http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121015-00000003-fsi-bus_all
ソフトバンクが米携帯電話3位のスプリント・ネクステルの買収を決め、高速データ通信サービス「LTE」を軸にした太平洋をまたぐ大型再編が実現する。ソフトバンク-スプリント連合は米携帯5位のメトロPCSコミュニケーションズや、LTEに移行する米無線通信会社クリアワイヤを傘下に収めることも検討しており、ソフトバンクは世界的な業界再編の重要なプレーヤーとなりそうだ。
LTEはスマートフォン(高機能携帯電話)で最大毎秒100メガビット以上と、光ファイバー並みの高速通信が可能になるサービス。ソフトバンクはLTEの国際展開を目指し、成熟市場の米国にあえて巨額投資を試みる。スプリントは、旧スプリントと旧ネクステルが合併して2005年に事業を始めた。契約数は12年6月末時点で約5600万件にのぼる。11年12月期の売上高は330億ドル(約2兆6000億円)、最終損失は約28億ドル。AT&Tとベライゾン・ワイヤレスという2強に対してLTEで出遅れ、5期連続の赤字が続き、累損は400億ドルに上るともいわれる。
11年のLTE契約数の世界シェアはベライゾン・ワイヤレスが6割超のトップで、スプリントの存在感は薄い。それでもイー・アクセスの買収に続き、「リスクを取る覚悟」(孫正義社長)で矢継ぎ早のM&A(企業の合併・買収)を実行するのは、LTEの普及が世界規模の再編を促すとの読みからだ。孫社長は15日の会見で「簡単ではない。ゼロからの出発だ」としたが、巨額負債を抱え込むマイナスからの賭けともいえる。無線関連機器の業界団体「GSA」によると、世界で101カ国338事業者がLTEサービスに投資し、9月時点で46カ国96事業者が商用サービスを提供。17年には世界で18億5000万件が利用し、携帯電話全体の21.5%を占めると予測する。
ソフトバンクが01年に電話回線を使ったデータ通信サービスの「ADSL(非対称デジタル加入者線)」事業に参入した際、NTT東西が業者に貸す設備スペースを1社で借り占めたことがある。借りられるもの、買えるものは何でもいただく-。「孫氏の兵法」と揶揄(やゆ)されるダボハゼ作戦で、LTEの追い風に乗る腹づもりだ。しかし、経営の基盤とする日本での態勢は万全ではなく、道半ばだ。イー・アクセス買収で「LTE基地局は3万局になる」と豪語したが、両社の基地局は都市部偏重で相乗効果は薄い。社内から「リスクを取るどころか、途方に暮れそう」(幹部)と困惑気味の声も上がる。
スプリント買収は、日本の携帯市場にも影響を及ぼすことになりそうだ。最大の波乱要因がクリアワイヤの存在。同社が推進してきた高速データ通信規格「WiMAX(ワイマックス)」は、日本ではKDDIが筆頭株主のUQコミュニケーションズが提供しているが、世界では劣勢。クリアワイヤはLTEの一つである「TD-LTE」に転換する方針を示している。約50%の株式を保有するスプリントがクリアワイヤを完全子会社すれば、UQコミュニケーションズのワイマックス事業は事実上、変更を強いられる。(芳賀由明)