傷んでいる土壁をやり直すプロジェクト その1【小舞掻き】
長野市で進行中の古民家再生現場。
1900年に建てられたとされている古民家の再生工事です。
春に現場が始まり、外壁を覆い隠していたトタンを剥がす等の解体が進んでみると、
既存の土壁の状態が思った程よろしく無く、
どーする となっておりました。
このような事は古民家再生、古民家リフォームではよくあることで
開けて(解体して)みなければわからない、と言われるリスクではあります。
ではそのリスクに対して、予め建設費にどこまでリスク費をみるか、ですが、
20年近く古民家再生をやってきても、その匙加減、正直難しいところです。
で、現場では、傷んでいる土壁どーするんだ、と、いつもの「どーする攻撃」に、毎度悩める私
見なかった事にしよう、、、という訳にはいきません。
(そういう業者もいるでしょうけど)
兎に角、修理はしないといけない
じゃないと、耐震改修のための構造計算をした意味がなくなります。
実は今回初めて耐震改修(耐震補強)に限界耐力計算を使いましたが、
既存土壁の欠損・劣化状況について、どう考えるべきかを構造設計屋さんに相談したところ、
復旧して下さいとのこと。
それはそうでしょうけども
復旧の仕方にも色々あるわけで、私が提案する修理方法(乾式)では駄目だと言われてしまい、
これまたどーする、となっておりました。
構造屋さんに言わせれば、
傷んでいる土壁は土壁に復旧することが望ましく
(それは分かっているけど)
土壁が欠損しているようなところは、土壁パネルを使って欲しいとのことでした。
まずは傷んでいる土壁、補修でいけるのか、やり替えなのか、
その判断は左官屋さんに聞いてみないと私には判断できない部分が多く、
まずは左官屋さんに見てもらうことに。(6月の時点)
元の土壁自体が小舞下地から浮いてしまっているものは、
いくら表面を塗り直しして修理しても、ぼろっと剥がれてしまうため
土壁を剥いでやり直さないといけない、と、左官屋さん。
それだけではなく、
土壁の表裏、両方の状態、並びに、内壁の仕上げも鑑みての判断が必要で、
そもそも土壁が浮いているところは、小舞も傷んでいる場合が多く
壁を押せばぐらぐら・・・
そういうところは小舞下地からやり直さないといけないね、とも、左官屋さん。
そ、そ、そんな・・・土壁やり直しの予算はみてない・・・
ほぼ泣き目なワタクシ。。。
訴えかけるように現場監督の顔を見て
左官屋さんの顔を見る。。。
そうすると、左官屋さんはニコニコしながら
小舞掻き(こまいかき)はお施主さんと設計事務所でやればいいよ。
簡単だからやりなよ♪
教えてあげるから。
と、えらい簡単に言うじゃないですか(汗)
小舞下地を作ること、またはその職人。
小舞下地とは
日本在来の壁下地で、土台・柱・桁に囲まれた面に、通し貫に竪間渡し竹を30㎝間隔に取付け、それに横間渡し竹を抱かせて力骨とし、小舞竹を3~4㎝間隔に掻き付けたもの。「竹小舞下地」ともいう。
(建築大辞典より)
実は土壁の代替品として限界耐力計算上、土壁パネルも候補に挙がっていたのですが、
左官屋さん曰く
あんな既製品の高いやつ、使う事ないよ。
と、あっさり却下。
ということで、
左官屋さん主導で 傷んでいる土壁をやり直すプロジェクトが急遽、立ちあがりました!
とはいえ、土壁のやり直しは増工事になってしまうので
左官屋さんにやってもらわなければならない部分と材料費は増額になることをお施主さんにご説明し
少しでも増額費用を抑えるために、土壁解体と小舞掻きはお施主さんと我々でやることに!
そうと決まったら早速「傷んでいる土壁をやり直すプロジェクト」段取りに移ります。
修理しないといけない壁を左官屋さんに確認していただく。
私が図面上で数量を確認。(修理面積およそ13.5坪でした)*写真1
耐力計算上の壁かどうかも確認。(計算外の壁は木摺り下地でも可)*写真1
土壁を解体しなければならない箇所を確認。(解体なのか補修なのかの判断)*写真1
泥コン屋さんにお取引のお願い行く。(荒壁土を買うのは初めてなので)
現場で解体箇所の印付。(現場指示)*写真2
左官屋さんに壁面積をお知らせし、竹小舞の数量を出してもらって竹の手配をお願いする。
お施主さんに土壁解体してもらう。*写真3
写真1 土壁やりなおし箇所の諸確認(私の仕事)
写真2 解体箇所の指示(私の仕事)
写真3 土壁解体作業(施主作業)
写真3 土壁やりなおし部分 解体終了
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ここまで準備が整ったところで
左官屋さんに小舞掻きのレクチャーを受け
お施主さんファミリー&我々総出で小舞掻き!
さて、レクチャー当日です。
左官屋さんが持ってきて下さった割竹。滋賀県産だそうです。
(8分竹 長さ10尺 50本入 10束)
私達が現場に到着する前に、間渡し竹まで先にやって下さってました。
ここから竹小舞を編みます。
まずはその編み方を教えてもらいました。
ちなみに縄は棕櫚縄です。
2022.8.20 齋藤左官さんよりレクチャーを受けてるお施主さん
インスタへの投稿はこちら ↓
レクチャー翌日の日曜日。
黙々と作業されるお施主さん。
猛暑の中での外仕事。
自前の空調服に竹笠で完璧な装いです!
2022.8.23 暦では処暑とはいえ、まだまだ暑い中での作業。
お施主さん(奥様)とご両親、3人のショットです。
親子で作業。なんだかいいですね。
室内側からの横小舞編み。
子ども達も現場に居ます
現場が遊び場
間渡し竹は現場監督なうちの旦那がやってます。
フェイスブックへの投稿はこちら ↓
小舞掻き、完成です!
実は・・・
小舞掻きに夢中で、小舞の美しさに見惚れてしまっていたワタクシ。。。
この段階で大きな大きなミスを犯していたことに後になって気がつくのでした。その話はまた別の機会に。
小舞がとても美しいですね