小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

年金制度の崩壊を防ぐ方法は一つしかない。第3号被保険者を廃止して第1号被保険者に移行すれば解決する。

2014-06-06 09:20:15 | Weblog
 年金制度の再構築が重要な政治的課題に浮上した。本来なら、とっくに手を付けていなければならない問題だった。
 もちろん厚労省も手をこまねいていたわけではなかった。が、現在はとりあえず維持できている「現役世代の手取り収入の50%以上」としてきた年金支給水準が早晩維持できなくなることは目に見えている。
 年金財政は5年に一度、100年先まで見通して点検することになっている。前回の2009年検証は、根本的に破たんした。そのときの年金制度の設計図では、積立金の運用利回りを名目4.1%、賃金上昇率は名目2.5%とした。「楽観的すぎる」という批判が集中したが、たまたまアベノミクスによって運用益はクリアしたが、賃金は今年のベースアップを入れても予測に届かず、12年度の保険料収入は見込みより3兆円余り下回った。そもそも5年先の見通しすら危ういのに、100年先を見通した年金財政の検討を行うというのはばかげた話だ。
 パーキンソンの法則というのがある。イギリスの歴史・政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソンが1958年に提唱した法則で、当時イギリス帝国が縮小傾向に入っていたにもかかわらず植民地省の職員数は増加に歯止めがかからない状況の観察から導き出した法則とされている。その状況分析から、パーキンソンは二つの法則を提唱した。
 第1法則:仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。
 第2法則:支出の額は、収入の額に達するまで膨張する。
 私はこの二つの法則に「第3の法則」を加えたい。ただし、「第3の法則」は日本特有のものかもしれない。世界中に共通する普遍的法則であることの検証はしていないからだ。ただ、おそらく世界共通の法則だろうと思う。
 第3法則:支出額を維持するため、財政が破たんするまで国は借金(赤字国債の発行)を続ける。
 メディアが調べようとしないのか、国や自治体が「特定秘密」として公表を拒んでいるのかわからないが、公務員(国家公務員および各自治体の地方公務員)の総数と税金を納めている現役世代の総数(国民及び各自治体の住民)の年度別比率が分かれば、第3法則は証明できる。少なくとも、EUの金融危機の原因となったギリシャの国家財政の破たんは、第3法則が現実化したケースといえよう。パーキンソンの時代には、国の税収が減少するということは、多分考えられなかったのだろうと思う。この法則に基づいて年金問題を考えてみたい。
 少子高齢化現象は、はっきり言えば税金を納めている現役世代の減少を意味する。だから年金制度も崩壊の危機に瀕しているのだ。
 少なくとも現役世代の減少に比例して公務員数を減少すれば、年金問題はかなり改善されるはずだ。そもそも公務員の仕事はかなりの部分がIT化されていて、現役世代が減少しなくても合理化できるはずだ。現に競争社会で存続をかけて闘っている民間企業は、IT化の推進によって合理化努力を続けている。日本産業界の収益改善の原因は、単に金融緩和による円安効果だけではない。
 財政の基本は、はるか大昔から「入(い)るを量(はか)りて出(い)だすを為(な)す」である。わかりやすく言えば、国家財政は税収に見合った歳出に納めるのが予算でなければならない。家計にしてもそうだが、給料などの収入に見合った支出に納めなければ、ほかの収入手段を求めざるをえなくなり、サラ金からの借金に頼ったり賭け事などに手を出したりすることになる。そういう形で急場をとりあえず凌ぐと、麻薬のようなもので、そういう状態が常態化し、いずれは生活破たんに追い込まれる。
 かつてバブル時代にも銀行はカードローンを発行していた。ただしサラ金の受け皿として現在の銀行が行っているカードローンとは違う。不動産を担保に貸出限度額を設定、その範囲内での借入れ・返済自由という制度で、高騰を続けていた不動産評価額に見合って貸出枠もどんどん広がっていった。金利も「確実な担保」があったため、住宅ローン+0.5%程度の低金利だったと思う。当然バブルの崩壊によって不動産の評価額が急落すると「返せ、返せ」と迫った。その督促は、サラ金まがいの状態だったようだ。
 サラ金が後に「グレーゾーン」といわれる高金利を設定したのにはそれなりの理由がある。無担保でリスクの高い相手に貸し出すのだから、貸し倒れリスクを金利に反映しないと経営が成り立たない。「グレーゾーン金利」が社会問題になりだしたのは、バブル崩壊以降貸し倒れが続出し、暴力団まで使って返済を要求するようになったのがきっかけである。根っこには、バブル景気の崩壊で貸倒率が想定していたより高くなり、経営が成り立たなくなったことにある。
 いま銀行(あるいは銀行の傘下に入って生き残ったサラ金)のカードローンの金利は3%台から上限の18%までと幅広く設定されている。「無担保低金利」を表面上はうたっているが、審査は相当に厳しく3%台の低金利で借りることができる人は事実上ほとんどいないのではないか。
 国が税収以上の予算を組むようになったのは高度経済成長期に入った1965年度である。この年の補正予算で赤字国債の発行を認める1年限りの特例公債法が制定され、戦後初めて赤字国債が発行された。その後10年間は赤字国債は発行されなかったが、75年度から89年度まで特例法による赤字国債を発行し、90年度から93年度までいったん発行額ゼロになったが、94年度以降再び発行されている。
 実は財政法4条で、赤字国債の発行は禁止されている。同条は「国の歳出は、公債または借入金以外の歳入をもって、その財源としなければならない」と規定している。ただし、同条の但し書きで公共事業などのための建設国債の発行は認めている。
 個人でいえば、資産となる住宅ローンは、借り手が無理のない範囲で組んでも、何らかの特別な事情が生じない限り破たんすることはない、という前提で銀行も低金利の貸し出しを行っている。また「特別な事情」として借り手(基本的には世帯主)の死亡による返済免除のために、ローン金利の中に団体生命保険料が組み込まれている。通常、売り手側(デベロッパー)が住宅ローンを組む金融機関を紹介する場合は、債務保証会社との契約が条件になる。が、国が発行する赤字国債の債務不履行を保証してくれる会社などない。極めて無責任な借金といってよい。
 国民の金融資産が国の借金より多いことで日本の財政破たんはない、などと考えている頭の悪い人がいるようだが、とんでもない錯覚である。国と国民の関係を親子の関係で考えてみれば、すぐ分かる。子供が裕福な親の資産を当てにして借金しても、親が何とかしてくれることはあっても、その逆はありえない。子供は親の介護をする義務はあるが、親の借金の肩代わりをするようなことはまず考えられない。
 同様に、国の借金を国民が肩代わりするようなことは絶対にない。国が財政破たんしそうになったら国民は自分の個人金融資産を海外に逃避させる。金融資産以外の資産(不動産などの固定資産)もすぐに売り払い、金融資産に変えて海外に逃避させる。貴金属類は銀行の貸金庫から引き上げて自分で管理する方法を考える。
 ギリシャの例がそのことを物語っている。ギリシャの国家財政が破綻に瀕したとき、富裕層は自分の個人金融資産をさっさと海外に逃避させた。国を救おうなどと考える富裕層は一人もいなかった。ギリシャの場合はEUが厳しい条件を付けながらも救済に乗り出したが、それはギリシャが財政破たんするとEUへの飛び火が避けられないからであった。実際、EUがギリシャの救済に乗り出したため、ユーロの価値が下落して一時EUの金融危機が国際問題になった。経済不況下にあったにもかかわらず、円高が続いたのは、ユーロから逃げ出した国際投機マネー(ヘッジファンド)が比較的リスクが少ないとみられていた円買いに回ったからである(言っておくが「円高」は国際基軸通貨であるドルとの交換比率で表示されるが、このときは「ユーロ売り円買い」によって相対的にドルに対する円の交換比率も上がったことによる)。その結果、さらに日本産業界がダメージを受けたのが、いわゆる「円高不況」である。安倍総理は、なぜ日本が円高不況に苦しんだのかがまったく分かっていない。
 ちょっと横道にそれたが、年金問題の解決も同様に論理的視点で考える必要
がある。もともとは厚生年金は従業員5人以上の企業が加入を義務付けられていた制度である。今は従業員数に限らず加入が義務付けられている。国民年金は自営業者や農林水産業従事者を対象にした制度として発足した。少なくとも収入のある人たちが加入の前提だった。が、1991年4月から無収入の学生でも、満20歳になった時点で加入が義務付けられるようになった。そうしないと、将来年金制度が崩壊しかねないと考えたからである。国民年金の加入者を第1号被保険者という。
 そのことはいい。私もそうだったが、子供が学生だった間は親が20歳になった子供の年金を支払ってきた。問題は、第3号被保険者に手を付けなかったことである。第3号被保険者とは、厚生年金や共済年金に加入している人(第2号被保険者)の配偶者(20歳以上60歳未満)で、年収が130万円未満の人である。第3号被保険者の保険料は、配偶者が加入している厚生年金や共済年金が一括して負担しているためと説明されている。これが「130万円の壁」とされている問題である。つまり収入が130万円以上になると第3号被保険者の資格を失い、第1号または第2号の被保険者に移行しなくてはならなくなるからだ。
 が、おかしいのは、では第3号被保険者の配偶者を勤務先に届け出た時点で第2号被保険者の保険料は配偶者の分まで負担するようになっているかというと、そうではない。保険料負担は独身時代と変わらないのである。厚生年金や共済年金が破綻するのは、無収入の学生にも第1号被保険者に強制加入させた時点で想定できたはずだ。
 いま厚労省は「130万円の壁」を崩そうとしている。壁をもっと低くしようと考えているようだ。そうなると企業が加入している厚生年金への加入義務の年収基準が下げられるため、経営者側は猛反発している。厚生年金の保険料は企業と従業員が半分ずつ負担しているからだ。つまり企業にとってはパートを長期間連続して雇用できなくなることを意味する。またパートの配偶者も年収の壁が低くなることで、働き方を変えなければならなくなる可能性も指摘されている。
 こうした制度矛盾は、いたるところで生じており、いわゆる縦割り行政によると言われている。年金制度での第3号被保険者制度と所得税法における配偶者控除がちぐはぐなのもその一つである。
 税制と年金制度の整合化を図ることが重要だが、とりあえず年金制度の改革については第3号被保険者を廃止すれば問題はかなり解決できる。つまり結婚して配偶者が仕事をやめた時点で無収入の学生と同様の第1号被保険者にすれば、自動的に国民年金に加入することになり130万円の壁も消滅する。パートは非正規社員であり、言うなら個人事業者である。いくら稼ごうと、収入に関係なく国民年金に加入するようにすれば、すべての年金制度の破たんを防ぐこ
とができる。それ以外に年金問題の解決方法はない。
 また第3号被保険者を廃止すれば、所得税法の配偶者控除との非整合性も解消するし、通勤費についての扱いの非整合性(通勤費は所得税法では年収から控除されているが、第3号被保険者の年収制限には含まれている)も解消する。5月21日から3回連続で投稿したブログ『「残業代ゼロ」政策(成果主義賃金)は米欧型「同一労働同一賃金」の雇用形態に結びつけることができるか』でも書いたが、今年の春、大企業で復活したベースアップは労働基準法に違反している。厚労省のキャリア官僚はそのことに気づいていないのか、分かっていても黙っているのか。ベースアップの労基法違反について何人かの経営者に聞いてみたが、みんな分かっていた。厚労省のキャリア官僚が分かっていないはずはない。ただ、民間企業の給与体系に特殊に存在する基本給という名目の基準外賃金は、たぶん公務員の給与体系には存在しないのだろう。だから「自分さえよければいい」で、民間企業の労基法違反に目をつぶっているとしか考えられない。