『また、ぜひお会いしたいですね』 『ええ、またここに遊びに来ますよ!』
宿を辞し、アテンザワゴンに乗り込んで次の目的地へと向かう。
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今日は鉄輪温泉に辿り着けばよいだけ。 いろいろと寄り道して峡谷の景色を楽しみつつ、海沿いへと下って行く。
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ある橋を見に行ったとき、せっかくだからと橋の中央まで行って下を覗き込んだ。
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『え! こんなに深い谷だったのか! 凄い景色。 いやあ、実際に歩いてみないと分からないもんだなあ』
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東岸に出てからは、海沿いの道を走る。
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景色も良く、快適なドライブ。 浜や海、湾の状態もチェックでき、これはなかなか良い下見となった。
ふむふむ、このあたりの海況は、こんな感じなんだ! やはり、宿のご主人のアドバイスを聞いておいてよかったなあ。
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午後3時過ぎ。 別府の鉄輪温泉に到着。
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今日の宿は、鉄輪温泉名物の貸間旅館である。
『いやあ、昨日の宿とは対極だよねえ』 『そうそう、あまり行った事はないけれど上品な宿はもちろん、貸間旅館でもバッチリOK』 いやあ、本当にこのコントラストは面白いものである。 あんな世界もあり、こんな世界も楽しい。
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荷物を置いて、『明礬温泉』へ。 妻も私も、明礬温泉の泥湯に興味を持っていた。 実際に行ってみると、『こんなにすばらしい温泉があったのか!』という感じ。
もちろん、島根の千原温泉も良いけれど、明礬温泉のディープかつ気持ちのよい世界はたまらない。
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途中のスーパーで買い出し、貸間旅館へと戻る。
妻は、『宿のおかみさんは、アサリと春キャベツがおススメだって』
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夕食は、まず鯛の地獄蒸し。
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そして、春キャベツと豚バラの地獄蒸し。 そして、炊きたてホカホカのご飯。 『うーん、これはお米が立っているねえ』
昨日お世話になった高千穂の宿とは別世界である。 昨日は、最高の食材をプロの方が調理してもてなして下さった。
それに対して、ここ鉄輪温泉の地獄蒸し料理は、なにより素材のおいしさを最大限に引き出すシンプル料理という点で、最高の夕食となった。
『あー、おいしかったあ。 ごちそうさまでした』 夜は、ドライブの疲れもあり、早々に熟睡。
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翌朝。 6時過ぎに起きると、まずは朝風呂へ。
先客は一人。 私より、少し年配と思われる方である。
『おじゃましまーす』で始まり、会話に花が咲く。
『ここの蒸し風呂、入られました?』とその方。 『いやあ、まだなんですよ』と私。
『ここです』 『入ってみましょう』
『ここね、入ったら熱くて熱くて。 とても入ってられないんです』 『いやあ、これが普通ですよ。 そんなに熱い方じゃないですね』
『瀬戸内沿岸では、漁業や農作業の疲れを癒すために、こんな岩風呂/蒸し風呂が発達したんです』 『そんなんでっか』
『広島の竹原近くにも、蒸し風呂がありますけど、もっと熱い蒸し風呂があるんですよ。 そこは水着着用の混浴ですけど、サウナより汗が噴き出して、気持ち良いもんです』
その後も、蒸し風呂の事、最近の不況の事、すこし気配がする景気回復の予兆などなどの話で盛り上がった。
予定より長くなった、貸間旅館での朝風呂の一時。 いやあ、なんだかんだ言っても、やっぱりなぜか話しかけられるんだなあ。 不思議である。
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朝食も、もちろん地獄蒸し。
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妻が朝風呂に行っている間に、私が準備。 いつも妻にはお世話になっているからなあ。
今朝は、昨日の残りご飯に水を足し、野菜と肉を入れて雑炊にした。 最後に溶き玉子を回し掛けて完成。
少しリッチでボリュームたっぷりの朝食。 『ごちそうさまでした!』
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帰り道も、寄り道三昧。
下関まで下道を走る途中、妻が『宇津っていったら、宇津神社がある所じゃない』と言い出した。
『これまでテレビで何度も出ていた。 有名な神社よ』とのこと。 『じゃあ、せっかくだから寄ってみよう』
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ここは、全国にある八幡様の元締めなのだそうだ。 おどろくほど広い敷地に、新緑の緑と、朱の建物が映える。
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ここからは、お昼ご飯を食べるお店を探しながらのドライブ。 直感と嗅覚だけがたよりである。
あるお店の前を通ったとき、看板は道路沿いに一つだけだが、店構えは上品で、昼の1時過ぎだというのに、多くのクルマが停まっていた。
『あの店、なんか良い感じだね』 『うん。 ちょっとUターンしてみようか』
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お店に入り、ラーメンを注文。 出てきたラーメンのスープをレンゲで一口すする。 『おー、これは美味い』
麺をつるつる、スープをゴクリ。 いやあ、これは本当においしいな。
今回の旅の〆となった、九州ラーメン。 東の横綱が、『朱華園/太華園』のラーメンなら、西の横綱は、ここのラーメンである!
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様々な人と出会い、高千穂の景色を堪能し、心にスッと入ってくる角川春樹氏の言葉と出合いった。
そして、おいしい料理を楽しめて、かつ同じ匂いのするご主人が居られる宿にお世話になり、翌日は正反対の世界である、鉄輪温泉の貸間旅館での地獄蒸し料理を、胃と心で堪能した。
妻が長年行きたいと行っていた高千穂であるが、様々な出合いに恵まれたことで、私もこれまで経験した事がなかったくらい、『あるくみるきく』を実行することができた。
『この旅は、本当に楽しかったなあ。 やっぱり、偶然の出合いが楽しいね』 妻と二人での『あるくみるきく_九州の旅』
いやあ、これは本当に、最高の週末であった。
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ちなみに、復路のアテンザワゴンの燃費。 満タン法で、14.0km/L! とうとう、14km/Lの大台を達成した。
10.15mode燃費を大幅越えである。 いやあ、これは凄いなあ。