時に、旅の終わりが物語の始めだったりします。
今月はじめ、私は西日本をウロウロと旅して来ました。
今回の記事は、変則的になりますが、旅の最終日から始まります。
山口県、福岡県、岡山県、島根県と旅した私の、最終目的地が広島県の尾道でした。
随分前から訪ねてみたいと思っていた場所です。
うどんの他に映画鑑賞を趣味とする私にとって、尾道は正に聖地でした。
尾道は、私が好きな映画監督、大林宣彦さんの故郷であり、
大林監督の作品には、この尾道を舞台にした素晴らしい作品があるからです。
「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」等など。
特に「転校生」(1982年)が好きで、この作品を見て、いつか尾道へ行ってみたいと思ったのです。
簡単にですが、ストーリーは以下の通りです。(Wikipediaより)
《 明るくクラスの人気者である斉藤一夫。彼のクラスに、ある日転校生がやってくる。
その転校生とは、実は幼いころ近所に住んでいた、幼馴染の斉藤一美だった。
一夫と一美は、学校の帰り道、ちょっとした弾みで一緒に石段を転げ落ちてしまう。
それによって、二人の身体と心は入れ替わってしまっていた。
つまり一夫の体に一美の心が、一美の体に一夫の心が入ってしまったのである。
帰宅してからそのことに気付いた二人は、自分たちの身に起こったことに戸惑いながらも、
ともかくそれぞれ相手になりきって生活を続けることにした。
しかし、当然男の子が女の子の生活に、女の子が男の子の生活に、
そう簡単に馴染むことができるはずもなく、二人は勝手がわからない中でそれぞれに苦労しながら、
協力し合い、助け合って乗り越えていく。
そうするうちにいつしか二人の心には、他のだれにも理解できない絆が生まれてきていた。》
初めて「転校生」を観賞してから23年・・・私はとうとう念願の尾道を訪ねる事が出来ました。
改札を抜けると、駅構内の観光案内所へ。
ここで映画のロケ地マップを受け取ります。
ロケ地マップを片手に、いよいよ映画の街へ潜入。
駅舎を出た瞬間から「転校生」のワンシーンを思い出す事が出来ます。
初めて訪ねた場所だけど、懐かしさで胸がいっぱいになって来ます。
海と山に愛されている街、尾道・・・。
目に入ってくる風景のすべてを、私は心の映写機で撮影します。
今にも映画の登場人物達が、道を、階段を、駆け上がって来そうで胸がドキドキします。
とりあえず私は、「転校生」の中で印象に残ったシーンのロケ地を目指しました。
ただ残念な事に、案内所で頂いたロケ地マップは大雑把なイラストで地図が描かれており、
このマップでは目的地の位置が特定しづらいのです。
ロケ地マップを頼りにしていた私は、かなり後悔しました、
こんな事なら事前にしっかりとリサーチしておけば良かったと・・・。
このマップだけではうまくロケ地巡りが出来ません・・・。
ただ、大林監督は「尾道では迷子になってほしい」と話されています。
「迷子を楽しむ」そういう事でしょう。
ですから、ロケ地マップが大雑把な地図なのも、
迷子になるように、意図して考えられたものかもしれません。
確かに、尾道では道が入り組んでいるところが多く、本気で迷子になります。
私はiPhoneを片手に、ナビアプリを利用しながら歩きましたが、それでも迷いました。
「迷子を楽しむ」その楽しさを、私はよく知っています。
ですが、今回は少し訳ありなのです・・・。
この日は台風が迫って来ていたので、夕方迄には帰宅したいと考えていたのです。
なので今回は、制限された時間の中で回らなければいけない・・・。
迷子を楽しむ余裕のない自分に腹が立つのと、迷子を楽しめないなら、
しっかりとリサーチしておけば良かったのに、それすらしていなかった自分に腹が立ちました・・・。
それから、尾道を最終日に訪ねたのは、大きな間違いだった事にも気づいたりしました・・・。
色々と後悔する事はある・・・、だけど、とにかく今日という日を楽しもう!
私は顔をあげ、前を向いて歩き出しました。
そして、道に迷いながらも何とか目的地に到着しました。
ここは「転校生」で、すごく印象に残るシーンを撮影された場所です。
「転校生」を一度でも観賞された方なら、下の画像を見れば解ると思います。
この階段を見て嬉しくなった私は、映画と同じように転がってみたい!そんな衝動にかられました。
本気で自分が転がっているところを自撮りしてみようかと思ったのですが・・・、
誰かに見られたらと思うと恥ずかしくなり、断念しました・・・。(^^ゞ
ロケ地マップとナビアプリを利用して、さらに歩きます。
階段を上がったり下がったり・・・汗だくになって歩きます。
いったい自分がどの位置にいるのか?
もうさっぱり分かりません。(^^ゞ
それでも何とか、ロケ地となった場所へ辿り着く事も出来ました。
見晴らしの良い場所へ出ると、少し強めの風が私の体を冷やしてくれます。
台風が目と鼻の先まで接近していることを、この風から感じとる事が出来ました。
尾道を訪ねたのは7月16日です。
日本中が台風11号の進路を気にしていた時期だったのです。
ふと時計を見ると、12時前・・・。
少し急がなければ・・・。
私は山を降りて海側へ向かう事にしました。
海へ向かう道中でも、映画のロケに使われた場所に巡りあう事が出来ました。
やはり楽しい・・・映画に出て来る登場人物達と、空間を共有しているような気がします。
そして海へ・・・ここは尾道水道です。
対岸の島は「向島」、あの島でも、映画のロケに使われた場所があります。
尾道から連絡船で3分ほどで行けます。
本当は渡りたかったのですが、如何せん時間が無かったので断念しました。
今回は悔いがたくさん残っています・・・。
気を取り直し、「転校生」で斉藤一夫の家として使われた民家を訪ねました。
作品の中と同じ光景のこの民家は、空家ではなく、しっかりと人が生活をされています。
ロケ地マップでも紹介されているので、たくさんの映画ファンが訪ねて来られるようですが、
人が生活されている場所なので、マナーだけはしっかりと守りたいですね。
そして、今回のロケ地巡り最後の場所へ向かいました。
「転校生」のラストシーンに使われた場所です。
斉藤一夫と斉藤一美の別れのシーンです。
心が入れ替わったふたりが、自分自身に戻れた後、斉藤一夫が引っ越す事になったのです。
ふたりが別れていくシーンはとても感動的なものでした。
そこで使われたセリフが、何年経っても忘れる事の出来ない言葉でした。
時代の風に乗って、シューマンのトロイメライが、どこからともなく心に流れてきました・・・。
シューマン/子供の情景 7.トロイメライ,Op.15/演奏:ブルーノ・リグット <iframe src="http://www.youtube.com/embed/i2K5-x2BgPQ?feature=player_embedded" frameborder="0" width="640" height="360"></iframe>
今回のロケ地巡りでは、かなり悔いが残ってしまいました・・・。
もっとしっかりとリサーチするべきでした。
もっともっと訪ねたいロケ地があったのに・・・見過ごすような結果に終わってしまいました・・・。
このままでは気持ちが収まらないので、9月にまた再訪します。
今回の尾道の旅は、映画の予告編のようなものです。
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