そのタイミングで私たちはおいとましました。

車に戻っても、3人ともすぐには声が出ません。
「・・・いやー、すごかったねー・・・」「ほんとに・・・」
人が溜め込んでいた力を発散する時のパワーたるや、すごいものです。
それが何十人も一気に放出したわけですから、それはもう圧倒されるばかり。
カメラなど取り出す余裕は、全くありませんでした。
みんな、白装束で集合し、顔だけしか見えないまま、大変な修行を重ねたため、修験者同士気楽に話すのも、すべての行が終わったこの時がほぼ初めてだったそうです。

いろいろなお仕事を持つ人が参加しており、東京ではまずお会いする機会がないようなすごい方もおいででした。

○ 本当に大きな大鳥居

再び鶴岡駅まで向かいます。窓の外には庄内平野が広がります。



駅と宿坊の間を往復したため、この大鳥居の下をくぐるのはこの日4回目。
「何度見ても、つくづく大きいわ~」と言うと「この辺りは、大きな鳥居が多いよ」とマリエさん。
「地方は、大きいことはいいことだっていう考えなんじゃないかしら」
なるほど・・・と、何故か牛久大仏を思い浮かべました。



○ 風光明媚な鶴岡市

鶴岡駅からは、一路西を目指します。
午前中にいた緑深い山の中から、一気に開けた海までやってきました。
鶴岡は、山も海も近い、自然豊かな街ですね。



○ いよいよ水族館

海だわ、うみー。もう山伏の姿はありません。
そういえば山伏はいても、海伏っていませんね。
見晴らしが良すぎて、隠れる場所がないからでしょうね。



じきに、加茂水族館が見えてきました。
ここは、今回の旅でぜひとも訪れたかった場所。
日本どころか世界で唯一の、クラゲ水族館です。

前に行ったという友人に、熱心にお勧めされたし、クラゲを見るのはとても好きなので、楽しみにしてやってきました。
米沢在住のマリエさんは、前にも来たことがあると、ガイドをしてくれます。
「クラゲの水族館にする前は、こっちが建物だったんですって」
とても小さな建物がありました。
もともと、経営不振でつぶれそうになったところをクラゲで建て直したというこの水族館。
かつての建物は、とても集客を望めなさそうなほどの小ささでした。

○ 好みのタイプはそれぞれ

クラゲが売りですが、クラゲ以外の魚たちもたくさんいます。
私は、ひれが青く輝く魚に目を奪われました。
ちょうちん袖の女の子みたいでかわいいわ。



マリエさんは、水槽を覗き込んで「この魚、いいわ~。好みだわ~」と、つぶやいています。
よっぽど気にいったみたい。どれどれ・・・んん?
「えっ、あの赤いコブつきの魚?」「そうそう♪」
うーむ・・・マリエさんの好みが心配です。



○ クラネタリウム

魚たちを見ながら、案内標識にそって進んで行くと、「クラネタリウム」の表示がありました。
クラネタリウム!クラゲのプラネタリウム?
いよいよです。期待に胸がふくらみます。



たくさんの種類のクラゲがいました。





えのすい(新江ノ島水族館)も、クラゲの展示は多いですが、ここは「クラゲ水族館」を名乗るだけあって、50種ほどのクラゲがいるそうです。
クラゲって、そんなに種類があるんですね。





途中で、クラゲ実験室のような部屋があり、生まれたてのクラゲから、1日ごと、一週間後までの小さな小さなクラゲが、水槽別に並べて展示されていました。
kらべてみると、毎日少しずつ大きくなっているのがわかります。
解説員がおり、クラゲに関するいろいろな質問に答えてくれました。



大きさもピンキリ、形もいろいろと異なっています。
生息地域も、南や北と、幅広く分布しているんですね。
室蘭水族館とここにしかいないという珍しいクラゲや、天草地方のクラゲなどもいました。





光を放つクラゲもいます。とてもきれい。
毒の度合いも示されていますが、概して発光クラゲの毒素は弱いようでした。





○ 夢のような大水槽

そして圧巻は、5mの巨大な丸い水槽の中でゆらゆらとうごく無数のクラゲたち。



すぐには声が出ません。遠くから見ると、白い羽毛がゆっくりと風に揺れているようですが、近くに寄ると、まぎれもなくクラゲだとわかります。





3人で見とれていると、「きれいでしょう」とすぐ隣から声がしました。
飼育員のお姉さんでした。
どんどんクラゲは増えて行き、この水槽の中にどれだけの数がいるのか、数えられないのだそうです。
水質や水温管理をしているこの水族館の中では、クラゲは普通の寿命の倍以上長生きするんだとか。

でも、まだ始めたばかりの挑戦のため、水族館側もわからないことが多く、「日々、楽しみながらも、緊張してクラゲの飼育にあたっています」とのことでした。
がんばってください!応援しています。





○ アシカやアザラシ

この水族館では、アシカショーなども行われています。この日のショーはすべて終了し、アシカたちはくつろいで水辺でまどろんでいました。
小ぶりのゴマアザラシは、カメラのそばまで寄ってきて、私たちに愛嬌を振りまいてくれました。



そんなに大規模ではないものの、観どころたくさんの水族館。
とても満足して外に出ます。
ふわふわと気持ちよさそうに浮いているクラゲを見て、自分も混ざりたくなっていたところ、出口にクラゲの顔出しパネルがあったので、なりきりました。(画像掲載は・・・やめときます!)

マリエさんは、先ほど見た小さなナポレオンフィッシュのようなコブの魚が、いたく気に入ったようです。
「あの魚、いいわ~。私好み♥」と何度も幸せそうに言っているので、「男性の趣味はまた別よね?ね?」と、ちょっと不安になりました。
数週間後に、オーストラリアへヨガの修行をしに旅立つ彼女。
向こうでナポレオンフィッシュ顔の彼氏を作ったりしないかしら・・・。

○ 「よ」つきの店名

まち中に入ると、気になるお店がありました。
"ママ・クリーニング小野寺よ"と建物に書いてあります。
クリーニング店なんでしょう。気になるのは「よ。」です。
「よ。」って、なに?女言葉?呼びかけ言葉?



ひそかに写真を撮っていたら、二人も気づきました。
「ネーミング(笑)!」と、やはりアコリンも引っかかりましたが、マリエさんは「この辺にはけっこうあるお店だよ」と、動じませんでした。

○ マリエさんとのお別れ

マリエさんに鶴岡駅まで送ってもらい、そこでお別れしました。
米沢に帰る彼女を見送り、私たちは駅に入ります。
近々、オーストラリアに居を移す彼女。次に会えるのはいつになるのだろうと思いますが、「オーストラリアに会いに行けばいいね!」とアコリンと盛り上がります。

以前エアーズロックに登った時、山頂でゼイゼイと呼吸を整えていたら、一人あやしいポーズを取る欧米人のおじいさんがいました。
目が合ったら「私はカンフーをやってるんだよ。記念にどうだい」と誘われ、二人でカンフーポーズで記念写真を撮ったことがありました。
ぜひ、マリエさんにも、エアーズロックの上でヨガのポーズを取ってもらいたいわ。

○ おしどりミルクケーキ

JR羽越本線で30分の酒田駅まで向かいます。
ホームでアコリンにおしどりミルクケーキをもらいました。
ラ・フランス味!ダブルで山形特産です。
ミルク味しか知りませんでしたが、いろんな味バージョンがあるそうです。
それにしても、なぜミルクケーキっていうんでしょうね。
そしてなぜに、こんなに固いんでしょうね。山形の人はみんな歯が強いんでしょうか。



○ 2両の羽越本線

立派な名前の割に2両編成の羽越本線に揺られて行きます。
乗客は学生がほとんど。しかもなぜか女子ばかり。
隣の車両には男子が乗っているようです。分かれている訳ではなさそうですが、友達同士で乗っていたら偏るのかしら。
窓の外には、ずーっと水田が続いていました。
途中、余目駅を通ります。「よめ」だと思ったら「あまるめ」と読むんだそう。
鉄橋のある余部駅を思い出しました。あれは鳥取ですけれど。

○ 酒田駅

酒田に到着しました。酒田といえば、おしん!(ふるー)
さすがに古すぎるのか、駅前におしんゆかりのものは見当たらず、大きな獅子頭がふたつ、デンデンと置かれていました。

巨大で、怖いくらいの迫力。よく見ると、耳はかわいいですね。
これは「銀山獅子」と呼ばれる酒田の魔除けの獅子頭で、市のシンボルだそうです。



○ 最上川そばのホテル

駅からはタクシーでホテルに向かいました。
宿泊先のリッチ&ガーデンホテル酒田は、駅から離れた場所ながら、シャトルバスは出ていません。
この辺りの宿泊客はみんな、車で行くのかもしれません。

今回は、お盆休みということで、ホテルは満室。
部屋からは最上川が見えます。天気が良かったので、美しい夕景が望めました。





チェックインして部屋に入り、お風呂に入って、リラックスしました。
前日は夜行バスで、日中は羽黒山登山をした、体力を使った一日だったので、コテンと寝につきました。

2日目に続きます。

夏休みには庄内の風(羽黒山) 1-(1)

2015-10-09 | 東北
○ prologue

夏休みに、山形に出かけました。
友人のアコリンとマリエさんが、ヨガと瞑想のワークショップを開催したのです。
予定が合わずに参加できなかったものの、その翌日からジョインしました。

場所は鶴岡。羽黒山の近くです。
数年前に、アコリンと出羽三山めぐりをした時以来の山形。
その時は山の中にばかりいたので、山形の町と位置が全く頭に入っていませんでした。
「山形・ミステリアス出羽三山」(2012.7)

○ 土地勘全くなし

朝一番に着くために、深夜バスに乗っていきます。
何も考えずに酒田行きのバスの終点までチケット購入したところ、
「鶴岡はもっと山の方。酒田まで行っちゃうともう日本海だから、途中で降りてね」とアコリンに言われました。

地図を見ると、確かに位置が違います。
山形市はもっとずっと南の方なんですね。ふむふむ、へえー。地理のお勉強。

思えば、山形市街に降りたこともないような気がします。
蔵王には登山やスキーでよく訪れたし、山寺にも行ったことがあります。
天童の町の巨大な将棋の駒も、車窓から見た覚えがありますが、町よりも山ばっかり。

酒田に親戚がいるというアコリンに、いろいろと教えてもらいます。
今回の私のリクエストは、大物忌神社とクラネタリウム。
そのほかに訪れる場所は、彼女にお任せしています。

○ 早朝の鶴岡

バスではちゃんと起きて途中の停車場で降りられるか不安でしたが、眠りが浅かったのか、しっかり目覚めて鶴岡駅で降りることができました。
続けて6時発の羽黒山行きバスに乗ろうとしましたが、バスターミナルを探すのにてまどってしまい、ちょうど走り出した姿を見送ります。
次のバスが来る1時間後まで、駅で待つことにしました。



バスターミナルから駅に移動する間には、車一台通らず、人っ子一人いません。
およそ生きて動いているものがないようです。
町で一番賑わっていそうな駅前の通りもシーンとして、まだ眠りの中といった感じ。
駅員さんも奥に引っ込んでいるのか、姿は見えません。

6時になったばかりでも日差しはかなりきつく、暑い日中になりそうだなと思います。
見知らぬ場所、人のいないところ。音もなく、静かに照り返す日光。SFの世界にいるみたい。

○ 真夏も芋煮



収穫した稲穂を担ぐ農民の像が、駅前ロータリーの中央上部に立っていました。
お米どころですねー。

駅に併設されたレストランも、まだ開いていません。
ショウウィンドウの中には、大鍋の食品サンプルがありました。



わあ~、これ芋煮だわー。山形に来たんだなあと実感します。
しかしひまわりとコラボするなんて、どこかシュール。
夏と冬で、かなり季節感が飛んでいますね。
というよりも、真夏の8月にして、芋煮がメニューにあるということが信じられません!
つまり、注文して食べる人がいるわけですよね。びっくり。

○ 白いハチ公像

駅構内に、なんだか見慣れた銅像が。
ハチ公じゃないですか~。
でも、渋谷の銅像よりも小ぶりで、真っ白です。



いったいなぜ、東京から離れた鶴岡駅にいるんでしょう?
これは、渋谷のハチ公像の作者の安藤士さんが試作品として1947年に制作した石こう像だそう。
所有者が何度も変わり、素性がわからぬまま保管されていたものが、近年になって試作品と判明し、公開保存されるようになったとのこと。
作者ゆかりの土地ではないながらも、不思議な縁でハチ公像のプロトタイプがここにあり、それをきちんと人々が保存してくれているなんて、嬉しいことです。

○ 北の言葉

早朝ですが、今は夏休み期間。
そのうちに駅の待合室に、家族連れがちらほらとやってきました。
音響がいいので、地元の会話が聞こえてきます。
青森の親戚の話し方に似ているなあと思い、東北に来たんだなあと、改めて感じます。

○ 羽黒山行きバス

待合室で1時間ほど待ち、7時発の羽黒山行きバスに乗り込みました。
早朝なので誰も乗っていないかな、と思いましたが、すでに数人の乗客がおり、さらに途中のバス停からも人が乗ってきて、乗客は10名ほどになりました。



チェック柄の座席のレトロなバス。
田園の向こうには山が見えます。なに山だろう?
よく見ると、周りは山だらけ。
名前を探すのは無理だろうと、あっさりあきらめました。



バスの行く先に、大きな鳥居が見えてきました。
ここからいよいよ、羽黒山の神域に入っていきます。



30分ほどいったところで降りました。

○ 友ではなく山伏

100mほど先の宿坊の前に、白い服の人影が見えました。
バスの中からそろそろ着くとメールをしておいたアコリンが待ってくれているのかと思い、下り坂だったので、スキップ混じりで駆け寄って行きました。
でも、近づいていくと、その人は白装束姿の山伏だとわかったのです。
(えっ、山伏?はー?)と驚きますが、このままだと下り坂加速で、山伏の胸に飛び込んでしまいそう。
(なんとか止めなきゃ)とムリヤリ急ブレーキをかけ、ドタバタしながら走るのをやめます。
それからは、何事もなかったかのように、すまし顔で歩いていきました。(かなり無理がありましたが・・・)
山伏の立っていた手前の建物が、目指す宿坊、大進坊でした。



中にいるアコリンに電話しようと、ケータイをごそごそ探していたら、「リカさん!」と澄んだ声がします。
それは、宿坊の中にいるマリエさんでした。
マリエさんとは久しぶりの再会。
さらに、日差しが強いため、サングラスをかけていた私。
顔が隠れているのに、遠くからわかるなんて、すごいなあと驚きます。
私なんて、よく会っているアコリンを山伏と見間違えたくらいなのにー。(それもどうかと思うが)

マリエさんには、真実を見極める、なにか特別な力があるのかもしれません。
非日常的な山伏を見たばかりなので、そんなことを考えます。

○ 古めかしい五重塔

通してもらった宿坊の部屋で、アコリンに会いました。
ちょうど朝食が終わったところで、前日のワークショップの参加者10数名と一緒に、荷物を持って出発ー。
アコリンと私は、マリエさんの車に乗せてもらいました。

少し走って、五重塔への入り口に着きます。
ここ、覚えています。数年前にツアーで来た場所です。

石段をどんどん下りて、樹齢千年の爺杉にご挨拶。
その近くに五重塔があります。



暑い日ですが、それを忘れさせてくれるほど、森の木立の中にいつも涼やかにたたずんでいる木製の塔。
古めかしさが素敵で、五重塔好きの私にとって、一番好きな塔です。



○ キュートな石灯籠

五重塔の前には、石灯籠。
前に訪れた時にも、この灯篭がすごく気に入りました。
「エヘッ」と笑っているようで、かわいいんですもの。



前回も(目を書き加えたら、もっとラブリーになるだろうな~)と思いながらも、そこはぐっと我慢してこらえましたが、それから数年、まだ誰も目を書きこんではいませんでした。
きっと同じようにグッと我慢した人は多いでしょう。

○ 重力との戦い

お地蔵さんの上には、祈りを込めた石が乗っています。
・・・いえ、これは乗りすぎです!
なんというアクロバティックなバランス!
毛虫が乗ってもくずれてしまいそうです。



○ ここから石段行脚

前回来たときには、五重塔を見て、Uターンして駐車場に戻りましたが、今回はここからがメイン。
ずっと先に続く長い石段を上って、一番上まで行くのです。
先が見えない段々を見上げただけで、フラフラと気が遠くなりそう。
でも歩き始めなくては。



夜行バスで来たので、眠りが浅く寝不足の私。
そのままみんなと合流してすぐに山登りとなったため、体力が持つか心配です。

「一の坂から三の坂まであるんだって」
「ギャー、まだ一じゃないー」

あまりにたくさん石段があるため、前を向いて、終わりの見えない先を知るのが嫌になってしまいます。
でも、足腰の強い人たちはさくさくと先に行ってしまったので、私たちも遅れながら後に続きます。

○ 二ノ坂茶屋

ようやく一ノ坂が終わると、次には二ノ坂。その途中に、茶屋がありました。
ここで少し休憩します。



ここからの庄内平野の見晴らしが、すばらしく美しかったです。
とても天気がよく、遠く海の方まで見渡せました。



山伏修行の人たちが、時々上から降りてきて、すれ違います。
この時間に戻ってくるなんて、みんなよっぽど朝早くから山に入っていたんでしょうね。

さらに上り続けます。辺りはミシュラン・グリーン・ガイドジャポンで三つ星に選ばれた、立派な杉並木ですが、もはや周りを見まわす余裕はなくなっています。



暑くて全身汗だくだく。朦朧としながら、一段一段、黙々と足を運びます。
体力のない人はすでに音をあげはじめましたが、励まし合って上りました。

アブがよくよくやってきて、身体に止まるので、そのたびに悲鳴を上げて追い払いました。
でも、森のなかの虫はタフで、払っても払ってもなかなか飛んで行きません。
手の甲に止まったのを見て強く払ったら、強く止まっていたのか、怒ったのか、飛んで行くときに皮膚にチリッと痛みが走りました。
そこから血が出たので(アブの呪い?)と慌てましたが、幸いなことに腫れ上がらずにすみました。
ただ、それで安心していたら、翌日になって少し腫れたので、再びあせりました。
でも、かゆみも痛みもありません。単に血を出したので、腫れたのかもしれませんが、アブにここまで追いつめられたのは初めてでした。
自然は好きですが、アブはごめんだわ~。

○ とうとう登り切る

みんなで励まし合い、自分をなだめたりすかしたりしながら、なんとかようやく上り終えたところには、出羽三山合社が見えました。
ああ、ここに着くんですねー。
前にツアーで来たときには、五重塔と出羽三山合社の間をバスでさーっと移動しましたが、歩くとこんなに大変だったなんて。
その分、達成感も全然違いますが。お祈りも効きそう。

○ 蜂子神社の神事



この日は開祖の蜂子皇子を祀っている蜂子神社が開いており、小さなお社の中には人々がぎっしりと座っていました。
神主さんが出て行きましたが、中から聴こえてきたのは、般若心経。
もともとは開山堂だった蜂子神社。
神仏集合なんですね。



立派な装飾に見とれます。
田楽のような装束の人も登場し、読経が終わるのを外で静かに待ち構えます。



ほどなくして、お社の中から、参拝者たちが外に出てきました。
田楽風の人の舞が行われた後に、山伏たちが法螺貝を吹きならします。

     


山伏が歩き出すと、みんなが後に続き、一団が列になってぞろぞろと石段を下りて行きました。
それはまるで、日本版「ハーメルンの笛吹き」のようでした。
「羽黒山の法螺貝吹き」。

不思議な光景に見とれていたら、これはこの日に行われた、大震災の復興を願う平和のイベントだったそうです。

○ 出羽三山合社

鏡池越しに見る合社。隠しきれない存在感。
月山・羽黒山・湯殿山の三神が合祀されています。



社殿は国の重要文化財に指定されています。
萱葺きの屋根は7尺(2.1m)の厚さ。私がすっぽり中に隠れてしまうほどの分厚さなんですねー。



こちらの装飾も、見れば見るほどすごいものです。
屋根を支えている黒い人がいました。まさに黒子。がんばって~。
メンバーの一人が、背中のリュックから分厚い納経の束を取り出して、一枚奉納していました。



境内の東照社では、徳川家康公没後400年記念のご開帳をしていました。
中では徳川公の像やゆかりの物があり、宮司の解説も聞くことができました。



○ 昇り龍と下り龍

先ほどの蜂子神社の隣にある厳島神社。
かつては弁天堂と呼ばれていました。
御祭神は市杵島姫命(弁財天)。
今にも動き出しそうな、昇り龍と下り龍のダイナミックな彫刻に目を奪われました。



○ 下りもハラハラ

参拝を終えたのちに、先ほど上ってきた石段を再び下っていきます。
幟よりもはるかに楽~!というわけにはいきません。
これはこれで大変な道。一段一段が低く、段差が見えづらい石段を、気を付けながら進みます。
自分がボールだったら、ポンポンと弾んで降りていくんですけどね。



修行中の山伏たちが、一列になって後ろから降りてきました。
絵になりますね~。
サッサッとスピーディに降りてくる彼らの速度に合わせて、私たちも少し急ぎめに歩くことにします。



ようやく五重塔のところまで降りました。
ほっとしながら、今度は急な上り階段を上って、出口の門へ。



ここで、メンバーが全員集合。脱落者も出ず、みんな頑張りました~。
夜行バス直後の私は、みんなに「疲れてるでしょう。体力大丈夫?」と心配してもらいながら、なんとか行って帰ってこれました。
山登りをして、おなかが空いたわ。さあ、次は楽しいランチの時間です。

○ 漬け物天国

車に乗って、昼食のそば屋、福湊庵に移動します。
行列のできるとても人気のお店で、山田洋次監督初め有名人のサインがずらりと並んでいました。
映画のロケに来た時のようです。

ここは漬け物屋が経営する蕎麦屋さん。
工場直営のいろいろな漬け物が乗った大皿がずらりと並び、どれでも好きなだけとれます。
まさに漬け物バイキング。
ポリポリとかじりながら、お蕎麦が出来上がるのを待ちます。
やっぱり山形の漬物といったら、長小茄子ですよね。きゅうりもいいわ~。
どれも素材の色がきれいに出ていて、見るからにおいしそう。もちろん、とてもおいしい味でした。



みて、こーんなに取っちゃった!
さすがに一人分には多すぎですね。アコリンと一緒に頂きました。
オレンジ色のは柿です。山菜漬けもよかったし、どれもベリグー!
体力を消耗して失った塩分を補給できたので、力がみなぎってきました。



○ おろし麦そば

めいめいが注文をした板蕎麦や冷麦などが、ほどなくしてテーブルに運ばれてきます。
私はおろし麦そばにしました。
月山の状流水で作られた、風味豊かな蕎麦。
サクラエビなどが乗っていて、カラフル。
おいしーいです!



みんなでわきあいあいと食事を済ませて、お店の前で記念写真。
ここで解散となりました。元気でね~。



県内の人はみんなマイカーに乗り込み、運転席から手を降って、次々に去って行きました。
関東とは違う、新鮮なさよならでした。

その2に続きます。