週刊 最乗寺だより

小田原のほうではなく、横浜市都筑区にある浄土真宗本願寺派のお寺です。

勝田山 最乗寺
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怨親平等

2011-12-29 02:13:16 | 仏教小話

              

NHKドラマスペシャル『坂の上の雲』の最終話が、25日の日曜日に放送されました。
リアルタイムだと龍くんに邪魔されてしまうので、録画しておいたのを若住職と観賞しました。

以前に書いたとおり、日露戦争・日本海海戦の迎撃作戦「トーゴー・ターン」で終わった前回の放送。
今回は、その号令から始まり、バルチック艦隊を圧倒的な優位性のもとに撃破する映像が多くを占めました。

この海戦で参謀を務め、物語の中心的な立場にいた秋山真之は、戦闘終了後に自宅に戻った最初の晩、深い胸の内に秘めていた感情を吐露して涙を流します。

「坊主になりたい」
「坊主になって、敵味方も関係なく、命を落としていった者たちを弔いたい」
「あの海の底には、たくさんのロシア人と日本人が沈んでいるんだ」

降伏し、戦闘不可能なロシアの戦艦に乗り込んだ秋山真之が見たのは、日本人である自分と同じ人間が苦しみもがき死んでいくロシア人の姿でした。

「怨親平等」という言葉があります。

怨み憎む者も、愛する親しい者も、隔たれることなく平等であるという意を持つ言葉。
平等とは、仏の前では誰もが同じ命を生きるものであり、同じ救済の願いをかけられているということです。

一般には、敵も味方もなく同じように扱うことであり、怨親問わず一切の犠牲者を同じように供養するという意として使われています。

秋山真之が生まれ育った松山は、この怨親平等の心で多くの人々と接し続けた一遍上人が誕生した土地でもあります。
そして、秋山真之の中にあった怨親平等の心が揺さぶられたことに、違和感もなく自然と受け止められるほどの生々しい戦争の映像が、このドラマにはありました。

しかし、暖かな部屋と、隣に座る人の温もりというものとは程遠い血生臭いリアルな映像の連続が、反対に私の中から戦争へのリアリティを奪っていったようにも思います。
それは何故なのか・・・、そう自分に問うということに価値があるような気がしました。

再放送は30日の午後1:05からです。