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ハロプロメンバーを応援してアイドル音楽を愛するエッセイブログ

アイドルミュージックレビュー ひとり街角/小泉今日子

2013-10-07 21:59:31 | アイドル etc

 私は最近、昔のアイドルの動画をよく見ています。YouTubeにはいろんな動画がアップされているおかげで、パソコンのモニタがプラウン管のテレビに変身します。「あまちゃん」の影響で昔のアイドルに興味を持った人もいると思いますが、アイドルというジャンルを音楽的なアプローチから楽しむのであれば最新のアイドルだけを追って楽しむというスタンスだけでなく、かつてのアイドルたちも楽しめるのではないか?そんな気もしています。
 先日、80年代アイドルについて検索していたら、「あまちゃん」を見ていた甥っ子に「この人たち(小泉今日子と薬師丸ひろ子)はどのくらい人気があったの?」と聞かれたのを機に、80年代アイドルについて的確な分析を書いている方のブログを発見して大いに刺激を受けて、自分も昔のアイドルの事を書いてみたい!と思い立ちました。

 そのブログです。
http://anond.hatelabo.jp/20130821065806

 このブログのコンセプトである「ハロプロを応援し、アイドル音楽を愛する」というものに忠実に、リアルタイムで知っている曲から、そうではないものまで、色々と書いてみようと思いました。
 そんな訳で、不定期にマイペースに書いていきます。第一回目は「あまちゃん」に出演していた小泉今日子さんの「ひとり街角」です。

ひとり街角 - 小泉今日子


 前述のブログに80年代アイドルは時代を象徴するものであった。松田聖子は経済面を象徴し、中森明菜は社会面を象徴し、小泉今日子は文化面を象徴するアイドルであったと書かれてあります。80年代に広がっていったオタク文化の中の一つに、方向性としてはオタク文化でありながらファッション的な切り口も併せ持つがゆえに、オタク的世界とは一線を画していたサブカルというムーブメントが生まれた。
 そのサブカル寄りに歩み寄った初めてのアイドルが小泉今日子であり、初めてセルフプロデュースの匂いを感じさせたアイドルが小泉今日子でありました。それは本当は優秀なブレーンが陰で支えた上でのセルフプロデュースであったとしても(ちなみに、代表曲である「なんてったってアイドル」の作詞は秋元康)、大人の操り人形ではないアイドルという見せ方を示しただけでも、新時代の扉を開けたアイドルという見方がされたのは確かでありましょう。
 まだ日本に本格的なPVが少なかった時代に、笑顔で水着なイメージ映像ではないSFチックなPV(迷宮のアンドローラ)を作ったり、そういう「他とは違う感」をうまく打ち出していたから激しい競争に負けずに後世まで名前を残し、21世紀も13年を経た現代の「アイドルをテーマとしたドラマ」にお声がかかる存在に成り得たのだと思います。

 そんな小泉今日子も、デビューして一年ほどの期間は他のアイドルと同じように「大人の操り人形」なアイドルでありました。上に貼った動画を見てもわかるように、当時絶大な人気を誇った松田聖子に似せた髪型、よくありがちなフリフリのドレスを着て歌っています。
 アイドルではなくなった大人の小泉今日子として活動をしてからのインタビューで、芸能界に入る前は優等生な子供ではなかった事をカミングアウトしている小泉さんですが、デビューにあたり芸能界のプロたちによるプロデュースで見事にフリフリの可愛いアイドルに変身したというわけです。
 楽曲的にもこれといった新味はなく、今聴くと古さを感じさせるアイドルポップスで、新曲ごとに様々な小泉今日子を見せていたその後の時代の作品に比べてインパクトも弱い。

 しかし、時代を変える刺激的なカルチャーというものは、その時代に体現するからこそ新しさも感じ、記憶にも残っていくのであって、それは時代を超えたスタンダードにはなりにくい。
 殻を破り続けてきた小鳥がさんざん破った殻はもうない。そんな今、私が興味をひかれたのは殻に閉じこもっていた時代の作品。動画にあるような初期小泉今日子作品です。

 この動画は人気番組「ザ・ベストテン」に初めてランクインした時のものである事が司会者の久米宏さんとのやりとりでわかります。一所懸命に笑顔を作りながら、喋り方もどこか必死に自分ではない自分を作ろうとしているようにも感じられます。そのぎこちない一挙手一投足が実にアイドルらしさに溢れていて可愛い。天野アキちゃんにも是非見てほしい映像です。
 今時のアイドルみたく激しく踊ったりせず、少し手を動かしたりするだけの振り付けも、アイドルとして表現出来る範囲を制限されていた時代を映す鏡のようにも思えて、でもその窮屈さがプロとしてのアイドルを美しく儚く表現しているようにも思えてくるのです。

 この曲から何年が経った頃に「なんてったってアイドル」と歌いながら、アイドルも人間であるという「アイドル人間宣言」をした小泉今日子の掟破りのメッセージも、新人時代にプロとしてアイドルをやりきった小泉今日子だからこそ許されるのであり、だからこそフリフリ時代の作品とセルフプロデュース的時代の作品がきちんと小泉今日子ソングの歴史として綺麗につながっていけるのだと感じます。

 懐かしの名曲特集みたいなテレビ番組で小泉今日子の歌を取り上げる時に、フリフリ時代の作品が取り上げられる事はまずないだろうけれど、この時代なくしてアイドルのプロ小泉今日子は語れないような気がするのでした。


 ひとり街角 / 小泉今日子
作詞:三浦徳子/作曲:馬飼野康二/編曲:竜崎孝路
(作詞は真野ちゃんやBuono!でお馴染みの三浦さん。作曲はBerryz工房のスッペシャル・ジェネレーション編曲の馬飼野さんです)


※ この不定期連載は筆者の趣味としてのアイドル研究をベースにして書いているものです。時には当時の状況とは見当違いの事を書く事もあるかもしれませんが、生暖かく見守りつつ読んでいただけたら幸いです。
 また、文中は基本的には敬称を略させていただいています。

コメント (4)
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