湘南ゆるガシ日和 ・・・急がず、休まず

湘南でゆるゆら暮らしココロ赴く先へガシガシ出かけるライター山秋真が更新。updated by Shin Yamaaki

一本釣りでまさかの大漁:祝島沖・上関原発の取水口側埋立予定海域で/2月にはその海で

2011-10-04 23:59:58 | 祝島:海と食と原発計画

ある日、いつもお世話になっている漁師さんのひとりに
漁につれていっていただいた。
これまでタイミングがなかなか合わなくて何度も機会を逃していたので、念願の出漁。
朝6時すぎに船に集合し、友だちとともに祝島港を出発した。

ご欄のとおり、わりと曇天。
青空を仰げないのはやや残念でもあるけれど
サングラスを忘れてきたので目のためには幸運かも。
ちょっと風もでてきたので、早々にカイロをつけた。
「まさか使うことはないだろうと思うけれど、念のため」
と、昨夜カイロを鞄にいれたときは
周囲から変わったものを見るような驚愕の視線を浴びたが、
「万一のための支度」がはやくも役立ってしまった。

まずは宇和島沖へいって糸を垂らす。
今回わたしがつかわせてもらった釣り糸はこれ。

数十メートルの長さがある黒/青二色の太糸の先に細糸がつづき、今日はそれに針4つ。
釣り竿は使わない。

このとき宇和島沖には魚があまりいなかった。
しばらくすると糸をあげ、漁師さんは船を移動させはじめる。

上関原発の予定地・田ノ浦のまえを横切り、
計画では原発の冷却水をとる取水口をつくるために埋め立てられる予定の場所にくると、
漁師さんは前後の錨をおろして船を固定した。

上の写真でむこうにみえる黄色のブイは、原発工事のために埋めたてる海域をしめすもの。
近づくと「中電 上関原発」と読める。
下は今年2月25日、この海を埋めたてるための台船を中電が何台も派遣していた時期にとった写真。
ブイの奥にみえるのは、取水口側の海域に侵入してアンカーをおろし、最後まで居座っていた台船。

実は、一本釣りをするのはこの日が初めてではない。
今年2月25日にも、田ノ浦湾のまえで「やってみるか?」といわれ釣り糸を垂らした。
その日は、21日未明からはじまった中電の闇討ち総攻撃(そうとしか呼べない有様だった)をうけ、
原発計画の本丸・田ノ浦への台船の侵入ゆるすまじと
祝島の船団が田ノ浦湾のまえで連日ならんでいた頃だ。

数日前に陸で祝島の女性などが作業員に押しつぶされて負傷し病院へ搬送されていたので、
小舟にのった中電の広報担当が祝島の船に個別にちかよっては様子をきこうとしていた。

いつも離れたところから遠巻きにみている経産省の船も、わりと近くまできていた。

べた凪のいい日和で、

あちこちの船から釣り糸がおりていた。
ぼちぼち鯛の季節、何キロもある大きな真鯛を釣りあげる漁師もいたし、
メバルやコイカがたくさん釣れる様子だった。

わたしはといえば、生まれて初めて釣り糸を指で海に垂らしてみたものの
これで魚を釣りあげられるかと、甚だ自信がなかった。
そもそも、魚が釣り針にかかったとき、どうやったらそれと分かるのだろう?

「そのときは、誰でも、絶対にそれとわかる」漁師はそう請け負った。
そうなの?と思いつつ釣り糸を下げていたが、いっこうに釣れない。
「ここは魚がおらんのかね、船の位置をすこし変えてみるかね」となり、
移動のためひとまず釣り糸をあげてみたら、なんと小さいメバルが2尾、釣り針にかかっていた。
「誰でもわかる」と祝島の漁師はいったが、自分にはわからなかったのだ。

あれから半年以上を経て、二度めの一本釣り体験。
先ほどから、船頭役の漁師さんは鯛をつぎつぎと釣りあげている。
いま、ここに魚は確かにたくさんいるのだ。
ところがわたしはといえば
餌のエビを魚に食い逃げされるばかりで、いっこうに釣れない。

「五感を指先に集中させンさい」
…そのとうりにしてるつもりが、それでも釣れない。

「都会で暮らしてるとアレよね、感覚が死ぬるんよね。感覚を蘇らせて釣りンさい」
…わたしの感覚は死んだのだろうか?
死ぬためにはまず生きなければならないけど、わたしの感覚が生きたことはあったろうか?
たぶんわたしの感覚は死んだんじゃない、
都市部の住宅地では五感をつかう機会が少なくて、発達の機会もなく眠りつづけてきたんじゃないか。

今日は腰をおちつけて一本釣りをやってみよう、眠った感覚を起してみよう。
餌は、朝2時からのエビ漕ぎて用意していただいた、生きたエビ。
それを指でつかんで口に運び、尻尾を歯でちぎって、そこからエビを釣り針に刺す。
4つの針に餌をつけおわったら、
釣り糸先端につけた重りから順に針を海に落としてゆく。重りが海底にとどくまで。

釣り糸をもつ指先に五感を集中させ、それをなんどもくりかえしてみた。
しばらくして魚が餌をつついているのを感じて、糸を少し上にあげてみる。
釣られまいとする魚が糸を引くのを感じる。
糸をひきあげると、先の針に鯛がかかっていた。
五感で釣った鯛さん。ようこそ、ようこそ。

ビギナーズラックだろうか、その後も好調に鯛が釣れた。
昼もだいぶすぎたころ鯛が食わなくなったので
祝島沖(祝島の東の浜の先)へ移動、そこでは鯵がつれた。

船頭さんの腕によるところが大きいことは言うまでもないけれど、
思いがけない大漁はうれしい(ヤズ=若いブリやハゲ=カワハギを釣ったのは漁師さんだけ)。

同時に、長年眠ったままだった感覚が初めて生かされる、
そのことの喜び(みたいなもの)も、こころの底からじわりと湧いてきた。

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