歩いて10分もかからない所にひと昔前の世界的トップモデルとして有名な山口小夜子さんのお墓がある。そのお墓の近所に住んでいたSさんから聞いた話で場所は知っていた。そのSさんの消息も最近は聞かない。数年前の晩秋にSさんの敷地に成った渋柿を貰いに行ったことがある。日本で最古というテニスコートの脇の道を抜けて山手公園を降りれば近道と言う案内をされた時に教わった。M寺の敷地でも西側の外れにあたる陽当たりの良い墓地である。Sさんから「あそこだよ」と指指された小夜子さんの墓石は普通の墓地にある中くらいの平凡なもので何故か好感を感じた。但し、そのお墓が一際目についたのは鮮度の良い供花でいっぱいに囲まれていたことである。一度、碑面でも眺めさせて頂き拝礼でもと思っていたらとうに二年が過ぎている。
昨日は近所でカラオケスナックをしている顔見知りのママから突然電話がかかって来た。「自分のお店に寄ってビールを飲んでいる方に、オタクの事を話ししたら訪ねてみたいと仰っているが宜しいか?」という趣旨である。「模様替え最中で散らかっているけど少しならいいですよ」と答える。しばらくしてやってきた男性は未だ壮年期の容貌で山口小夜子さんの墓詣りに埼玉の川口から訪れたと言う。「山口小夜子さんのファンだったのか?」というこちらの質問でようやく事情が飲み込めた。墓地から山手公園沿いに降りてきた大通りに並ぶ鄙びたバーが目についたので寄った所がママさんのお店で初めてらしい。話によると美術専門学校を卒業した頃にある造形コンクールにオブジェ作品を応募したのがその方である。中国人アーティストの名を冠したコンクールにその方のオブジェ作品が入選したらしい。その時の選考委員が山口小夜子さんだった。それから20年経って春めいてきた陽気に誘われて漸くその時の恩義として温めてあった墓詣りが実現した次第ということである。
良い話しだと思って自分は「花がたくさん生けられていたでしょう」と尋ねたら「その通りです」という答えが戻って来た。熱烈なファンだった女性が花をいつも欠かさないで手向けているというエピソードを聞いた事を思い出したから。山口小夜子さんは幸せだな。と感慨したのはつい先だって読んだ大正期〜昭和期の琉球が産んだ異才詩人、山之口漠さんの剽軽な詩を思い出したからである。
漠さん流の「亡き子を偲ぶ唄」だ。未だ他界していない漠さんがあの世で小さい頃病死した子供と出会す。子供が憮然と不機嫌そうな顔をしている。何故だ?と漠さんが問うとお彼岸も近いのに美味しいものがちっともやってこない。という掛け合いの詩句で漠さんは畢竟、この世もあの世も同一だというシニシズムを謳っている良い詩である。生前の山口小夜子さんの容貌とプロポーションを想起すると、季節の花でお腹がいっぱいになりそうなタイプだが、彼も何か手向けたのか?と想像するのも楽しい。
昨日は近所でカラオケスナックをしている顔見知りのママから突然電話がかかって来た。「自分のお店に寄ってビールを飲んでいる方に、オタクの事を話ししたら訪ねてみたいと仰っているが宜しいか?」という趣旨である。「模様替え最中で散らかっているけど少しならいいですよ」と答える。しばらくしてやってきた男性は未だ壮年期の容貌で山口小夜子さんの墓詣りに埼玉の川口から訪れたと言う。「山口小夜子さんのファンだったのか?」というこちらの質問でようやく事情が飲み込めた。墓地から山手公園沿いに降りてきた大通りに並ぶ鄙びたバーが目についたので寄った所がママさんのお店で初めてらしい。話によると美術専門学校を卒業した頃にある造形コンクールにオブジェ作品を応募したのがその方である。中国人アーティストの名を冠したコンクールにその方のオブジェ作品が入選したらしい。その時の選考委員が山口小夜子さんだった。それから20年経って春めいてきた陽気に誘われて漸くその時の恩義として温めてあった墓詣りが実現した次第ということである。
良い話しだと思って自分は「花がたくさん生けられていたでしょう」と尋ねたら「その通りです」という答えが戻って来た。熱烈なファンだった女性が花をいつも欠かさないで手向けているというエピソードを聞いた事を思い出したから。山口小夜子さんは幸せだな。と感慨したのはつい先だって読んだ大正期〜昭和期の琉球が産んだ異才詩人、山之口漠さんの剽軽な詩を思い出したからである。
漠さん流の「亡き子を偲ぶ唄」だ。未だ他界していない漠さんがあの世で小さい頃病死した子供と出会す。子供が憮然と不機嫌そうな顔をしている。何故だ?と漠さんが問うとお彼岸も近いのに美味しいものがちっともやってこない。という掛け合いの詩句で漠さんは畢竟、この世もあの世も同一だというシニシズムを謳っている良い詩である。生前の山口小夜子さんの容貌とプロポーションを想起すると、季節の花でお腹がいっぱいになりそうなタイプだが、彼も何か手向けたのか?と想像するのも楽しい。
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