3月の祝島で、ひじき仕事を手伝わせていただく機会にめぐまれた。
干潮にあわせ鎌を手に磯へでて、ひじきを刈りとる作業は、
初心者に撮影の余裕があるとは思えず、カメラをおいてとりくんだ。
引き潮で姿をあらわした岩場をおおうように、ひじきが豊かに茂っている。
岩にはりついて生えているひじきは、しゃっきりと瑞々しい。
静かな磯でその株を刈りとっていくのは、想像以上に楽しかった。
とはいえ、ゴロゴロした岩場や石のうえを歩きまわるのは足場も悪いうえに
干(ひ)っているとはいえアオサなどで滑りやすく、なかなか体力が要る。
刈りとったひじきは、土嚢袋にいれて軽トラックに積みこみ、釜炊き場へはこぶ。
かなりの力仕事だ。
釜炊き場にはこんだひじきは、
藻場(もば)や石などがまざってないか選(よ)ってから、コンテナにいれてゆく。
ときには、陽射しをうけてひじきが輝く瞬間もある。
釜に湯を沸かし、沸騰したらひじきをいれていく。
茶色っぽいひじきが、熱湯につかると一瞬で鮮やかな緑色にかわる。
コンテナのひじきを次々に釜へいれてゆく。
てんこ盛りになったら蓋をして、次の釜へ。
天候にもよるようだけど、だいたい4時間くらい、こうして炊いてゆく。
ポイントは火力のようで、強火を保つのがけっこう大変。
釜場は煙モクモクで号泣必至の世界だし、バックヤードでは薪を用意しなきゃだし。
炊きあがるにしたがい、ひじきのカサが減っていく。
ころあいを見計らって火を落とす。
これは、炊きあがったばかりのひじき。
これはこれで、歯ごたえもあり美味しい。
なかみを軽くまぜてから蓋をし、そのまま一晩蒸らす。
朝になって蓋をあけると、まっ黒なひじきが一面びっしり。
この釜揚げひじき、磯の香りとやわらかさが素晴らしい、旬ならではの味覚のひとつ。
これをザルにあげて浜へはこび、
網のうえにひろげ、箸でのばしていって、
海苔を干すような要領で干していく。
風がないときは笹の葉でハエ追いしたり、
夕には雨対策のため網をまとめてシートをかぶせたり。
天気がいいと2‐3日で干しあがるとか。
干しあがったひじきを屋内へはこび、
エビなどがついてないか点検してから袋詰め。
ひじきづくりのさまざまな場面を(少しだけ)手伝わせていただいた今、
祝島ひじきは、わたしにとって「商品」ではなく「食べもの」になった気がする。
祝島の人びとが、原発という国策に30年もあらがって大切にしている海。
その海に育まれたひじき。そのひじきを味わい、ひじき仕事に精をだす人びと。