原子力発電所による発電は電力供給にとどまらない政治問題を提起しています。その解決方法をめぐっては、安倍、自民党政権、経済産業省、経団連が目指す原子力発電にしがみつき、事故の問題を無視し、使用済み核廃棄物の処理の先延ばし路線が1つの方法としてあります。この方法が、様々な問題を発生させています。
1番目に問題は、原子力事故の不安がなくならないことです。福井地裁の判決が示す基本的人権、人格権、生存権が確実に守れないことです。立地自治体への投資、税制上の優遇措置などと引き換えにならないような、大きな損失と引き換えに再稼動、存続をさせることなどは憲法の掲げる基本的年から行っても容認できるようなものではありません。2つは、使用済み核廃棄物の再処理、最終処分場がない問題です、最終処分場がなく、原発を稼動させる限り、核廃棄物はどんどん増え続け、その保管場所がなくて、原発敷地が物理的にパンクする事態も想定されています。また、都市部から遠く、過疎化した地域に廃棄したい、最終処分をしたいと考える政府、電力会社によって最終処分地の選定が行われています。しかし、候補地では反対と賛成で分断が発生し、政治的な対立が発生します。3つ目に問題は、廃炉技術がありません。しかも、稼動年数40年を上限とした法律上の縛りから、多くの原発が、今後、廃炉を迎えることになっています。その技術、廃炉費用、廃炉に伴う汚染物の処理などがありません。4つ目は、安易に原子力発電に頼ろうとすることから再生可能エネルギーの開発が消極的、出来ないでいます。電力会社が大規模再生可能エネルギーの発電を買い取らないために、企業の投資も止まる、停滞する状態が生まれています。
原子力発電を止めて、廃炉にする道が2つ目の選択です。この選択には長期的に見て展望があります。この道の最大の長所は、原子力事故の危険から開放されると言うことです。避難計画の策定も必要がありません。安心して立地自治体、消費地も生活が送れる権利が保障されます。また、使用済み核廃棄物の最終処分場確保も必要なくなります。これまでの分を処理しなければならないことは残りますが。第二に、このことで貿易赤字も大幅に減少することになります。化石燃料に頼る発電を減らすことができるからです。再生可能エネルギーの開発投資に伴う産業の拡大は新たな雇用を生み出し、景気の好転にも寄与することができます。
場当たり的なエネルギー政策を止めて、中長期的な展望にたった、再生可能エネルギー重視政策を進めるべきです。その道にこそ、未来があるのだということを国民に政府が責任を持って説明をすべきです。
<毎日新聞社説>東海第二原発 延命より経営見直しを
日本原子力発電(原電)が東海第2原発(茨城県東海村)の安全審査を原子力規制委員会に申請した。地元の同意を得たうえで、2016年度以降の再稼働を目指すという。しかし、安全面からも経済面からも再稼働は非現実的だ。申請は原電のなりふり構わぬ延命策に見える。急ぐべきは、原発稼働ができないことを前提にした、抜本的な経営形態の見直しである。
東海第2原発は営業運転開始から35年余りが経過しており、安全審査を申請中の11原発18基の中では最も古い。原電は防潮堤建設などを含めた安全対策に約780億円を投入する。審査の大きな焦点となるのが、電源ケーブルなどの防火対策だ。
新規制基準は燃えにくい難燃性ケーブルの使用を求めている。ところが東海第2原発のケーブルは可燃性だ。交換には巨額の費用と時間がかかる。原電はケーブルに防火塗料を塗るなどし、難燃性ケーブルと同等の性能を確保するという。防火対策として妥当か。塗料が劣化する恐れはないか。疑問があり、規制委の審査を通るか分からない。
東海第2原発から30キロ圏の人口は全国の原発で最多の約98万人。事故に備えた避難計画を策定した周辺自治体はまだない。受け入れ先の確保などが難しいのだ。
こうした課題を克服し、原電が再稼働にこぎ着けたとしても、東海第2原発に残された時間は少ない。改正原子炉等規制法で原発の運転期間は原則40年とされた。橋本昌知事は毎日新聞のインタビューに「稼働期間と経費のバランスという点で、あまり経済的ではないと感じている」と答えている。その通りだ。
それでも、原電の頼みの綱は東海第2原発しかない。敦賀原発1、2号機(福井県)と合わせ原発3基を所有するが、11年6月以降はすべて停止中だ。敦賀原発は老朽化や活断層の存在で、再稼働は難しい。
原電は原発専門の電力卸売会社だ。売電収入はゼロでも、14年3月期決算は黒字を確保した。販売契約を結ぶ大手電力5社から設備維持などの「基本料金」として約1250億円を受け取ったからだ。東海第2原発を再稼働する姿勢を示さなければ、基本料金の説明がつかない。一方で、電力各社の負担は電気料金として消費者にツケが回される。
原電は日本初の商業原発だった東海原発の廃炉を進めている。こうした経験を生かし、廃炉専業会社への転換などを図るべきだ。電力各社の支援の在り方も問われる。
老朽原発の廃炉検討を表明する電力会社も出てきた。相次ぐ廃炉にどのような体制で臨むのか。政府も明確な方針を打ち出す必要がある。