静岡空港利用者数(搭乗者数)の推移
(注)開港初年については月ごとの発表のなかった上海便各月推計データを加味した上で5か年を比較したグラフです。
先日の大韓航空の4月からの休止でにわかに注目を集めた静岡空港。
新聞の中には特集が組まれるなどの中、静岡空港を取り巻くいくつかの事実が浮かび上がっている。
その中でも、静岡新聞が取り上げたのが、静岡空港の旗振り役ともいえる知事や県議でさえ海外公務での使用率は7割程度で、静岡空港から経由が可能な県議の欧米視察に至っては5回全てが静岡空港以外からだったことも明らかにされている。
一方で県は需要喚起とばかり、県民には経由便の利用を訴えており、空港建設を促進した側が経由便は不便だとして使わずに、空港建設に疑問をもっていた県民には使えというのは、いったいこの空港が誰のため、何のために作られた空港なのかと改めて疑問を禁じ得ない。
また、静岡空港の利用者構成が、全国平均の観光4割、ビジネス3割(その他は帰省等)に比べ航空会社の採算性の柱となるビジネス利用が少ない観光75%、ビジネス15%で、国際線にあっても同様の構成だという。採算性を確保するにはより高い搭乗率が求められる空港であるということであり、補助金なしでは路線の維持は困難な理由がよくわかる。
大韓航空関係者の「だれも静岡空港を好きになろうとしない」(読売新聞)、アシアナ航空支店長の「県民はなぜ、自分たちの税金を投入した空港を活用しないのか」(静岡新聞)との言葉は、この空港がどのようにして作られたかを理解していないで、単純に税金支援があり、人口もそこそこあるからとばかり参入したことを物語っている。
需要予測に多くの疑問が提起された中で、あるいはバラ色の嘘で塗り固めた幻想を県民に抱かせ、あるいは強引な手法で疑問の声を封殺し、ようやく造ったはいいが、幻想は現実の前に大敗し、強引な手法で進めた当事者は無責任を決め込む。このような事実を知った上でこの空港を好きになるという人がいるとすれば、もはや社会正義という言葉は死んだも同然である。
今後我が国の人口は急速に減少するだけでなく、高齢化率も進む中、海外路線での競争力の劣るこの空港に未来はない。
以下、開港5年目の8月目となる1月実績に基づき傾向を概観する。
<傾向等>
1月実績は先月同様年末年始の日並びの良さもあって、現有7路線のうち1月として過去実績を更新したのは4路線あった。
一方で、かつて国際線の需要の牽引役であったソウル線にあっては依然として各月の過去最低を更新し続けている。
・路線ごとに見た過去5年間の1月実績のみで比較した順位と比率
札幌線5,504人 2位/過去5年(1位の平成22年7,235人に対して76.1%)
福岡線8,284人 2位/過去5年(1位の平成22年8,422人に対して98.4%)
鹿児島線2,569人 1位/過去5年(2位の平成25年2,114人に対して106.5%)
沖縄線6,348人 1位/過去5年(2位の平成25年7,545人に対して101.4%)
ソウル線8,251人 5位/過去5年(1位の平成23年18,026人に対して45.8%)
上海線1,605人 1位/過去4年(2位の平成25年1,565人に対して102.6%)
台湾線2,646人 1位/過去2年(昨年2,272人に対して116.5%)
また、総利用者は35,207人で過去5年間で第4位、ピークの平成22年に比べて76.5%であった。
搭乗率が一般に採算ラインの目安とされる65%を超えたのはソウル線の67.2%のみで、残る路線は60%をも切っており採算的には厳しい運行状況である。もっともソウル線にあってもアシアナ航空が70.5%と好調の反面、大韓航空は62.9%と対照的な結果となっている。過去の同月のピーク時からの比率で見ても、アシアナ航空が56.4%と半減程度なのに比べ、大韓航空は35.0%と3分の1程度に落ち込んでいる。撤退は限られた需要を争った末のアシアナ航空の勝利・大韓航空の敗北を象徴する結果ということが分かる。
また、5年間の推移(1月実績)を見てみると、
国内線が緩やかに回復し、伸びが落ち着き始めている中で、国際線、とりわけその主要路線というべきソウル線が低下の一途をたどっていることが見て取れる。東に成田空港と国際化した羽田空港、西には中部国際空港と、近隣の大空港に挟まれた静岡ならではの顕著な傾向が大韓航空の事実上の撤退となって現れたといえ、海外路線での競争力の低下は構造的に必然と見られるのである。
5年目の実績については、先月まで、45~50万人程度(県の平成25年度目標は70万人、これすら達成できないのに次期総合計画の目標は85万人で策定中)との推測をしていたが、当初は昨年比でやや上回っていた需要もここに来て下回り、加えて4月から大韓航空が撤退することもあって、47万人をも下回りそうな状況である。
以下、今月の実績を記す。
<平成26年1月の実績:対前年同月比>
路線:搭乗者数対前年同月比(H26.1/H25.1):搭乗率[H26.1;H25.1](赤文字は搭乗率が65%を下回っているもの)
札幌線:110.9%(5,504人/4,965人):[
50.4%;59.8%]
福岡線:110.3%(8,284人/7,508人):[
56.2%;52.5%]
沖縄線:101.4%(6,348人/6,259人):[
58.2%;75.4%]
鹿児島線:106.5%(2,569人/2,412人):[
53.1%;51.2%]
国内定期便計:107.4%(22,705人/21,144人):[54.8%;59.4%]
国内線チャーター便計:-%(0人/0人):[-%;-%]
国内線計:107.4%(22.705人/21,144人):[54.8%;59.4%]
ソウル線:70.3%(8,251人/11,742人):[
67.2%;63.2%]
上海線:167.2%(1,605人/960人):[
53.7%;28.9%]
台北線:116.5%(2,646人/2,272人):[
55.8%;51.4%]
国際線定期便計:83.5%(12,502人/14,974人):[62.5%;56.9%]
国際線チャーター便計:0.0%(0人/268人):[-%;97.8%]
国際線計:82.0%(12,502人/15,242人):[62.5%;57.3%]
全路線計:96.8%(35,207人/36,386人):[57.3%;58.5%)]