瀬戸内海の祝島沖から台船がかえった日、
晩のおかずにと漁師のNさんが魚をさしいれしてくださった。
どさりとタライにいれられたヤズ(ブリ)とイカ。
どでかい。どれもまだ元気に生きていて、
ピチッと音をたてては身をしならせ、あたりに水しぶきをかける。
見惚れるようなイカの透明度。
さっそくみんなで海へもっていってさばく。
皮をむき内臓をとって海へほうると、
カモメがあつまってきて競うように食らいはじめた。
それにしてもイカが美しい。オパールを思わせる輝き。
正月やお祝いというと尾頭つきの刺身をつくってみんなで食べる、
という文化で育ったので、わたしにとって魚はなじみ深い。
ただ、ならば刺身を上手にさばけるかというと、そこは個人差もある。
祖母や妹は大きなタイやスズキも上手にさばくし、
母はフクラギ(若いブリ、祝島でいう「ヤズ」?)も嬉々としてさばくけど、
器用とは言いがたいわたしは小魚どまり。
30センチもありそうなこの特大メバルは、
わたしにとって久々のチャレンジ級。
それを知ってかしらずか、Yさんが手ほどきしてくださった。
とはいえ、これは煮る予定だから、うろこを取って、
エラをとりながらそのままズルリと内臓もとるだけ。
かたわらでYさんは速やかにヤズを三枚におろしていく。
わたしが育った文化圏で男性は魚をさばかなかった。
ここでは、魚をもってきてくれたのも、
それを受けとって海へ走りさばくのも男性。
しかもブリを上手に三枚におろしている。
思わず感心してみていると
「子どものころから人がやるのを見てるから
見ようみまねでできるもんなのよ」と。
処理しおわったものを家にもってかえって、
ヤズとイカは刺身に、メバルは煮つけに。
イカは切り方で味わいがかわるというので、
2通りの切り方でつくってみた。
イカそうめん風の細切り(上)と太切り(下)。
わたしは太切りのほうが歯ごたえがあって好き。
その場にいた4名は、細切り好きが2名、太切り好き2名と、
幸運にも絶妙のバランス。
煮つけにしたメバルも、身がプリプリで絶品。
ほどよい時間に気のいいメンバーがあつまり、夕餉のはじまり。
おいしい魚を「ありがとう」とNさんにいうと、
思いがけないことに、Nさんも「ありがとう」といいだした。
つづく言葉は、「あなたたちが毎日(船を出しからだを張って)
海を守ってくれるから、僕たち漁師は安心して漁ができるのよ」。
お腹もこころも満たす最高の晩餐だった。
(注:言うまでもないけれど、
上の「あなたたち」はわたしのことではなく、島の方々)
最新の画像[もっと見る]
-
【ご案内】12/1(日)講演@東京・五反田/品川「のと地震の震源地をゆく〜原発がないのは偶然か」 3ヶ月前
-
【ご案内】12/1(日)講演@東京・五反田/品川「のと地震の震源地をゆく〜原発がないのは偶然か」 3ヶ月前
-
【お薦め】読書の秋に、『珠洲の海』(砂山信一 第一歌集・11月20日発売) 4ヶ月前
-
【ご案内】11/29(金)スライド&トークイベント「声をあげる人々が未来を変える~能登地震と原発」 4ヶ月前
-
【おすすめ】「新潟県巻町と根源的民主主義の細道」と副題にある名著、増補版! 4ヶ月前
-
【おすすめ】「新潟県巻町と根源的民主主義の細道」と副題にある名著、増補版! 4ヶ月前
-
「もの言う民が未来を救う」:神奈川新聞「2024衆院選 問う」10/27 4ヶ月前
-
「もの言う民が未来を救う」:神奈川新聞「2024衆院選 問う」10/27 4ヶ月前
-
【ご案内】10/28発売『現代思想』11月号に「帰りたいスズとジチ」 4ヶ月前
-
【ご案内】10/28発売『現代思想』11月号に「帰りたいスズとジチ」 4ヶ月前