2009年12月26日(土) この週末は、両親も招待しての家族での忘年会。 場所は、周防大島の南側に位置する『沖家室島』にある『鯛の里』 ここは、一日一組限定で、新鮮な魚介類料理がとてもおいしい民宿である。
鯛の里を知ったきっかけは、数年前に、『ホクレア号船長のナイノアトンプソン氏がお世話になったという、カワノヨシオさんのルーツ探し』で、シーカヤック仲間と共に泊清寺を訪れた時にお世話になったこと。 それ以来お気に入りの宿の一つとなり、何度か通っては、おいしい魚料理を堪能させていただいている。
10月初旬に鯛の里の松本さんに連絡を入れたところ、今年はどんどん週末の予約が埋まっているとの話だったのだが、幸いな事に家族全員の予定が調整できそうなこの日はまだ空いていたので、すぐに予約を入れさせていただいた。
***
土曜日の昼前。 2台のクルマで周防大島へと向かう。
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昼食を食べ、大観荘でお風呂に入った後、3時のお茶にしようと言う事になり、最近お気に入りの『芋喰島』へ。
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コーヒーやみかんジュース、芋ティラミスや黒ごま芋タルトなどを堪能。
***
夕方、沖家室島へ入る。 少し早いので、クルマを停めて昔のメインストリートを散策した。
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瀬戸内の小島の漁師町ならではの風情を感じながらの散策。 ある空き家の窓からガラス越しに中を見ると、1960年のカレンダーが掛かっている。
うーん、これはスゴい! ここでは、約50年前のまま時間が止まっているのだ。
海沿いに出ると、漁港の端っこのスロープで、漁師さん達が焚き火をしておられた。 『こんにちは。 今日は大掃除ですか?』 『いやあ、わしらはいつも流木やゴミを集めて掃除しよるんよ。 ここにはえっと流れ着いてくるんじゃ』
『ところであんたら何しよるん』 『今日は、鯛の里に泊まるんですよ。 少し時間があるけえ、散歩しよるんです』 『おお、ほうか。 鯛の里。 そりゃええのう』 『わしゃあ、鯛の里のおやじの船で一緒に漁をさせてもろうた事があるよ』
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私は一人スロープに降り、一緒に焚き火にあたらせていただきながら話を続ける。 そんな私を、家族はニヤニヤと笑いながら眺めている。
『ところで今の時期は何が獲れるんですか』 『鰤(ぶり)。 大きいのは、8キロじゃ10キロじゃいうくらいのが釣れる』
『えー、ここで鰤が! 網ですか』 『いやあ、ここは一本釣りよお』 『今は正月前じゃから、値もええんでしょうねえ』
『そうそう、今が一番ええよ』 『釣って戻ったら、あそこの生簀に入れとくんじゃ。 後であそこへ行ってみせてもろうたらええ』
『8キロくらいの鰤ゆうてみい。 頭だけでこれくらいあるんで』 『ほうよ。 あの頭を二つに割って焼いたら美味い』
『知っとるか? 頭を二つに割るんは、普通の包丁でええ。 ちゃんとした場所に包丁を入れたら、そがあに力を入れんでもきれいに割れる』
『ありゃあのう、片刃の包丁じゃ駄目なんよ。 両刃の包丁じゃないと。 片刃じゃあ、だんだん傾いて入っていくけん、途中で引っ掛かる』 『わしゃあ、それを知らんかったけえ、前は斧を当てて木槌でガンガン叩いて割りよったよ』
『ほうですか! いやあ、そがな話は知らんかったですよ。 面白いですねえ』 『まあ新鮮な鰤を食うてみい。 そりゃあ旨いでえ』
***
家族が待っていなければ、まだまだ話を伺いたかったのだがそうもいかない。 『ありがとうございました。 じゃあ、あっちに行ってみます』 『あっちへ行って、あそこの人らが生簀の鰤を見せてもらえいうて言いよったいうたら見せてくれるじゃろう』 『はい、ありがとうございます』
生簀の近くに行き、そこに居られた方にお話を伺うと、生簀の鰤は全部運搬車の水槽に移したとの事。 残念!
すると、その方は水槽の覗き窓を開けて下さり、なかの鰤を見ることができた。 おー、いっぱい泳いどる。
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家族でしばらく見せていただき、お礼を言って再びクルマへ。
***
待ちかねた鯛の里での夕食。 忘年会の始まりである。 まずは『乾杯!』
高校生の次男は残念ながらまだお預けだが、二十歳になった長男は美味そうにビールを飲んでいる。
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『鯛の里』といえば、もちろん新鮮な鯛の刺身。 新鮮でコリコリである。 カワハギ(はげ)の刺身は、肝を付けて食べるとなんともいえない濃厚で奥深い味わい。 『おー、このカワハギの肝はほんまに美味い。 最高じゃあ!』
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一人一個の大きなサザエ。 とても大きな『オコゼ』の刺身。 刺身だけでも大満足である。
***
次に出てきたのは『ウチワエビ』 おー、待ってました! 松本さんは、いつも同じようなメニューで済みませんねえ、なんて言っておられたが、いつもと同じで嬉しいのである。 このウチワエビは、うちの家族にも大人気。
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ちょうど良い塩加減の、茹でたての大きなウチワエビ。 真ん中から半分に割ると、プリップリの身が!
松本さんは笑いながら、『いやね、鯛の里って名前を変えようかと思ってるんですよ。 このウチワエビが大人気でねえ。 問い合わせの時に、そちらの宿ではウチワエビが食べられるんですよねえって、よく聞かれるんです。 そのうち、鯛の里じゃなく、海老の里になるかも』 ほんと、それくらい旨いのである。
殻入れのボールには、みるみるウチワエビの殻が積み上がっていく。
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ころころサザエは、曲げる前の河豚釣り用針を使って身を取り出す。
***
アワビは、刺身とバター焼き、素焼きで。 刺身はコリコリ。 バター焼きは柔らかく濃厚で、ビールやご飯に合う。 素焼きはサッパリで焼酎にピッタリだ。
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アワビの肝、最高! 〆は、牡蠣も入った海鮮炊き込みご飯。 『ごちそうさまでした!』 大満足!
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***
食事が終わると松本さんも一緒になっての宴会が始まった。 おいしい芋焼酎『民宿、鯛の里』を飲みながら、様々なお話で盛り上がる。
夜が更けていくにつれ、まず両親が二階に上がり、しばらくしたらうちの家族も上がっていった。 そこからは、松本さんと二人で焼酎を酌み交わす。
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松本さんが子供の頃の賑やかだった沖家室島の様子や、民宿を始める事になった経緯、宮本常一に関わる事になったきっかけ。
昔からの小学校の卒業写真を集めたアルバムを見ながら、沖家室島の歩んだ歴史や子供達の数の変遷などを教えていただく。
沖家室島の漁港によく来ていたという『豊島の家船』の話。 お互い気が強かった沖家室島の子供達と、豊島の家船の子供達との、子供らしい意地や見栄の張り合いの話は特に面白い。 『豊島の漁師も遠くまで行きよったけど、沖家室の漁師は、あのちいさな船でハワイまで行きよりましたからね』 『確かにそうですよね。 昔の人たちのパイオニア精神はスゴいですよね』
宮本常一の話。 『それにしても、私の周りでも宮本常一を知らない人は多いですよ』 『宮本常一はどちらかというとマイナーだからね。 宮本常一ファンは、結構アウトロー的な人が多いかも』 『なるほど。 それってよくわかりますねえ』
郷土大学の話。 以前訪問されたという見島の話。 以前調査されたという貴重な資料、『老人から学ぶ島の漁法と魚の生態』について。 現代の漁業が抱える様々な課題についてなどなど、話は尽きない。
夜もだいぶ更け、酔いも回り、眠くなってきた。 そろそろダウン寸前。 『じゃあ、そろそろ寝ます。 ごちそうさまでした!』 おいしい料理とおいしいお酒、そして楽しくかつ興味深いお話を堪能し、大満足で床についた。
***
翌朝は、茶粥に味噌汁、おいしい漬け物。 そして、昨夜は食べきれないということで朝食に回してもらったアラ炊き。 甘辛い絶妙の味付けが最高だ。
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食後は、コーヒーを飲みながら『老人から学ぶ島の漁法と魚の生態』を読ませていただいた。 いやあ、これは本当に興味深く貴重な資料である。
***
『どうもお世話になりました。 ごちそうさまでした』 『また、遊びに来てください』
久し振りに訪れた『鯛の里』 両親も家族も大満足。 今年もまたまた最高の忘年会であった! 松本さん、ほんとうにありがとうございました、
鯛の里を知ったきっかけは、数年前に、『ホクレア号船長のナイノアトンプソン氏がお世話になったという、カワノヨシオさんのルーツ探し』で、シーカヤック仲間と共に泊清寺を訪れた時にお世話になったこと。 それ以来お気に入りの宿の一つとなり、何度か通っては、おいしい魚料理を堪能させていただいている。
10月初旬に鯛の里の松本さんに連絡を入れたところ、今年はどんどん週末の予約が埋まっているとの話だったのだが、幸いな事に家族全員の予定が調整できそうなこの日はまだ空いていたので、すぐに予約を入れさせていただいた。
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土曜日の昼前。 2台のクルマで周防大島へと向かう。
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昼食を食べ、大観荘でお風呂に入った後、3時のお茶にしようと言う事になり、最近お気に入りの『芋喰島』へ。
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コーヒーやみかんジュース、芋ティラミスや黒ごま芋タルトなどを堪能。
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夕方、沖家室島へ入る。 少し早いので、クルマを停めて昔のメインストリートを散策した。
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瀬戸内の小島の漁師町ならではの風情を感じながらの散策。 ある空き家の窓からガラス越しに中を見ると、1960年のカレンダーが掛かっている。
うーん、これはスゴい! ここでは、約50年前のまま時間が止まっているのだ。
海沿いに出ると、漁港の端っこのスロープで、漁師さん達が焚き火をしておられた。 『こんにちは。 今日は大掃除ですか?』 『いやあ、わしらはいつも流木やゴミを集めて掃除しよるんよ。 ここにはえっと流れ着いてくるんじゃ』
『ところであんたら何しよるん』 『今日は、鯛の里に泊まるんですよ。 少し時間があるけえ、散歩しよるんです』 『おお、ほうか。 鯛の里。 そりゃええのう』 『わしゃあ、鯛の里のおやじの船で一緒に漁をさせてもろうた事があるよ』
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私は一人スロープに降り、一緒に焚き火にあたらせていただきながら話を続ける。 そんな私を、家族はニヤニヤと笑いながら眺めている。
『ところで今の時期は何が獲れるんですか』 『鰤(ぶり)。 大きいのは、8キロじゃ10キロじゃいうくらいのが釣れる』
『えー、ここで鰤が! 網ですか』 『いやあ、ここは一本釣りよお』 『今は正月前じゃから、値もええんでしょうねえ』
『そうそう、今が一番ええよ』 『釣って戻ったら、あそこの生簀に入れとくんじゃ。 後であそこへ行ってみせてもろうたらええ』
『8キロくらいの鰤ゆうてみい。 頭だけでこれくらいあるんで』 『ほうよ。 あの頭を二つに割って焼いたら美味い』
『知っとるか? 頭を二つに割るんは、普通の包丁でええ。 ちゃんとした場所に包丁を入れたら、そがあに力を入れんでもきれいに割れる』
『ありゃあのう、片刃の包丁じゃ駄目なんよ。 両刃の包丁じゃないと。 片刃じゃあ、だんだん傾いて入っていくけん、途中で引っ掛かる』 『わしゃあ、それを知らんかったけえ、前は斧を当てて木槌でガンガン叩いて割りよったよ』
『ほうですか! いやあ、そがな話は知らんかったですよ。 面白いですねえ』 『まあ新鮮な鰤を食うてみい。 そりゃあ旨いでえ』
***
家族が待っていなければ、まだまだ話を伺いたかったのだがそうもいかない。 『ありがとうございました。 じゃあ、あっちに行ってみます』 『あっちへ行って、あそこの人らが生簀の鰤を見せてもらえいうて言いよったいうたら見せてくれるじゃろう』 『はい、ありがとうございます』
生簀の近くに行き、そこに居られた方にお話を伺うと、生簀の鰤は全部運搬車の水槽に移したとの事。 残念!
すると、その方は水槽の覗き窓を開けて下さり、なかの鰤を見ることができた。 おー、いっぱい泳いどる。
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家族でしばらく見せていただき、お礼を言って再びクルマへ。
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待ちかねた鯛の里での夕食。 忘年会の始まりである。 まずは『乾杯!』
高校生の次男は残念ながらまだお預けだが、二十歳になった長男は美味そうにビールを飲んでいる。
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『鯛の里』といえば、もちろん新鮮な鯛の刺身。 新鮮でコリコリである。 カワハギ(はげ)の刺身は、肝を付けて食べるとなんともいえない濃厚で奥深い味わい。 『おー、このカワハギの肝はほんまに美味い。 最高じゃあ!』
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一人一個の大きなサザエ。 とても大きな『オコゼ』の刺身。 刺身だけでも大満足である。
***
次に出てきたのは『ウチワエビ』 おー、待ってました! 松本さんは、いつも同じようなメニューで済みませんねえ、なんて言っておられたが、いつもと同じで嬉しいのである。 このウチワエビは、うちの家族にも大人気。
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ちょうど良い塩加減の、茹でたての大きなウチワエビ。 真ん中から半分に割ると、プリップリの身が!
松本さんは笑いながら、『いやね、鯛の里って名前を変えようかと思ってるんですよ。 このウチワエビが大人気でねえ。 問い合わせの時に、そちらの宿ではウチワエビが食べられるんですよねえって、よく聞かれるんです。 そのうち、鯛の里じゃなく、海老の里になるかも』 ほんと、それくらい旨いのである。
殻入れのボールには、みるみるウチワエビの殻が積み上がっていく。
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ころころサザエは、曲げる前の河豚釣り用針を使って身を取り出す。
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アワビは、刺身とバター焼き、素焼きで。 刺身はコリコリ。 バター焼きは柔らかく濃厚で、ビールやご飯に合う。 素焼きはサッパリで焼酎にピッタリだ。
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アワビの肝、最高! 〆は、牡蠣も入った海鮮炊き込みご飯。 『ごちそうさまでした!』 大満足!
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食事が終わると松本さんも一緒になっての宴会が始まった。 おいしい芋焼酎『民宿、鯛の里』を飲みながら、様々なお話で盛り上がる。
夜が更けていくにつれ、まず両親が二階に上がり、しばらくしたらうちの家族も上がっていった。 そこからは、松本さんと二人で焼酎を酌み交わす。
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昔からの小学校の卒業写真を集めたアルバムを見ながら、沖家室島の歩んだ歴史や子供達の数の変遷などを教えていただく。
沖家室島の漁港によく来ていたという『豊島の家船』の話。 お互い気が強かった沖家室島の子供達と、豊島の家船の子供達との、子供らしい意地や見栄の張り合いの話は特に面白い。 『豊島の漁師も遠くまで行きよったけど、沖家室の漁師は、あのちいさな船でハワイまで行きよりましたからね』 『確かにそうですよね。 昔の人たちのパイオニア精神はスゴいですよね』
宮本常一の話。 『それにしても、私の周りでも宮本常一を知らない人は多いですよ』 『宮本常一はどちらかというとマイナーだからね。 宮本常一ファンは、結構アウトロー的な人が多いかも』 『なるほど。 それってよくわかりますねえ』
郷土大学の話。 以前訪問されたという見島の話。 以前調査されたという貴重な資料、『老人から学ぶ島の漁法と魚の生態』について。 現代の漁業が抱える様々な課題についてなどなど、話は尽きない。
夜もだいぶ更け、酔いも回り、眠くなってきた。 そろそろダウン寸前。 『じゃあ、そろそろ寝ます。 ごちそうさまでした!』 おいしい料理とおいしいお酒、そして楽しくかつ興味深いお話を堪能し、大満足で床についた。
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翌朝は、茶粥に味噌汁、おいしい漬け物。 そして、昨夜は食べきれないということで朝食に回してもらったアラ炊き。 甘辛い絶妙の味付けが最高だ。
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食後は、コーヒーを飲みながら『老人から学ぶ島の漁法と魚の生態』を読ませていただいた。 いやあ、これは本当に興味深く貴重な資料である。
***
『どうもお世話になりました。 ごちそうさまでした』 『また、遊びに来てください』
久し振りに訪れた『鯛の里』 両親も家族も大満足。 今年もまたまた最高の忘年会であった! 松本さん、ほんとうにありがとうございました、