あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 息子と飲む酒_おでんの『あわもり』

2009年09月09日 | Weblog
夕方、長男といっしょにバスで広へ。 向かうは、お気に入りの飲み屋であり、私にとっては唯一行き付けの店と言える『おでんのあわもり』

カウンターに並んで座り、いつものようにキリンビールの大瓶を注文。 おっちゃんが運んで来たグラスは二つ。 いつもなら苦笑しながら、『あ、グラスは一つでいいですよ!』と断るのだが、今日は長男と顔を見合わせてニヤリと笑うだけ。
静かに乾杯し、『おめでとう』
 
飲んでいると、おばちゃんが奥から出て来た。 私を見るといつものように、『あ、いらっしゃい』
歩きながらこちらの様子をしばし伺い、『もしかして、息子さん?』 私は、『そうなんですよ! 今日から解禁なんで、一緒に来ました』

『そう、良かったねえ。 今日が誕生日?』 すると、『はい』と恥ずかしそうに返事する。
『誕生日プレゼントは、あわもりだけじゃないじゃろう?』 息子は時計を指差し『これ、買ってもろうたんです』 『どれどれ。 ほー、こりゃええねえ』 『言うても、そがあに高いやつじゃないですけどね。 それに、先週末に家族で焼肉を食べに行ったんですよ』と私。
 
あわもり名物の『かわ(皮)』や、定番の厚揚げ、コンニャク、タマネギなどをつまみながら、ビールを酌み交わす。

彼が生まれてから20年か。 はやいものだ。
産まれたときはあんなに小さかったのに、今では私よりも二回りも大きくなった。 幼稚園の頃から『男はつらいよ』の大ファンで、寅さんに憧れていた彼。 小さい頃からカヌーに乗せ、二人で釣りに、サイクリングに、そしてキャンプに行った。

キャンプでは焚き火が好きで、火の世話をし、火を囲んでみんなで歌を歌い、焚き火の後始末をしていた。 テントで寝るより外に出したコットでシュラフに包まって寝るのが好きだった。 また水遊びが好きで、川や海に行くと、プカプカと浮かび、いつまでも楽しそうに遊んでいた。
カヌーも好きで、小学校の高学年以降は、妻や次男をタンデム艇の前に乗せて、川を下り、海を漕いでいた。 ほんと、頼もしかったなあ。 大雨の後、増水した江ノ川の激流をタンデム艇で下った時のことは、いまでも二人の語り種になっている。

中学生になり、クラブ活動で忙しくなってからは、一緒にカヤックを漕ぐ機会もほとんど無くなってしまったが、中学、高校ともに卓球部のキャプテンを務め、友人に慕われ、学生生活をエンジョイしていた。

開高健を思わせる風貌で、釣りバカ日誌の浜ちゃんのようなキャラクター。 我が家のムードメーカー。 仕事でも様々な教育を受けさせていただき、先輩方に教えていただきながら実務で経験を積んでいるようだ。

私たちは彼を育てたが、同時に私たちは彼に育てられたということも実感している。
 
おばちゃんや、いつもの常連さん達とも楽しい会話を交わしつつ飲む楽しいお酒。
『どう、あわもり飲んでみるか?』 『うん』
『おばちゃん、あわもり。 ラムネで割ってやって』 するとおばちゃんは、『ラムネで割るとねえ、飲みやすうなるけえ、飲み過ぎんように気をつけんさいよ』
***
『このラムネはどこのですか?』 『呉のラムネ屋さんよ』 『ほうですか。 私は、倉橋のラムネやのおっちゃんとは知り合いになって、時々買いにいきよるんですよ』 『あー、あの倉橋の。 時々テレビに出よるよねえ』 『そこです。 あそこのラムネを詰める機械はスゴいんですよー』

『このラムネはいくらですか?』 『うちはねえ、90円で出しよる。 儲けはないけど、おでんも一本90円じゃし、90円に合わせとったら計算が楽じゃろう』
『おでんもね、ネタによって値段を変えたら、いうてお客さんから言われるんじゃけど、そんなのできんよ。 面倒じゃしねえ』 ほんと、このおいしいおでんが、どれでも一本90円。 安いしウマいし、最高だ。 おばちゃん、本当にありがとう!
***
ふと息子の方を見ると、あわもりを全部、氷の入ったグラスに入れてしまったようだ。 『それ、濃いじゃろう』 一口飲むと、『うん、こりゃあキツい』
おばちゃんがグラスを取り、中身を半分ほど別のグラスに移して、減った分だけラムネを注ぎ足した。 『これで飲んでみんさい』 『あー、飲みやすいです。 ウマいです』

『じゃあ、そろそろ帰ろうか。 家でかあさんが、料理を作って待っとるけえ』 『ほうじゃね』
『おばちゃん、お勘定お願いします。 ほんま、今日は一緒に来れてよかったです』 『ほんま、よかったねえ』
***
楽しみにしていたこの日。 いきつけの『あわもり』で、おいしいお酒と楽しい時間を堪能した。 感慨無量である。

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