風が強くてシーカヤックツーリングを諦め、折り畳み自転車を使った、一畑電鉄で行く『松江と出雲のソバ三昧の旅』を終え、夕方宿に戻ってきた。
***
明日の、カヤック潮抜きと私の体を洗うための水を分けていただくことをお願いし、宿の外にある井戸水用のホースからタンクに水を詰めていると、女将さんが出て来られた。
カートップしてあるシーカヤックを眺め、『これはカヌー?』 『はい、そうです。 海用のカヌー、シーカヤックです』
『川用と海用じゃあ、違うんですか?』と聞かれたので、その特性や構造の違いについて説明する。
『今日は、これを漕いで浜でキャンプしようと思っていたんですが、風が強くて諦めました。 それで、去年、家族で泊まりにきたここに、電話したんですよ』 『そうですか。 なんだか見た事があると思いました』
『あそこの浜は、キャンプする人が多いんですよねえ』 『はい。 でも地元の方に聞くと、だんだん減っているらしいですよ。 高齢化も進んで、夏場の駐車場管理も難しくなったそうです。 今日も、シャワーはまだ使えませんでした』
『昔は時々、ビーチグラスを拾いに行っていました。 温泉もあったんじゃないですか?』 『ええ、それがもう何年も前にやめちゃったらしいです。 残念ですね』
『明日は漕ぐんですか?』 『ええ、そのつもりです。 風が止むと好いんですけど』
***
翌朝。 布団の中で目を覚まし、耳を澄ませたが、風の音は聞こえない。
ケータイを取り出し、天気予報を確認。 次に、ネットで風力と風向を確認。 うん、今日のコンディションは良さそうだ。
朝食を終え、荷物を片付け、7時前に宿を出る。
『お世話になりました。 今日は漕げそうです。 じゃあ、行ってきます』 『良かったですね。 いってらっしゃい』
***
クルマを走らせ浜へ。 うん、今日はいいじゃないか! まさに、『待てば海路の日和あり』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/bd/2249893627a3523eb5d9b395e93a48b5.jpg)
シーカヤックを浜に下し、飲み物と安全装備を積んで出発。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/1e/f1479bf36018a9570a12c84c396b3eca.jpg)
いつ来ても良い雰囲気。 日本海、さすがに海がきれいだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/88/bc099542557987c089c147d69779b3b3.jpg)
途中、箱眼鏡で漁をしている小さな漁船の傍を通る。 『おはようございます』
すると驚いたようにこっちを見て、『あー、びっくりした。 誰も居らんおもうとるけえ』 『スミマセンでした』
『どこまで行くん?』 『日御碕方向へ。 天気と気分次第です。 今日は波はどうですかねえ』 『昨日は風が強かったが、今日はええんじゃないか。 昼からは少し西風が吹くじゃろう』 『そうですか。 ありがとうございました』
***
この辺りは、テトラや護岸、建物など一切の人工物がなく、とても良い雰囲気の残る貴重な自然海岸である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/8d/90da9f661dd431ccc5450759e952d7a3.jpg)
5月連休以来となる日本海を快調に漕ぎ進む。 出発して1時間半ほど漕ぎ進んだ頃から、太陽に嫌な雲が掛かりはじめ、西風が強まってきた。
今日はここまでにして、帰りは洞窟巡りと、海上散歩を楽しむとするか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/90/c083f85cd4fd072c1f7b2da478a21894.jpg)
奥が明るい洞窟。 天井が抜けているのだ。 中に入ると、沢山のコウモリが迎えてくれた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/88/37fd43f1dac6b28582530bc203df1c96.jpg)
奥に入って上を覗き込むと、こんな感じ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/e2/f7a062adba03ed53cf48ff0a7ad3a35c.jpg)
入り組んだ半島を丹念に巡っていると、奥まった入り江に、とても良い雰囲気の浜を発見! ここはキャンプ場?
***
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/50/80e008e9c31618d65a78194414e1621b.jpg)
再び漕ぎ進むと、山から甲高い鳴き声が聞こえてきた。 最初は鳥が威嚇しているのかと思ったが、目を凝らしてみると、2頭の鹿(シカ)が、細い山道を駆け上って行った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/ec/6607988692586b8a510e7f1e91a2e51b.jpg)
小さな入り江に入り、カヤックを揚げる。 PFDを着け、水中眼鏡を着けて、しばし海中観察。
透き通った日本海の海。 小さな魚の群れ。 大きな鯛のような魚。 海草類。 水中を覗くだけで、別世界が楽しめる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/c2/aae02b19f44d63c9444f8e23ad430bce.jpg)
見た事がない、こんな不思議な(?)生物を発見。 ウミシダのようにも見えるが、手足のような部分をヒラヒラと自律的に動かしながら、海中を泳いで行く。 いったい、これは何?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/43/487f2f1b3428e9e991e85a53975500b4.jpg)
山陰らしい、静かで美しい、ちいさな漁村の風景。
***
朝7時半に出発し、約4時間のお散歩ツーリングを終えて浜に戻ってきた。
さすがに今日は土曜日。 海水浴に来ている人たちが何組か浜に居たので、邪魔にならないよう上陸。
道具を運んでいると、浜で話し込んでいた地元のおじさん二人組に話しかけられた。
『あのカヌーで来たんの』 『はい、そうです。 昨日も出そうと思うたんですが、風が強くて止めたんですよ』
『あんた、去年も来とったか?』 『ええ、ここは好きなんで、3年前から毎年夏に漕ぎにきよるんです』
『あんたあ、広島か?』 『ええ、そうですが』 『わしゃあ、昔船に乗って仕事しよって全国まわっとるけ、言葉を聞いたらどこの人かわかるんよ』
***
地元のおじさんの内の一人は、最初は内航船で仕事をし、その後上級の免許を取って外航船で仕事をしていたそうだ。
私もおじさんたちの横に座り込み、海を眺めながら話し込む。
『そりゃあ、すごいですね。 県民性とかも違いますか』 『そりゃあ違う。 同じ九州でも、○○県は△△。 □□県は人情が厚くて、すごくええ』
『外国は、どこらへ行かれよったんですか』 『グアムやハワイ、フィリピンが多かった』 『いろいろ行けて、ええですねえ』 『そんなにええこたああるもんか。 コンテナ船の荷物の積み降ろしいうたら、アッと言う間で。 着いた思うたらもう帰りの便じゃ』 『そうなんですか』
『でも、いろいろな国の食べもんは食べたよ。 でも○○○は食べんかったが!』 それを聞いて、もう一人のおじさんと私は笑いながら『えー、そうなんですか!』 『あんなもん食いよったら、○○○がとろけるけえのお。 危のうて』 『いやー、やっぱりそういうもんですか』
『わしゃあ、40年ほど船で仕事しよったけえ、今は遊んで暮らせるんじゃ。 時々、漁船で漁に出るし』 『今年はイカはどうですか』 『それが、あんまり居らん。 市場へ買いに行ってみい。 こんなんが千何百円するわい』
***
『それにしても、ここの浜はええですねえ』 『ええじゃろ、ここは自然の港じゃけ』 『そうですね。 でも冬はすごいらしいじゃないですか』 『そうよ。 あそこまで波が来るんじゃけえ。 昔は、波で運ばれたここの浜の砂が、あそこの川を塞き止めて、大水が出たとき大変じゃった』
『そんなに凄かったんですか』 『そうよ。 でも今は、山に木がいっぱいあるけえ、大水は出んようになったけどの』
『昔はなんで禿げ山だったんですか?』 『それは、木を、木材を切り出しよったからよ』
『いやあ、いろいろなお話が聞けて楽しかったです。 ありがとうございました』 『にいちゃん、また遊びに来いよ』 『はい!』
***
カヤックをカートップし、体を洗って着替えていると、シーカヤックを積んだクルマが一台やって来た。
帰りの準備が終わったので、その方のところへ。 『こんにちは』 すると、『こんにちは。 どちらからですか』
『広島からです』 『瀬戸内も、島がいっぱいあって良いところでしょう』 『ええ、でもこの時期は海水浴シーズンで、出せない浜が多いんですよ。 それで夏には毎年ここに来るんです』
お話を伺うと、その方は地元の方で、半年前に自艇を購入され、主に島根半島でのツーリングを楽しんでおられるとの事。
『ところで、ホームページとかやっておられますか?』と聞かれた。 『ええ、ブログですが。 瀬戸内シーカヤック日記です』 『それ、見ましたよ。 日御碕まで行ったりされていますよね』 『おはずかしい。 でも、ありがとうございます』
***
『じゃあ、帰ります』 『お気をつけて』
一畑電鉄、自転車、そしてシーカヤックで堪能した島根半島ツーリング。 今回も、宿の女将さん、浜のおじさんたち、そして地元のシーカヤッカーさんなど様々な出会いがあり、楽しい旅であった。
やっぱ、島根半島は好いなあ。