本郷新記念札幌彫刻美術館 の続きです。
本郷新記念札幌彫刻美術館は、札幌市中央区宮の森の閑静な住宅街のなかにある小さな美術館です。戦後日本を代表する札幌生まれの彫刻家・本郷新(1905-1980)の彫刻・絵画など1,800点余りの作品を所蔵しています。
無辜の民
本郷は、戦争や紛争により悲惨な状況に追い込まれていたアラブ、中東、インドネシア等の罪なき民衆に触発され、1970年にこのシリーズを制作しました。
戦禍により、一瞬のうちに家族や家を失った人々。ある者は祈り、ある者は慟哭し、虚空を見つめて佇みます。
全身を布に巻きつけられ、自由を奪われたその姿は、50年余りの時を経た今、抑圧された状況下で喪失や葛藤を抱きながら生きる現代の人々のありようと共鳴するかのようです。
砂
1957年
石膏
なぜ裸なの?
本郷は作品をつくるとき、衣服を身につけた像と、裸体像の表現を意図的に使い分けていました。
着衣の像は、身なりや持ち物によって、その人の階級、職業、生きた時代などを詳細にあらわすことができます。
一方で、いっさいの装飾を捨て去った裸体像は、身分や時代の垣根を超えて、たくさんの人々にメッセージを届けることができるのです。
本館と隣接する記念館は、かつて本郷新がアトリエ・ギャラリーとして建てた邸宅です。本郷新の彫刻・絵画作品のほか、全国各地に設置された本郷新の野外彫刻の石膏原型、制作道具や家具類を常設展示しており、かつての邸宅の雰囲気を味わいながら、本郷の彫刻とその制作の息吹にふれることができます。2階の窓からは札幌市街の眺望を楽しむことができます。
実際にここで生活しながら創作活動をしていたんだなぁと思いました。
牧野富太郎翁像
1974年
石膏
牧野富太郎像
本作は、高知県立牧野植物園に設置されているブロンズ像の元となったエスキースです。
モデルとなった牧野富太郎(1862~1957年)は、新種や新品種など1,500種類以上の植物の命名を行った高知県出身の植物学者です。
牧野と直接面識のない本郷新は、制作にあたって数か月もイメージを膨らませ、結果的に牧野の「行動の学者」としての側面を打ち出すことにしました。完成された像は、チョッキと蝶ネクタイを着用した学者らしい出で立ちをしていて、深い草むらの中で大きなキノコ(カラカサタケ)を意気揚々と掲げています。
本作は単なるリアリティというよりは、ロマン精神や象徴性を帯びた作品といえますが、本郷は「肖像彫刻の決定版」と自負していました。
牧野富太郎翁像
1974年
石膏
記念館の外に出ます。
駐車場も完備です。
本郷新記念札幌彫刻美術館
札幌市中央区宮の森4条12丁目
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