7月17日から能登半島地震で被災した金沢と奥能登を結ぶ自動車専用道の「のと里山海道」と「能越自動車道」が対面通行になることが決まり大幅な時間短縮が可能となった。特に震源からより近い「のと里山海道」の被害は大きく発災時に防災拠点の能登空港の孤立化を招くなどしたが、被災から3か月かかったものの奥能登方面への低速での一方通行が可能となっていた(ただし奥能登からは一般道迂回で戻らなければならず時間がかかっていた)。今や、はや震災から6か月である。
これは伊豆半島にとっても人ごとではありません。というのも、伊豆半島は能登半島のような自動車専用道の整備すら満足に出来ていないからです。
特に南海トラフ地震の被害想定で緊急車両でさえ1週間以上は不通になると想定されている天城峠区間の自動車専用道路は着工の見込みさえたっていません。
また、何十年後かに仮に整備されたとしても、行政が示す被害想定は、能登で実証されたように自然の力の前では、高規格道路とはいえ被害なしで済むなどというのは想定ですらなく希望でしかないからです。
特に、公共事業においては税金をもって整備するため最低限の技術指針はあるものの、知見の十分でない例えば液状化(まして能登で注目され始めた側方流動)のような事象への対策においては現実に追いついていないのですから。(国は昨年5月の盛土規制法の施行通知いわゆる技術指針において「開発事業等に際しては、開発事業等実施地区及びその周辺域において、地震時の液状化現象により悪影響が生じることを防止・軽減するため、液状化に対する検討を行い、適切な対策を行う必要がある。」「液状化地盤の判定は、標準貫入試験、スクリューウエイト貫入試験、コーン貫入試験等の地盤調査結果、細粒 分含有率試験結果、地下水位の測定結果等を用いて行うことを標準とする。」「十分締固めた盛土では液状化等による盛土の強度低下は生じにくいが、渓流等における高さ15メー トル超の盛土や火山灰質土等の締固め難い材料を用いる盛土については液状化現象等を考慮し、液状化判定等を実施する。」などとして随所で液状化問題についてようやく言及し始めたが具体的数値基準は不十分。)
好例は中部国際空港の埋め立て工事における不同沈下です。
今年2月の諸報道では、
「愛知県警は9日、中部空港(常滑市)に隣接する中部空港署について、地盤沈下が原因とみられる建物の損傷や傾きなどが確認されたため、来年春をめどに空港ターミナルビルに一時移転すると明らかにした。」
「県警施設課は「南海トラフ地震などが起きれば傾きが大きくなる恐れもあり、災害時の拠点活用は困難」と移転理由を説明する。」
「中部空港島は埋め立てで整備されたが、中部国際空港会社によると、空港のターミナルビルや滑走路などでは目立った損傷などは確認されていない。」
と場所によって大きな差が出ています。
なぜこういった差が出たのか。
空港島の空港施設地域はトヨタなどの民間が出資する空港会社が、警察署などの空港関連地域は県企業庁が、それぞれ埋め立て工事をしたからです。
空港会社は、関空を教訓に埋め立て土砂に専用セメントを混ぜた改良土を使って液状化対策を行なったのに対し、県企業庁はあくまで公共工事の基準に従った土砂の埋め立て工事をしたに過ぎないからです。
役所のやることだから安心だとか間違いないというのは、知見の乏しい災害対策においては大間違いです。税金で賄う以上、民間のように最先端の知見を取り入れお金をかけたりはできないからです。
である以上、伊豆も能登を教訓にして、天城峠より先は車両部隊の救援を1週間以上も待ちそこに期待するのではなく、孤立化・孤島化を前提として被災直後の救命・延命対策をこそ急ぐべきでしょう。
陸路も海路も遮断される中で自衛隊の車両が集まる防災拠点整備が重要などという想像力の欠如した防災対策を優先するようでは住民や観光客の生命は守れません。
元役人とはいえ土木畑出の市長松木正一郎、令和4年3月18日下田市長室で国交省から特定の場所(液状化危険度大の場所)を工事発生土で埋め立てて道の駅をという提案という名の事実上の指示を単に忠実に実行するだけのポチとして防災のためにあったらいいね程度のものを優先するのか、それともその前に市民の命を守るためにすべき多くのことを先に成し遂げようとするのか。予算も時間も余裕がない中、それがわからないようでは、はっきり言って、行政を預かるものとしては失格というべきでしょう。
(※なお、下田市は今日現在、公文書開示請求を行った令和4年3月18日の国交省の提示図面について、黒塗りでもなく、あるかないかも答えられないという極めて異例の対応をとって隠蔽している。国が示した新たな建設発生土処理場所としては箕作以外にも下田市街地を危険に陥れかねない谷と沢を埋め尽くす図面も含まれているとされる。)
(参考図:国交省伊豆縦貫道資料から)