『対岸の彼女』角田 光代著
30代で専業主婦の「小夜子」は公園で娘を遊ばせています。 昔から人付き合いの苦手な彼女は、娘も遊びの輪に入って行けないのを見て自分を見ているような気分になっていました。 母娘は、公園ジプシーの毎日だったのです。 そんな生活が続いている中で、働きに出ることを決め幾つかの面接で断られ、やっと巡り合えたのはもう一人の主人公「葵」でした。
彼女は中学時代に「イジメ」に遭い横浜から群馬へ引っ越し、進学先の高校で知り合った魚子(ナナコ)によって変化していきます。 今では豪快で明るく、サッパリした性格の葵が社長を務める旅行会社に就職した小夜子でしたが、仕事内容は掃除代行でした。
「小夜子」と「葵」の話の運び方は、以前読んだ東野 圭吾の「分身」を思い出しました。 時が、環境が、人を変える?
「イジメ」はいつの世にも、世代にも変わらずあるものです「カタチ」を変えて・・・ 年齢を重ね色々見聞きし、人は変わっていくものでしょう。
自分勝手な解釈で葵の会社を辞めてしまった小夜子でしたが、社員の反乱?に遭って事務所を処分したという葵の自宅を訪ねて再び仕事をさせて欲しいと願い出るのでした(どんな仕事でもと・・・)。 葵がお気に入りの景色が見える窓を塞いでいる部屋の掃除から始め、偶然魚子(ナナコ)から葵に宛てた手紙を目にした小夜子は、川向う(対岸)に葵とナナコの姿を思い浮かべていました。