雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

永眠

2007-02-28 | 友人
 笑顔が素敵な、人だった。

 本当に、この上なく、陽気な人だった。

 でも、人一倍、真面目で、人二倍、三倍くらい、不真面目で、よく働いて、よく、遊んでた。

 司馬遼太郎が好きで、漫画『GTO』が好きで、永ちゃんが好きで、ついでにボインちゃんが好きで・・・。

 なにより、お酒が好きで、一緒によく呑んだ。

 仕事中でも、夜勤明けでも、とにかく、一緒に呑んだ。

 色んな話をした。色んな事を学んだ。

 上司であり、また、同志でもあり、先輩でもあり、仲間でもあり、ときには、兄であり、父であり、そして・・・なにより、親友、だ。

 もし本人が聞いたら
「ダァラ!わっしゃ、オマエのことなんかだいっ嫌いやー」
 って、言うだろう。うん、絶対、とびっきりの笑顔で・・・。

 いつも、真剣なのか冗談なのか解からないことをポンポンと喋って、その後、笑顔で酒をあおり、また、とびっきりの笑顔を見せるんだ。

 思い出す顔は、笑顔ばかりなんだ。


 それなのに、今日、棺の中に小さく納まってた店長は、やせ細って、目を閉じて、ちっとも笑っていなかった。

 あんなに存在感が大きくて、どんなときにも陽気に笑っていたのに、あんな小さい棺に入るなんて、どれだけ待っても、笑ってくれないなんて。

 おかしい・・・。

 本当に、笑顔が似合う男なんだ。それなのに・・・

 今までも、酔っ払ってその場で眠っちゃって、何度も寝顔を見た。寝ていても、いつも、笑ってた。それなにのに・・・

 もう、笑顔になることはないんだ。もう、一緒に酒を呑むこともないんだ。もう、僕を罵ってくれることもないんだ。もう、僕の肩を叩いてくれることも、ない。

 決して、安らかな顔ではなかった。でも、それでいいんだと思う。今まで、散々と素敵な笑顔をばら撒いてた。
 僕らの記憶には、あの笑顔が焼きついている。
 
 最期くらいは、それらしい顔を見せて、そのあとに表す、とびっきりの笑顔を、想像させようとしているんだろう。

 いつもみたいに、軽く右手を挙げて、

「おうっ!」

 って。



 47年間の人生、思いっきり、突っ走ってきた人だった。

 どうか、ゆっくり、ゆっくり、眠っていてください。

 もっと、ずっと、先の話だろうけど、みんなで起こしにいきますから、美味い酒いっぱい持って。

 そのときはまた、とびっきりの笑顔で悪態をついてくださいね。

 そんじゃ、店長、おやすみなさい。
コメント (4)
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