この自費出版本は、もともと部数が少ないだけあって、帯の有無で古書価が大きく違う代表格と言えるのではないかと思います。
試しに検索してみると、帯付署名入りは帯無し署名入りに比べると、3倍ほども高い値段が付いていました。
この本は手元に2冊あります。1冊は古書店で購入したもので、もう1冊が今回書影を載せたもので、ある方からいただきました。
残念ながら、どちらにも帯はありません。
表紙
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ジャケットを広げて
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見返しにはペンによる署名がありますが、宛先が私ではないので、修正してあります。
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奥付
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私にこの本をくださったその方は、北杜夫が慶応病院の医局で働いていた時の同僚だったそうです。
水産庁調査船の船医として半年近く航海したときのことをもとに書いた「船上にて」を雑誌「文藝首都」に連載し、それを『どくとるマンボウ航海記』として中央公論社から出版し、大ベストセラーになって有名作家の仲間入りをした訳ですが、この時、船医への応募書類を本人の代わりに書いてあげたのが宛名の方だったのです。応募書類を書いてくれたお礼に、この『幽霊』を献呈してくださったのだそうです。
私にくださったこの方は、絵本画家として活躍されていますが、飲みながら話をしていた時に、私が北杜夫のファンだと知ると、差し上げますよと……その時は酔った勢いでおっしゃったのかと思っていたら、後日、ちゃんと送ってくださったのです。
献呈してもらった時から包装紙でカバーをかけていたそうで、ジャケットにほとんどシミもなく、元パラフィンもかかったまま(掲載画像は、パラフィンをはずしてスキャン)の状態です。