風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

今年の花火は浦安で

2017-09-07 | 千葉
● prologue ● 初めての新浦安 ● だんらんスペース
● 海の向こうは幕張 ● 雨が気がかり ● ディナータイム 
● 万願寺唐辛子 ● マーブルド・ビーフ ● ルームシャンパン
● 花火のじかん ● トークは続く ● epilogue
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● prologue

ふだん旅に出ると、うろうろと辺りを動き回るタイプですが、たまには一カ所に滞在した時の話を。

毎年8月1日に花火が上がっていた横浜。
仲良しのルナちゃんが、海沿いのホテルの花火の見える部屋に、誕生日祝いとしてご招待してくれていました。
年に1度の贅沢なひと時でしたが、観客が増えすぎて交通面の問題が大きくなったとの理由で、とうとう今年から花火大会は中止となってしまいました。

横浜の花火がなくなってしまい、かなりしょげていたところに、ルナちゃんがお誘いをかけてくれました。
「今年は新浦安になってもいーい?」

新浦安の花火!見たことありません。ディズニーランドで毎晩上がっているものとは別なんですよね。
ぜひに!と、お願いしました。

● 初めての新浦安

7月29日当日、ホテルのロビーで落ち合います。
新浦安って、東京からだとそんなに遠くありませんが、横浜からだと近いようで遠い場所。
私鉄→メトロ→JRと乗り継いで、1時間半ほどかけて向かいました。
この日は隅田川花火大会も行われるため、町は浴衣姿の人でいっぱい。
混雑を避けようと早目に出たつもりが、昼過ぎにしてすでに電車の中は花火客で混んでいます。
荒川を超え、葛西の観覧車を眺めて江戸川を越え、ディズニーリゾートとイクスピアリが見えてくると、もう新浦安。
初めて降りる駅です。


浦安ブライトンホテル東京ベイ


ホテルは駅の向かいにありました。
なんとなく雲が厚い曇りの日ですが、ロビーは南欧風のリゾートテラスになっており、天井の大きな丸ドームから明るい光が入ってきます。



● だんらんスペース

ルナちゃんと会い、ホテルマンに部屋に案内してもらいました。
「こちらになります、どうぞお入りください」
「わあ、すてき・・・!」
思わず声が上がりました。
大きな窓で広さのあるルーム・だんらん。部屋半分は、上がりかまちのあるフローリングスペースになっています。



スリッパを脱いで床に座ると、くつろげるわ~。

● 海の向こうは幕張

窓の下には新浦安駅が見え、長い車両の電車がゆっくり通っていきます。
ちょっと窓に水滴がついています。



海はすぐそば。海上から花火が上がるのでしょうけれど、土地勘がないため、窓の外に見えている光景がどこなのか、よくわかりません。
「海の向こうに見えるビル群って、どの辺りなんだろう?」
「東京かな?千葉かな?」
地図で調べてみると、どうやら幕張のようでした。



● 雨が気がかり

フットマッサージャーもあり、とってもくつろげる部屋。
ただ、時々ぽつぽつと点滴が窓につきます。
「雨が降ってきたのかな・・・」
「でもきっと晴れるよ」

水滴はほどなくして消えますが、気が付くとまたついています。
外は、雨が降ったり止んだりしている様子。
でも小雨のようなので、お茶をして部屋でくつろぎます。

ルナちゃんと会うのは、そんなに久しぶりではありませんが、とにかく仕事で忙しい彼女と会っても、最近では思いのたけを喋りきれないことが多いです。
私もバタバタが続いている時だったので、今回はずいぶん久しぶりに、ゆっくりと会えることとなりました。

● ディナータイム



お喋りをしているうちに、夕食の時間になり、最上階のレストラン「燔(ひもろぎ)」へと向かいました。
ベイベリアが見渡せる席に通され、目の前でシェフに鉄板焼を調理してもらいます。



ルナちゃんは「ベルサイユの薔薇」のようなオリジナルカクテルをオーダー。



私はレモネードカクテルで、乾杯!



まずは、プチフルールのようにきれいなお皿が登場します。



スイーツデザートかと思いましたが、前菜でした。



● 万願寺唐辛子

大きなお肉の塊やプリプリのホタテが目の前に置かれました。
中でも気になったのが、巨大なししとう。

「あれはいったい・・・」とじーっと見ていると、視線に気づいたシェフが
「万願寺唐辛子です」といい声で教えてくれました。
「ああ、これが。」
京都でよく粉末が売られていますが、実際はこんなに大きなものなんですね。



大きさに圧倒されて、及び腰の私。
「なんだかとってもパンチが効いていそうですね」と言うと、
「これ、甘いんですよ。でもごくたまに、1%くらいの確率で、激辛のものがあります」とにこやかに教えてくれるシェフ。
「見て分かりますか?」
「いいえ、食べてみないとわかりません」
ますます笑みを深めるシェフと逆に、青ざめる私。
それってロシアンルーレットじゃない・・・。



火を通して切り分けてもらった万願寺唐辛子を、ドキドキしながら口に運びました。
わあ、ほんのり甘~い。
手を止めて、反応を見ているシェフに「甘いです」と報告しました。



次に、大きな真っ白な青森産のにんにくを刻んで丁寧に火を通します。
カリカリの食感で味わい深く、これまで食べたガーリックのうちで一番おいしく感じました。



● マーブルド・ビーフ

メインは、霜降り牛のお肉。
ミディアムレアでお願いしました。



もうこの段階でおなかがいっぱいですが、さらにお魚も登場します。
お椀物も出ました。



調理をしているシェフの背後の窓に、時折水滴がびっしりとつきます。
「わあ、また雨が」
浦安の花火は、前々回は雨で見られなかったそうですが、「今年は大丈夫ですよ」とホテルの人たちは口々に言います。
まるでおまじないのように。



食事を済ませ、おなかがいっぱいになり、シェフとサーブしてくれた人にお礼を言ってレストランを出ました。
出口で待っていた黒服さんが、エレベーターまでリードしてくれました。
「お食事はいかがでしたか?花火鑑賞プランの方特別のメニューをご用意しました」
ぜいたくな花火鑑賞プランなので、特別扱いしてもらっています。

● ルームシャンパン

部屋に着くと、今度はホテルの女性がやってきて、シャンパンとデザートを準備してくれました。
もう至れり尽くせり~!
ロマンチックな夜に、ドキドキしながらグラスを合わせます。



デザートを終えた頃が、花火の上がる時間。
シャンパングラス片手に、素足で一段上のフローリングスペースに上がり、大きな窓の前に座ります。
雨粒は窓についたままですが、中止とは聞いていないので、きっと催行されるのでしょう。

● 花火のじかん

「あ、上がった!」
真ん丸の花火が、目の前に上がります。
あわてて部屋の電気を消して、暗がりの中、二人でうずくまりました。
防音が効いている部屋なので、打ち上げの音はかすかに聞こえてくる程度。
これはすごいわ。





最近見られていなかったホテル花火。やっぱりいいなあと思いながら、しばし見とれます。
ルナちゃんとのお喋りを続けながら。

花火って真ん丸ですよね。
打ち上げられてた火薬が、それぞれ計算されたようにはじけるのって、すごいことですよね。





大勢で花火を見る時には、静かに打ち上げに見いっていました。
時折尺玉が上がると、みんなで「たまや~」と声を上げました。
でも、今回は花火の間もずーっとお喋りを続けています。
いつも友だちを誘ってワイワイと見ているので、2人で花火を見るのって、もしかすると初めてかもしれません。
二人占めなのでのびのびと見られます。ますます贅沢感も感じます。





花火撮影は難しいです。画質が荒くて済みません。
それでも定点撮影ができて、ブレないだけでもよかったです。
動画も撮れそうでしたが、オープンできないプライベート話に花を咲かせていたので、記録するのはやめておきました(笑)!





横浜の花火は、最後にドーンと一尺玉が打ちあがってファイナルとなりますが、浦安の花火はふっと静かに終了したようなので、終わったのかどうかわからずにキョロキョロします。
でも、下をのぞいても、駅周辺で見ている人はいなさそう。
花火大会だからと新浦安で降りた人は結構いましたが、みんな、どこで見ているんでしょうね。
バスで海の方まで行ったのかな。

● トークは続く

きれいな花火を快適な場所から見られて、すっかり満ち足りた私たち。
部屋の電気をつけて、コーヒーのルームサービスをお願いしました。
持ってきてくれたホテルの男性は「この部屋からは良く見えたでしょうね。
去年は花火は上がったものの、煙がこちら側に来ちゃって、あまりきれいに見えなくて」と教えてくれました。
今年は3年ぶりにラッキーだったようです。

のんびりしながらもおしゃべりは途切れることなく続き、夜も深くなってから、フカフカのベッドに寝につきました。



ちなみにこの日、屋内にいた私たちは「また窓に雨粒がつき始めてきたね」なんて言っていましたが、実際の外はかなりの大雨だったそう。
隅田川も浦安も、なんとか花火大会は催行されたものの、強い雨に耐え切れず、場所取りをあきらめて帰った友人も何人もいたと、後で知りました。
そんなに悪天候の時に外にいたら、ずぶぬれになって、私もあきらめてしまったことでしょう。
最後まできれいな花火を見られてよかったです。



翌朝はのんびり起きて、ビュッフェを食べてお昼にチェックアウト。
心地よい時間を過ごし、心身ともにスッキリしました。

● epilogue

お互い、仕事帰りに会って話をするには時間が足りな過ぎましたが、その不足分をこの1日で解消できた感じ。
暑い夏の期間で夏バテになりかけていましたが、リフレッシュして元気を取り戻すことができました。



ホテル泊は贅沢ですが、たまになら自分に必要な時間だなあと思います。
メリハリがついて、やる気が出るのです。
「よし、これからもお仕事がんばろう」とルナちゃん。

夏らしい、すてきな時間をプレゼントしてくれる彼女には、いつもとても感謝しています。
私も、なにかいいプランを考えようっと。



茨城4市のお寺巡り index

2017-09-06 | 北関東(茨城・栃木・群馬)
[2017.7.23]
◆ つくば 1 ←旅行記へ
 茨城にある4つのお寺を巡りに行きました。
 快適なドライブでしたが、目的地に近づくにつれて不穏な空模様に。
 お寺が忽然と消えていたり、雨の中を雨乞いのお寺に行ったりしました。
  ● prologue ● 無理せぬ出発 ● 東京を抜けて
  ● 筑波の大御堂 ● ランチタイムあり ● 消えた本堂
  ● 驚きの現状 ● 雨の雨引観音 ● 山門のゾウかバク
  ● もぐら叩き・キングキドラ ● そうだ 茨城、行こう



◆ 笠間 2
 訪れたお寺には、動物がいっぱいいてにぎやかでした。
 笠間の名物ってなんでしょうね?わからないままランチにします。
 雨は降ったりやんだり。帰りには雲間からちらっと虹が見えました。
  ● バッタ、ニワトリ、クジャクにコイ ● 小さな力持ち ● 謎の観音様
  ● 笠間の名物は ● ランチタイム ● 笠間の正福寺 ● 巡礼者トーク
  ● 土浦の清瀧寺 ● のぶ代さん千社札 ● 車と電車バス
  ● 雲からちょっと虹 ● 普通車のホンダビート ● epilogue





茨城4市のお寺巡り 2

2017-09-06 | 北関東(茨城・栃木・群馬)
その1からの続きです。 

お寺や神社といったら、日常の喧騒から離れて静かな時が流れている、落ち着いた場所。
でも雨引観音にはたくさんの動物がいて、なかなかにぎやかでした。

● バッタ、ニワトリ、クジャクにコイ

まず見つけたのは、本殿の金の宝珠に停まっていた大きなバッタ。
そばにいた赤ちゃんが、ママの腕の中から身を乗り出して、興味津々でのぞきこんでいました。
将来は虫好きになるんでしょう。



突然、多宝塔の方から「コケーコッコー!」と高らかな鳴き声が響き渡りました。
きょろきょろすると、ニワトリがテントの上に飛び乗って、時を告げていました。
お寺にニワトリがいるの?しかも、放し飼いになっているの?



気が付くと、境内にはその一羽だけでなく、何羽もニワトリがいました。
山の斜面のところにたむろしています。ニワトリって傾斜が好きなんでしょうか。
トサカ持ちばかりで、みんなオスでした。
男子会をしているみたい!



ニワトリのグループに驚きながら歩いていると、今度はクジャクに出会いました。
放し飼いされていたので、びっくり。
お寺にクジャクって、あまりイメージが湧きませんが、これはインドクジャクで、仏教はインドから来たから、ルーツが同じでイイということかしら。
それにしても賑やかで華やかなお寺です。



こちらもオス。まさかとは思うけれど、かつてお寺が女人禁制だったから?



クジャクは、私たちに目もくれずに一心に羽づくろいをしていましたが、私たちが「きれい~」とため息交じりに言うと、そのたびに顔をあげてこちらを見ました。



2人で思わず吹きます。
「絶対自分のことだってわかってるね!」「言われ慣れてる!」



人にも慣れていて、近寄っても逃げませんでした。



池には金色の鯉がたくさん。カモよりも大きいサイズに育っています。
カモが小さいのではありません。



● 小さな力持ち

本堂前で「あっ!」と香炉に駆け寄って、しゃがみこみました。



突然の行動にミライさんは驚いたかもしれませんが、私が見つけたのは、香炉を支えるこの人たちです。
邪鬼でしょうか、力士でしょうか?



一人は、つま先立ちして支えていますね。芸が細かいわー。

● 謎の観音様

境内にある格納庫のような建物の軒下に、観音様の胴像が立っているのが気になりました。



なぜ外に置いてあるんでしょう。
中に入れ忘れたわけじゃないでしょうし…。
なにも説明がありませんが、よく見ると、観音像の足元に「延命観世音前立為」と書かれていました。
なるほど、この建物の中には、延命観世音さまの像があり、これはそのお前立なんですね。



本堂の横にある建物なので、本堂にあがった時に、横から見られました。
なんと、観音像はレールの上に立っていました。



なるほど、いつも真正面にあったら、扉を開ける時に邪魔なので、可動式にしてずらせるようになっているんですね。
便利なカラクリがわかりました。

見どころがいろいろある楽しいお寺でした。坂東観音巡りの巡礼者だけでなく、観光気分で家族でやってくるのもわかります。
女性の方にとても流麗な字で御朱印を書いていただき、見てうっとりしました。


境内からの眺望


お寺は結構な山の上にあり、緑が続くいい見晴らしが望めました。

● 笠間の名物は

お寺を出て、次は笠間に向かいました。
JRでは、2駅分隣になります。



途中で、何かの行列を見かけました。
提灯を持った大人が交通整理をしています。
おそろいの青いはっぴを着た、子供みこしでした。



時間は2時近く。そろそろお昼にしないと、タイミングを逃してしまいそうです。
事前に、母に「笠間で有名なものと言ったら、なに?」と聞いたら「笠間稲荷」と言われました。
「じゃなくって、食べ物とかで」
「うーん、特にわからないわ。笠間稲荷しか」
「ほかにはないの?」
「秋には菊祭りが有名よ」
「・・・」

きっと母が知らないだけだろうと思って、笠間の特産を調べてみたら「笠間焼」と出ました。
・・・じゃなくて、食べ物~!
結局、見つけられませんでした。

● ランチタイム

その話をミライさんにしたら「うーん、じゃあ蕎麦かなあ」
そこで手打ちそば屋の「そば処のざわ」に入りました。



ミライさんは、お店お勧めの美明豚の肉汁つけ、私は鴨南蛮盛り。
美明豚(びめいとん)とは行方産の良質のSPF豚肉です。



鴨南蛮は好きですが、盛りそばと一緒に食べたことがなかったので、新鮮でした。
ふぞろいの手打ちそばは、やっぱりおいしいです。
お互い、手打ちそば体験をしたことがあると判明。
「力がいって大変だった~」「腕がつった~」と言い合いました。

● 笠間の正福寺

さて、ランチを済ませて、お次は笠間のお寺へ向かいます。



道路にかかる大きな鳥居をくぐって、笠間稲荷の神域に入りました。
ここは日本三大稲荷の一つで、大きな門前町ができています。
でも今回の目的は、お稲荷さんではなく、その傍にあるお寺。車中からの参拝となりました。



鳥居の横には、ワイヤーで作られた大きなお狐さんがいました。
なんだかアートだわ。トリエンナーレの作品にありそう。



次に向かう坂東23番目の正福寺は、笠間稲荷の陰にひっそりとたたずんでいるお寺。
車を停めて、またもや石段を上っていきました。



小さめのお堂で、辺りはとても静か。
数名の参拝者は、みんな坂東の巡礼者で、御朱印を待つ列ができました。



● 巡礼者トーク

ご年配夫婦の番になり、旦那さんが住職に「坂東を周ってるんだけど、周り終えたらなにか証明してもらえるのかな」と聞きました。
ただ、うまく伝わらなかったようで、おじさんはいろいろ説明してみます。
すると、私たちの前にいた別のおじさんが「御礼参りもあるからね」と言いました。
「善光寺と北向観音にも行かないと」

「この前善光寺には行ったけど、北向観音には行かなかったわ」とおじさんの奥さん。
話がそれかけたので、私が「坂東33所を巡った証明は、最後の那古寺でいただけますよ。ちょっとお金がかかりますが」と言いました。
すると、住職が席を立って奥に行き、戻ってきて「うちでもこういうのを出していますよ」とサンプルを見せてくれました。
質問したおじさんは、「おお~」と見入ります。

「いやね、この前善光寺でその証明をもらおうとしたんだけど、そばにいた人が百観音を巡ったと聞いたら、頼む気無くしちゃって…」
黙り込んだ私の横で、ミライさんが「この人、百観音巡ってるんですよ」と言いました。
キャー、流れ的に黙っておこうと思ったら~。
時すでに遅し、そばにいたみんなが一斉に私を見ます。
おじさんが(この小娘が?)という当惑の表情で「百・・・?」とつぶやいたので、慌てて「まだ途中なんですよ。もう大変で」と言いました。

まあそれで逆に会話は進み、「私らは十数年かけて周ったんですよ」「この前やっと、一番遠い小田原の方まで行ってきた」という話を聞きました。
そうか、ここは茨城。この辺りの人たちからすると、小田原はとっても遠い場所なんですね。
神奈川県民の私にしてみれば、こちらに来る方がずっと遠いんですが。

おじさんが今回聞いたのは「坂東のお寺もいろいろあることだし、せっかくなので自分が好きなお寺から証明書をもらいたい。このお寺で出してもらえるのなら、それがほしい」という気持ちからのようでした。

このお寺でも発行してもらえるとわかった二人は、「ありがとう!」とスッキリした表情。
「これからもお互いがんばりましょう」と言い合って、お別れしました。

順番の最後になった私たちが御朱印をいただき、石段を下りて車道に着いたところで、プップーとクラクションが鳴りました。
そちらを見ると、先程のご夫婦が車の中から手を振ってくれていました。
2人とも振りかえします。「お元気で~!」

● 土浦の清瀧寺

さて、このエリアには、もう一つお寺があります。
土浦市の26番、清瀧寺です。
「ここも行けそうなら行っていい?」とミライさん。
「もちろん!」と言いながら、私は以前このお寺を訪れた時のことを、思い出していました。

その時は、この日最初に訪れたつくばの大御堂からバスで土浦の方まで来て、そこからコミュニティバスに乗り換える予定でした。
ただ、その年からコミュニティバスが無くなっており、タクシーも通らないため、お寺まで1時間の距離を歩くことになったのでした。
初めからわかっていたら、まだ覚悟もしていましたが、その場で知ったため、落胆で足取りが重く、郊外すぎて、ほかに歩いている人もいません。
工場やお店もぽつぽつとしかないため、コンビニを見かけるたびに、お寺の場所を聞いてみました。

ただ、地元の人にもほとんど知られていないお寺で、かなり不安な思いをしながら、なんとかたどり着いたお寺。
お寺の人に帰り方を聞いても、やっぱり歩くしかないとのことで、結局同じ道をまた1時間かけて戻ったのでした。
あれは心身きつかったわ~。
思い出して、ちょっとしびれます。

「そんなハードな思い出のところにまた連れて行くなんて、申し訳ない」
「いいえ、こっちも記憶の塗り替えをしたいところだから」

ただ、なんということでしょう。車だとスーッと、あっさり着いちゃいました。
ええ、もう、サーッと。
遠くから「あの山のふもと辺り」と言いましたが、気がつけばもうお寺の駐車場に到着していました。


仁王門・表


車って、なんて楽なのかしら~!
前回の西国巡礼の観音立寺でも思いましたが、車と公共機関で巡る人とでは、体感するハードさがかなり違います。


仁王門・裏


まあ、そんなわけで、今回は大変な思いもせずに到着できました。
ほかに境内に参拝者はおらず、私たちだけ。



山の中の静かな場所なので、鐘を鳴らします。
重々しい音が朗々と響き渡りました。



ここはかなり渋い場所で、巡礼以外の目的で来る人はあまりいなさそう。
それでも、坂東の札所になっているので、参拝者が切れることはないでしょう。



境内には、前に見た時と同様に、古い狛犬さんたちがいました。
引退狛犬ホームみたい。



● のぶ代さん千社札

先日、鎌倉にある2番札所の岩殿寺まで自転車で出かけたというミライさんに「大山のぶ代の千社札、見つけた?」と聞きましたが、「NO」とのことでした。
たしかこのお寺にもあったはず…。
探し出して、ミライさんに教えてあげます。



「坂東のお寺では、時々見つけるのよ」
彼女も巡礼していたのかもしれません。
長い間、ドラえもんの声で子供たちを幸せにしてきたのぶ代さん。彼女も幸せになりますように。

● 車と電車バス

参拝を終えると、時間は16:45。
通常、お寺は17時に閉まるので、頃合いもピッタリです。

この日は4つのお寺を参拝しました。
なんて効率がよかったんでしょう。
やはり車は違うわ・・・ (´;ω;`)ブワッ

でもミライさん、「お寺の寺務所に『車で巡る坂東三十三観音巡礼』という本がよくあるけれど、それは買わないでおこうと思ってるんだ」と、ポリシーはあるようです。
自転車巡礼もしている人なので、大丈夫。

さて、あとは帰途に着くことにします。
目的を済ませたあとは、急ぐ旅ではないので、のんびり。

と思いましたが、とつぜん道路が混んで、じりじり動かなくなりました。
高速情報から、常磐道で事故が起こり、通行止めになったと知ります。
それで車が普通道路に降りてきて、混んでいるのでしょう。

様子を見てみても、ずっと混雑は続きそうなので、コースアウトして別のルートを取ることにしました。
そのうちスムーズに動くようになったので「今のうちに常磐道を抜けよう」と先を急ぎ、帰りは休憩なしで横浜まで着きました。



● 雲からちょっと虹

茨城にいる間はずっと、小雨が降ったりやんだりしていましたが、東京に入るとピタッと雨は止みました。
雨引観音の雨を降らせるパワーだったのかしら。
東京は、今年は雨不足問題は大丈夫かしら。



雲の隙間から、ほんのちょっとだけ虹が見えました。
おお、レインボー!

● 普通車のホンダビート

信号待ちの時に、ふと目の前の車に目が留まりました。
ミライさんの車に比べて、ずいぶん車幅が違います。
とても小さくて、まるで軽みたい。
「前の車、小さそうだけれど、あれでも軽じゃないのね」
そう言うと「あれはホンダのビート。もともとは軽だね」と教えてもらいます。



「ビートって軽?」「そう」
「それを、軽じゃなくしたの?」「そう」
よくわからずに黙り込むと「普通車用のエンジンに変えて、馬力を上げたので、ナンバープレートも換えたってことだね」と説明してくれます。
「へえ、そういうことって、できるのね~」
「できるけど、普通はあんまりしないね。いろいろ大変だし」
手間もお金もかかるようです。
「それでもビートを普通車にしたってことは、これはもう、持ち主の愛なのね」
「そうだねー」

ビートなら、確かにファンが多そう。エンジンを変えると乗るのも楽になりますしね。
初めて見た、バージョンアップ版。
青信号になったら、パワフルになったビートは一気に加速度をあげて走っていきました。

● epilogue

猛暑が続く暑い夏でしたが、珍しく曇りで動きやすかったこの日。
お互い、前の旅の疲れが多少身体に残っており、あまり外出向きではありませんでしたが、ドライブは快適で、長時間でもこたえることはありませんでした。



今回は、茨城県内のつくば市・桜川市・笠間市・土浦市にある4つのお寺を訪れました。
新しいお寺2つに、かつて詣でたお寺2つ。地図の青い星のところです。
再訪したお寺の一つは、以前あったお堂が忽然と消えてプレハブになっていたことにビックリ。
もう一つは、ものすごくアクセスが大変でしたが、車で行くとスムーズだったことにビックリ。
でも何より驚いたのは、ミライさんが新車を買い換えて、違う色の車でやってきたことでした!

これで94/100観音。坂東のお寺巡りは、残すところあと2つ。
ようやく、ゴールが見えて来たようです。



茨城4市のお寺巡り 1

2017-09-05 | 北関東(茨城・栃木・群馬)
● prologue

ただいま、日本百観音巡礼中の私。
一週間前は関西地方のお寺を巡り、そして今回は関東のお寺に向かいます。
鎌倉の観音巡礼を済ませて坂東巡りを始めたミライさんと一緒に行きました。

この日までに92寺を回り、いよいよカウントダウンに入ってきています。
軽い気持ちで始めたのですが、なかなか大変な思いをしています。
それでもひとつひとつ周り続けて、坂東のお寺は残すところあと4つとなりました。



前回、八溝山の日輪寺を攻略したことで、ようやく峠を越えた気がします。
ここまでが長かった…。
今回は、笠間近辺のお寺を4つ、訪れる予定です。

● 無理せぬ出発

ミライさんとの待ち合わせ場所には、違う色の車が停まっていました。
(おや?)と思いましたが、運転席には本人がいました。
前の車もピカピカで新車同様だったので、車を変えたと聞いてビックリ。

数日前まで高山旅行に出かけており、毎日歩きづめだったというミライさん。
私も同じ頃に数日間西国観音巡りをして、かなり体力を使いました。
お互い、猛暑の中を動き回った疲労がまだ残っているため、無理はしないことにして、9時くらいに出発。

連日30度越えの猛暑日が続いていますが、この日は珍しく曇り。
太陽がギラギラ照りつける日ではなかったので、ちょっと安心。これなら動きやすそうです。


Apple YTC(アップル研究所)が入るサスティナブル・スマートタウン


中原街道を東京方面へと向かい、途中から高速入りしました。
そんなに早い出発ではありませんでしたが、道路は混んでいません。
夏休みに入ったので、混雑状況が気になりましたが、大丈夫そうです。

● 東京を抜けて



高速から眺める東京タワー、スカイツリー、アサヒビールビル。



メトロポリスをあっという間に通り抜けて、常磐道に入りました。
隅田川で、ボート遊びをする人たちが見えました。
夏休みが始まったのね~。



かなり走ってから「ところでこれからどこに行くんだっけ?」と聞かれました。
「笠間の方」と言うと、「行先・茨城県笠間市」と滑舌よく喋るミライさん。
(?)と思っていると、ナビの液晶に「茨城県笠間市」と文字が浮かび上がり、そこまでのルートが表示されました。

わー、言葉を理解するなんて、Siriみたい。今は車にも、音声認識機能がついたんですね。
いろいろな形のバイクがたくさん走っていきます。



途中、新しい守谷SAで休憩しました。
『ロード・オブ・ザ・リング』好きというミライさんに、
「守谷と聞くと『旅の仲間』編のモリアのシーンを思い出しません?」などと話しながら。

● 筑波の大御堂

そうしてつくばまでやってきました。



区画整備された学園都市。近未来的です。
ちょうど秋葉原からのつくばエクスプレスが到着したところ。



筑波山の中腹には、大御堂(おおみどう)という、坂東の25番目のお寺があります。
「ここまで来たなら、つくばのお寺にも寄っていい?」
「もちろん!」
私はすでに参拝済みですが、ミライさんはまだ。
いい古刹なので、もう一度訪れるのもまた楽しみです。

なんだか次第に空が暗く、雲が厚くなってきました。
筑波山も、上の方が隠れて見えなくなっています。
雨になりそうだと思ったら、じきにポツポツ降ってきました。



この辺りには以前2度訪れて、筑波山登山と筑波神社奥の院、そして筑波神社本殿と大御堂を巡りました。
今回は先があるため、神社には寄らず、大御堂のみを訪れます。
駐車場はあちらこちらにありますが、かつての記憶をたどってお寺のそばに停めようと、敷地前まで行きました。

● ランチタイムあり

実はこのお寺、以前訪れた時にはお昼休みが1時間ありました。
そのタイミングにちょうどかち当たってしまい、近くのレストハウスでランチを食べながら開くのを待っていたことを思い出します。
今は11:45。お昼休みの開始まであと15分。
でも、お寺の真ん前まで来たから、今回は時間的に余裕のはず。

● 消えた本堂

しかし、どういうわけか、お寺がありません。
かつてあった場所から、忽然と消えています。
ブルドーザーがその場にいるため、幻ではないことがわかります。



それにしても、本堂は一体どこへ行ってしまったのでしょう。(以前訪れた大御堂
周りを見回しても、それらしいものはありません。
また、教えてくれる地図や表示もまったくありません。

今回が初めてのミライさんは、そんな状況だということを知りません。
あらいざらい伝えて、不安にさせるのもなんなので、一人で難しい顔をして辺りを見回します。
うーん、15分の猶予時間で、間に合うかしら。



と、その時、石段の下から作務衣姿の女性が出てきました。
「坂東巡りですか?」と聞かれたので「はい」と答えます。
「ではこちらまで降りてきてください」と手招きされました。

その人が出てきたのは、四角いプレハブ。
え?お寺はどこに行ったの?
降りてみたら、そのプレハブは、お寺の仮本堂になっていました。

● 驚きの現状



プレハブになっていたなんて、思いもよらないことでした。
招かれるがままに、ぐるっと回りこんでサッシのドアを開けると、小さなスペースが本殿の代わりになっていました。
所狭しと祭壇が置かれていましたが、ご本尊の観音様は、紙の写真。
うーん、こういうのは初めてだわ。



納経札を書き、めいめい箱に入れます。
隣の小部屋が寺務所になっており、女性のお坊さんが姿を現しました。

以前、私が御朱印を書いてもらったのと同じ方でした。
さらに、以前のおつきの人も女性だったことを思い出します。
実は尼寺なのかしら?

「2020年に再興されます」と教えていただき「また参ります」と言ってあとにしました。
その間に15分は過ぎていたので、どうやらお昼休みはなくなったようです。



ルート途中にあるからと、急きょ立ち寄りを決めたお寺なので、事前に何も調べていなかったのですが。
本堂と寺務所が忽然と消えていたのには、本当に驚きました。

「どこか残して改修するというのなら、よく聞く話だけど」
「でもいっそ、全部取り壊して一から作り直す方がいい場合もあるからね」

神社やお寺は昔からずっとあって、今後もずっとあるという「変わらない」イメージがありますからね。
ああ、ビックリした。



今回は寄りませんでしたが、筑波山の上には筑波神社があります。
その大鳥居をくぐります。



ここを訪れるたびにいつも目がいく、いしはま食堂の看板。
宇宙を飛ぶスペースシップがつくばらしいです。



● 雨の雨引観音

さて、筑波を離れて、桜川市にある24番の楽法寺に移動しました。
雨引観音とも呼ばれているところです。



気が付けば、再びぽつぽつと雨が降っています。
雨引観音に行っても、これ以上雨を引かない方がいいかしら。
でもこの夏は、関東はちょっと雨不足なので、降った方がいいのかしら~。
あれこれと考えているうちに到着しました。

今回、車に乗せてもらったので、お寺の駐車場までスムーズにやって来れましたが、近くには電車の駅も、バス停さえも見当たりません。
今までのように自力で電車とバスだけで来ようとしたら、結構たどり着くのが大変な場所なんじゃないかと思います。

あとで調べたら、やっぱり水戸線岩瀬駅から徒歩で1時間かかるとのことでした。
大変だったのね~。



駐車場に止まっている車は多く、境内には結構な人たちがいるようです。
まずは長い石段がありました。お互い旅先で石段や木の階段を上りつくしたところで、まだちょっと足はだるいのですが、そうも言っていられません。
「う、脚の後ろに響く!」「大臀筋が!」
とか言いながら、普段よりもゆっくりと登っていきました。



● 山門のゾウかバク



朱色に塗られた山門には、立派な彫刻が施されています。



そして天井には、火伏の龍の絵が。



「これ、なんだろう?」とミライさん。
「象じゃない?」と私。
日光東照宮にあるのと同じような、想像の象でしょう。(あるいはバクかな?)



山門をくぐり、龍の手水舎で手を清めます。





境内にはまだアジサイの花が残っていて、浴衣姿で撮影をしている人もいました。

● もぐら叩き・キングキドラ

石段を上り終えると、そこには大きなお堂がありました。
赤と黒のコントラストが緑に映えています。



賽銭箱がとても高い場所にあり、ミライさんは下から投げ入れました。
私は、箱の横にある小さな階段を上って、手を伸ばして入れました。



屋根からは、たくさんの龍が顔を出していました。
「もぐら叩きみたい」という私に、「キングキドラでしょう」というミライ。
お互いの感性の違い?



はめ込まれた彫刻も、どれも生き生きとして精巧なものでした。





● そうだ 茨城、行こう

本堂に上がってみました。ミシミシいう木の廊下がひんやりと気持ちいいです。
薄暗い本堂の中には、何人もの人が座っていました。
周りをぐるりと一周。



チリーン、と鈴の音がして、お坊さんが3人、多宝塔の廊下を歩いていきました。
ポスターに使えそう。


そうだ 茨城、行こう。


その2に続きます。