さいふうさいブログ

けんちくのこと、日々のこと、いろんなこと。長野県の建築設計事務所 栖風采プランニングのブログです。

木の香り

2016年03月16日 | 現場16~東御市 古民家カフェ計画

引き続き、古本カフェの現場の話です。

そう、床を剥いで床下が露わになった途端に

室内が、もの凄いカビ臭に襲われた件!は昨日書きましたが、

これから飲食のカフェをやるのに、

臭い

困ります。

 

カビの原因は、床下がとても湿気っぽく、

その湿気の原因は、隣地との境目の問題で、雨水が上手く処理されてない事が原因のよう。

恐らく、雨水がうまくはけずに、床下に水分が入ってきてる可能性があります。

ここの雨水処理をやりなおすというのは、

予算的にも計上しておりませんし、工期的にも無理ですから

さてどうしましょう。。。です

 

隣地との境目の床下。

特に前日雨が降った訳でも、雪が降って積もっていた訳でもないのに、

こんなに濡れています。。。

  

ほんの少しだけ床下換気口が見えてます。

風通しもあまりよくはないんですが、水が浸入してくるような場合は

いくら風通しよくしても解決はしません。

 

とにかく、床下の基礎工事を今回やる事は出来ませんし、

でもこの状況を少しでも改善しておかないと

カビ臭いままになってしまう

 

なんとか予算の中で出来る事は無いかと考えて、

困った時は取りあえず炭!ということになりましたデス。

炭も安くないんですけどね、なんとか調整できるかなぁ。

 

炭代、数万円掛ってしまうけど

炭の脱臭効果は(時間はかかるけど) 絶大だしねぇ。(経験的にも)

炭の調湿効果は、まぁ、一応あると言えばあるけども、多大な期待は禁物。

むしろ床下の空気を気持ちいいものにする、くらいのものです。

 

水分を含んだ地面に、砕石を敷いて、その上に袋入りの炭を敷きました。

応急処置的ですけどもね。

 

で、床組はやり直しまして

栖風采のいつもの仕様、セルローズファイバー断熱材55㎏135㎜入るように下地を作ります。

湿気を気にする場合は、あまり透湿抵抗値の高い材料は使わないようにして

湿気が適当に出入りできる材料だけで構成するようにします。

なので、

グラスウールなんかは使えませんし

(グラスウールに湿気は大敵なんですね。なんでかって、湿気を吸いやすいくせに、湿気を吐き出せない材料なんです。だからグラスウールに防湿フィルム必須なのね。しかも湿気を吸ってしまったグラスウールはよくカビます。)

防湿のためのビニール系のものは使わない方が絶対いいんですね。そもそも湿気と相性が悪いので。

安いから、ホームセンターに売ってるからって、そういう材料を平気で古民家に使っている事例みますけど(DIYも含め)

止めた方がいいです。建物によくないからね。

合板も湿気の強いところに直に使っちゃだめよ~

  

ちなみに、大引は米ヒバを使ってますが

この米ヒバの香りが、それまでのカビ臭さを打ち消すように芳香しています。

なので、

床組みを始めてからは、現場を覗きに来る観光客も

「わぁ~ 木のいい香りがしますね~」って言っていきます。

そう、この木のいい香りは

米ヒバの香り

 

ところで、米ヒバって、実は日本の檜葉(ヒバ)とは同類ではありません。

むしろヒノキと同類になります。

材木の名前は、結構紛らわしいので、これを全部説明するのはとても面倒なんですが

米ヒバの米は、北米材の事で、輸入材か!って思われがちですけども、

そもそも明治時代から国産材の代替材として輸入されていた歴史はあります。

で、

この木のいい香りな何なのかと言いますと

それはヒノキチオール

樹木が傷つけられた時に放出する化学物質でフィトンチットの一種です。

殺菌力を持つ揮発性物質で、ヒノキチオールという名前からヒノキに含まれる物質のように思えますが

日本の檜には実はあまり含まれておらず、国産材ならば、ヒバやネズコに多く含まれており、

外国の材ならば、台湾ヒノキや米杉、米ヒバといった材に含まれています。

 

よく、化学物質過敏症でシックハウスだという方に、何でも自然素材ならOKと思っている人もいますけど

針葉樹の材料からは、こうしたフィトンチットと言われる化学物質が揮発されているので

化学物質過敏症の方には自然素材って決めつけない方が無難です。

ちなみに、木材にアルコールを塗ると、アセトアルデヒドが発生することは以前にも書いた事ありました。(木も酔っぱらうのよね)

参考サイト 木材から放散されるアセトアルデヒドの発生原因を解明ーエタノールとの接触が引き金にー

 

 

で、

カビ臭溢れる現場では、この殺菌力のあるヒノキチオールは有効であろうと思いましたし

湿気っぽい悪条件な床下にも耐えられる材料でなければなりませんので、

その点、耐朽性、水湿性に優れる米ヒバは心強い材料なのであります。

 

海野宿の建物の修理をする際には、土台には「栗」を使ってきたのですが

(一応、主要軸組の土台の交換には栗を使う予定です。栗も水潤に強く、耐朽性も大きく、重硬で優れた材料。)

これだけカビ臭い現場ですし、白アリの被害も大きかった事も合わせて、

殺菌、防虫効果のあるヒノキチオールが含まれている材料の方がいいんじゃないかと

大引にはいつも通り米ヒバを使いました。

 

そのお陰で、あのカビ臭からオサラバ~

現場はヒノキチオールのいい香りが

  

さて、話は少し変わりますがこちらは敷居。

サクラの敷居なんですが、ちょっとだけ材を継ぎ足したいと言われ、

うちにサクラ材(古民家の廃材)が確かあったなーと探して、現場に使ってもらいました。

 

サクラ材の敷居。

同じサクラ材で継ぐ事ができました。 

 

明治期のここら辺の古民家では、敷居にサクラ材がよく使われています。

サクラ材。

実は、紛らわしい材木の用語でもあります。

 

サクラと言えば、お花見する桜と思われるかもしれませんが

一般的に建築で使われるサクラ材は、桜ではなくて、

カンバ類カバノキ科の真樺(マカンバ。カバザクラともいう)や、ミズメ(ミズメザクラ)を指します。

ややこしいですね。

 

でも、古民家で使われていたこの敷居は、サクラ類バラ科の山桜です!

上田の古民家改修現場でも同じようにサクラの敷居で、お施主さんに確認したところ、昔、大工さんが山桜だと言ってた、との事。

望月の古民家改修現場でも、やっぱり同じ山桜の敷居でした。

で、海野宿のこの丸屋でもサクラの敷居

そして我が家からも、サクラの柱が出てきています。

山桜

左が上田の古民家(明治期)の敷居に使われてた材。

右が我が家から出てきた柱材。

 

山桜材はその肌合いが優しくて光沢もあり、うっすらピンクがかっていて好きな材料です。

そして材料としては、やや重硬な材料なので、引き戸の擦り減り消耗の激しい敷居には適材だったのでしょう。

 

ちなみに、

樺細工は、山桜の樹皮を細工したものをいいますけど、

バラ科の桜を、樺(細工)といい、

カバノキ科の樺を、(カバ)サクラといい、

なんで其々逆なの~???

って思いますね。

なんか紛らわしい~!

 

さて、先週は丸一週間、インフルやなんかで現場へは寄りつかないようにしておりましたが

先週の土曜日にダウンした大工さんも回復してきているようです。

良かった良かった

では引き続き、頑張って参りましょう~!

 

 

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