Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

99歳の気骨

2011-07-24 10:05:39 | その他
たまたま先週ブックオフで105円の文庫本をまとめ買いした。
その中の一冊が「ボケ老人の孤独な散歩」新藤兼人である。
赤坂、北青山、外苑など自分にも馴染んだ空気のエリアが登場
していて面白い。晩年の荷風についての性嗜好、市川から浅草
への日参暮らしを鋭利な監督的視点で考証する箇所には、何度
も笑いを誘われる。天麩羅が有名な「尾張屋」へ定刻きっかり
と同じ席に座る荷風、メニューは決まって「かしわ蕎麦」だ。
相当に体が弱っていて店の厠で大便の用を足している時に、ズ
ボンを脱いだまま卒倒して助けられるなんてシーンもある。

この日記は題と違って自意識があり余ってボケることのできない
新藤監督の頭と体というもののズレがとてもよく描かれている。
ちょうど、この本の後半を寝床で読みながら朝刊を拾い読みして
いたら、奇縁にも新藤監督のインタビューが登場していた。
今年で99歳だそうである。
最期の監督作品と宣言している大竹しのぶ主演「一枚のハガキ」
についての述懐記事だ。徴用にあったのが32歳、一緒に戦地へ
赴いた100人のうち生還できたのは、たったの6人で新藤監督
はそのうちの一人とのこと。お国のためなどと称した欺瞞をこの
老監督は何度も映像で告発してきた。テアトル新宿などで公開中
の「一枚のハガキ」、円熟期を迎えた大竹しのぶの演技を是非共
見たくなった。