「県政オンブズマン静岡(静岡県庁の光と闇)~よりよき未来のために~」管理人のブログ

注)teacupブログから移転の2022年5月以前の投稿には、文字コードの違いから多くの文字化けがあります。

請求受理のお知らせ

2013-08-27 20:23:00 | 近況活動報告
本日、県監査委員会事務局から連絡があり、住民監査請求を受理し監査を行うとの連絡を受けましたのでお知らせします。
本日の県の報道発表資料(記者提供資料)中にも掲載されています。

また、事務局担当から、ここで参考として紹介した損害額推計の中の適正推計額の算出根拠を知りたいとの事でしたので以下に示します。(巻末にはエクセル表も添付しました。)




なお、陳述日は来月17日となっています。
その際は参考としてこの試算に触れますが、損害の有無の蓋然性の根拠としてであり、精査の必要性を伝える趣獅ニしての陳述にとどめたいと思っています。(=この推計損害額を処理すべき対象と限定しないということ)

おって、県の職業・氏名公表により闇から表(舞台)に出てしまいましたので、本日から「闇奉行」から「管理人 鈴木浩伸」へ、表記を改めましたので御承知おきください。

<計算書>
keisan.xlsx

<計算の元資料(県設計額)>
8月12日投稿の中の書証4の6枚目

住民監査請求事件の説明補足及び損害額推計

2013-08-25 12:53:00 | 近況活動報告
先日、「手口や意味合いは大きく異なります(この点については後日明らかにします)」と述べたところですが、分かりやすくするために、以下に今回の監査請求対象事件の経過をまとめましたので公開します。



これを見ていただければ分かると思いますが、この事件は単独犯というには無理があり、出納局などのチェック機関が違法を知りながら黙認しているなど組織ぐるみの不正であるということが、先に報道のソウル事務所不正経理と大きく異なるところです。
また、その経緯と手口の相違から中止に係る損害額以外の損害が分かりにくいことも特徴です。

そこで、以下に本事件の損害(過大)推計額をまとめました。
ただし、今回のように事業実行後の契約金額合意というケース(金額を聞かずに料理を食べた後に高い金額を請求されるようなもの)では適正額の算定は難しく、実際、住民訴訟ではこのように公正な競争を前提とする金額よりも高額な金額で請負契約を締結した蓋然性が高く金額算定が困難なケースでは、民事訴訟法第248条を適用して損害額を認定する例が増えています。
もっとも、この際の損害額認定については、個別事情を考慮し額が控えめな判例が多いものの、一方で「民事訴訟法第248条によって認定すべき損害額は、存在する資料等から、ここまでは確実に存在したであろうと考えられる範囲に抑えた額ではなく、むしろ存在する資料等から合理的に考えられる中で、実際に生じた損害額に最も近いと推量できる額をいうものと解すべきである」(東京地判平成19・10・26判時2012号39頁)との判示も近時出るなどしているため、以下に推計した損害額は(業者側の支出の個別事情を考慮したものではなく)あくまで情報公開で入手した資料からの合理的推量によって算出したものとなっています。


追伸
今日現在、本件の受理連絡はありませんが、県から氏名が公式に出た以降は、これまでお断りしていた取材等に応じるとともに、コメントなどの実名掲載を可とします。

<画像のpdf版>
事件経過.pdf
適正額推計.pdf

県ソウル事務所でも不正経理、受け継がれる県の悪しき組織風土

2013-08-21 21:09:00 | ノンジャンル
昨夕のニュースと今日の新聞でご存知の方も多いとは思いますが、県ソウル事務所勤務の県職員による不正経理が明らかになりました。

県外の方のために要約すると、
本年度、視察などの使う車両の借り上げ代金を契約書類を作成せずに支払い、後に契約書を作成していたということです。
さらに、私的な飲食代を公費でまかなっていた疑いもあるそうです。
さらに会計報告の現金残高と実際の保管現金が一致しないなどのずさんな経理実態もあるそうです。
本人は不正経理は認めているものの、着服や私的流用は否認しているようで、県が現在も調査しているということです。

着服疑惑は別にして、この不正経理は現在住民監査請求の不正経理と契約書後回しなど似ていますが、手口や意味合いは大きく異なります(この点については後日明らかにします)。とはいえ、本質的なものは共通しています。
それは、公金に対する意識の希薄、敷衍すれば県民不在の行政態度です。
限られた予算を(自己の利得や保身のためにでなく)県民のために使おうと思えば、おのずから無駄を排除し、いかに県民の利益となるよう効果的に使うかを考えるところでしょう。
たとえ小額であっても、どんぶり勘定で公金を支出するなどということは決して出来ないはずです。

しかるにこのソウル事務所の職員や不正にどんぶり勘定で事業をさせ相手の言い値で支払った文化政策課の職員には、こういった意識はないのでしょう。
はっきりいって公金を扱う資格はない人たちです。
無駄な公共事業をしても平然としていられる人もまた同じです。

ゆえに、本県で繰り返される不正経理と無駄な公共事業は同根です。

県は不祥事の起きるたびに対症療法的というよりも言い訳的な研修などで禊とし、本質的な問題はなおざりにしてきました。これでは悪しき組織風土は改まるどころか強まるばかりです。
残念ですが、県が破綻するまで止むことはないのかもしれません。
そして我々にできることはもぐらたたきでしかないのかもしれません。
でも何もせずに目を背けていいのでしょうか。
本を正さず末に走りし者らに何を期待しようというのでしょう。
我々の未来は我々で築くべきです。
ゆえに、その志あるものは、自らの意思を容とすべきです。

県実績誇張への疑義、公開質問と回答の紹介

2013-08-14 22:00:00 | 近況活動報告
引き続き高いアクセスをいただいておりますが、本日は監査請求とはまったくの別件です。
一昨日12日に県からの回答があったので紹介するとともに、問題提起しておきます。

8月4日の静岡新聞の報道で本県の耕作放棄地解消実績が素晴らしいかのように報道されたわけですが、この虚構のからくりを暴き、もって、ごまかしの実績ではなく、現下の耕作放棄地問題の本質に真摯に向き合って、その解決に取り組んでほしいというのが趣獅ナす。

<県への質問>
県が解消を目指す耕作放棄地の定義について
8月4日の静岡新聞において耕作放棄地の解消が報じられたが、これに先立つ昨年2月の県議会においても県は耕作放棄地の解消について解消実績を答弁しているところ、これらの中で県が解消したとする耕作放棄地の定義が農業センサスの定義「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽狽ケず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と同じであるのか異なるものか、異なるとすればどのような定義で用いているか、県政運営の評価にかかわる重要な定義であるので御明示ください。
また、具体的に以下の場合を耕作放棄地の解消と考えているかお答えください。
1 センサスでいう耕作放棄地の草を1回刈り耕作可能な状態としたが具体的に耕作の意思ある者がなく耕作が見込まれない場合
2 センサスでいう耕作放棄地を耕作可能な状態に復さないまま肥矧ヌ理もしないで養蜂の蜜源として利用する場合

<県からの回答>
県政オンブズマン静岡 様

この度は、「県民のこえ」に御質問をいただき、ありがとうございました。
御質問をいただいた耕作放棄地の定義について、担当の農業振興課から回答いたします。

耕作放棄地の現地調査は、市町・農業委員会が行う農地利用状況調査と併せて実施することとされており、農地法第30条の「現に耕作の目的に供されておらず、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる土地」を耕作放棄地と位置付けております。

そして、農地法の運用に基づき、過去1年以上作物の栽狽ェ行われておらず、当該農地の所有者の農業経営に関する意向のほか、草刈や耕起等農地を常に耕作し得る状態に保つ行為が行われているかにより、市町・農業委員会が耕作放棄地であるか否か及び耕作放棄地が解消されているかを判断しております。

なお、地権者が行う草刈は、農業委員会などの指導により、所有者自らが維持管理する行為であり、農村景観の維持や不法投棄の未然防止など、農村の生活環境の保全につながることから、耕作放棄地の解消の1つである「保全管理」として扱っております。

また、一部地域において、養蜂農家が耕作放棄された柑橘園に一定の管理を施した上、蜜源として利用しておりますが、市町・農業委員会において耕作放棄地の現地調査結果を基に、解消として取り扱うか判断いただいております。

耕作放棄地の発生は、周辺農地の営農に支障を来たし、農村の生活環境の悪化につながることから、県は今後も関係機関と協力して、解消を進めてまいりますので、御理解と御協力をお願いいたします。


<当方が指摘する県回答の問題点>
①「耕作放棄地の現地調査は、市町・農業委員会が行う農地利用状況調査と併せて実施することとされており」

ここでいう「耕作放棄地の現地調査」は平成23年年度まで行われていた国の「耕作放棄地全体調査」のことをさしているが、国は平成24年度から「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」と名称を改めた。
理由は国の平成24年12月26日付けの「耕作放棄地全体調査要領の改訂について」によれば、国民から見て分かり難いとの指摘を受け、「本調査における「耕作放棄地」(不作付地を含まない)と農林業センサスにおける「耕作放棄地」(不作付地を含む)との違いについて明確化」を図るための名称変更である獅ェ示されている。
すなわち、県がこの「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」(旧名称「耕作放棄地全体調査」)の解消実績を耕作放棄地の解消と捉えているならば、まさに農林業センサスにおいては依然として「耕作放棄地」である「不作付地」のままにもかかわらず「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」(旧名称「耕作放棄地全体調査」)では荒廃農地から耕作可能な不作付地になれば、解消の扱いに変わってしまうと言うごまかしが引き起こされるのである。

②「農地法第30条の「現に耕作の目的に供されておらず、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる土地」を耕作放棄地と位置付けております。」

農地法に基づく農地利用状況調査の対象たる同法第30条に規定の状態にある農地は「遊休農地」と農地法上定義されているものであって、「耕作放棄地」と定義されるものではない。農地法には耕作放棄地の文言は使われていない。県がこのような定義で使っているとすれば、他県との比較など不可能なオリジナルの定義でしかないことになる。

③「市町・農業委員会が耕作放棄地であるか否か及び耕作放棄地が解消されているかを判断しております」

現実には県の定義に基づく数字を県の要請で計上しているのであって、市町・農業委員会が耕作放棄地の定義を選択しているわけではない。本来の農林業センサスにおける「耕作放棄地」(不作付地を含む)の意味で計上しようにも、そういう数字は県から求められていないのであって責任転嫁に等しい。

④「地権者が行う草刈は、農業委員会などの指導により、所有者自らが維持管理する行為であり、農村景観の維持や不法投棄の未然防止など、農村の生活環境の保全につながることから、耕作放棄地の解消の1つである「保全管理」として扱っております。」

「保全管理」を耕作放棄地の解消と言っているが、農林業センサスにおける「耕作放棄地」が不作付地を含む概念であることから、耕作のためでない農村の生活環境の保全のための保全管理は耕作放棄地の解消たり得ない。
また、「耕作放棄地」を県が定義するとしている農地法第30条規定の「遊休農地」と見ても、「農業経営に関する意向」(「農地法の運用について」第3の2(1)(ィ))が引き続き耕作の目的に供されるか否かの判断の要素となっており、耕作のためでない農村の生活環境の保全のための保全管理は耕作放棄地の解消たり得ない。
まして、「荒廃農地」の定義を「耕作放棄地」として見たとしても、そもそも「地表部の草刈のみでは作物の栽狽ェ不可能な状態の農地」(「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査要領」2①)であるからこそ「荒廃農地」なので元々が耕作放棄地ですらないことになってしまい、解消も何もありえない。
ゆえに、県の見解は完全な誤りである。

⑤「柑橘園に一定の管理を施した」

そもそも農地の定義からして「土地に労費を加え肥矧ヌ理を行って作物を栽狽キる目的に供される土地をいう」(「農地法関係事務に係る処理基準について」第1①)のであって、単に下草を刈るだけの管理なら林地と変わらず、農地ですらない。農地に復元されていないのに耕作放棄地の解消とは到底言えない代物である。

⑥「耕作放棄地の発生は、周辺農地の営農に支障を来たし、農村の生活環境の悪化につながる」

それを言うなら、耕作放棄地というよりも荒廃農地のことであろう。そういう守勢的な姿勢で耕作放棄地問題に取り組むならば、国が耕作放棄地の解消のために目指す農地利用の集約化や効率化はもちろん、耕作再開という本来的問題解決と向き合うことなく済まされ(ごまかされ)、不耕作地(農林業センサスにおける「耕作放棄地」)は増えていく一方だ。

以上
なお、県にあっては再反論があれば掲載しますのでお寄せください。

住民監査請求全文

2013-08-12 23:17:00 | 近況活動報告
本日、午前中の静岡での私用を終え、午後に提出して来ました。
すでに昨夜からのアクセス数が千件を超えるなど関心が高いようですのでワードからの一括コピペのため文字ずれ等があり読みにくいかもしれませんが、取り急ぎ以下に全文を公開します。

<全文>
静岡県職員措置請求書

静岡県知事に関する措置請求の要

1 請求の要
請求の対象となる財務会計上の行為
   平成24年度静岡県予算(文化・観光部企画調整費)に係る、県文化政策課において起案され平成24年8月21日に決裁された「支出負担行為伺」(支出負担行為番号459)に基づき平成24年8月20日付けで締結された「浙江省友好提携30周年記念書画展開催業務委託契約」(以下、「当初契約」という。)、及び、同契約に関連して平成24年11月29日に決裁された「支出負担行為伺(変更)」に基づく支出負担行為(以下、「変更契約」という。)、並びに、変更契約に基づき平成25年2月28日に行われた支出(以下、「変更後の契約に基づく支出」という。)。
請求の対象となる財務会計上の行為を違法又は不当とする理由
  ア 当初契約に係る違法
    地方自治法第234条第5項においては、地方公共団体の契約は「契約の相手方とともに、契約書に記名押印」したときに確定するものである視K定されている。
また、地方財務実務提要(ぎょうせい)においても、「契約の締結日を及して記載することの可否」(頁5829・107)について、遡及行為が地方自治法第234条第5項に反する視L述されている。
 これを本件当初契約についてみるに、地方自治法が規定する地方公共団体の長が契約の相手方とともに契約書に記名押印した日付は平成24年8月23日であるにもかかわらず、知事は契約日を平成24年8月20日と遡及して契約している違法がある。(書証:甲1,2)
  イ 変更契約手続きの違法及び変更契約内容の不当
    契約は地方自治法第234条各項に規定の手続きにより締結すべきところ、知事は、静岡県・浙江省友好提携30周年記念事業の一環として文化交流を育むとの目的で文化・観光部企画調整費(予算説明書:「文化・観光部施策の推進に必要な調査等を行う。」)を流用して事業化した「浙江省友好提携30周年記念書画展開催業務委託契約」の中に、当初契約締結・着手後において契約担当部署が企画した静岡県・浙江省友好とは目的を異にし、契約名称でもある「書画展」ですらない「静岡県のすごい産業遺産・輝く静岡の先人 パネル展」(以下、「パネル展」という。)に関する事業委託を、同法規定の手続きに違反し随意契約の理由の明示も予定価格の設定も契約金額を定める支出負担行為伺も経ることなく、あたかも、静岡県・浙江省友好提携30周年記念事業の一環として文化交流を育む目的を維持した「浙江省友好提携30周年記念書画展開催業務委託契約」の既契約部分にかかる内容変更であるかのごとく手続きし、実質新たな委託契約を違法に行った。(書証:甲3,4)
これについてその経緯を見るに、確かにこの新たな契約の申し込みに当たるパネル展に関する委託事業の追加は、当初契約で約した二つの作品展(「王伝峰作品展」及び「浙江省文史研究館書画作品展」)に関する委託事業のうち「浙江省文史研究館書画作品展」を中止したことに起因し、その代替として企画されたものと認められる(書証:甲3,4)ものの、そのことは地方自治法施行令第167条の2第6号に規定の競争不適等の随意契約の理由となるに過ぎず、パネル展開催に係る委託は財務会計行為としてはあくまで別の支出負担行為であり、契約書を一本化するか別葉とするかにかかわらず、当該別の支出負担行為に係る額を決定した上で契約し執行に及ぶべきは、契約が一定の法律効果の発生を目的として、複数の当事者が互いに相対立する意思表示を行い、それが合致することによって成立する法律行為であるとする契約の一般概念からも当然の理である。
よって、パネル展開催に係る事業委託に当たって、契約担当部署が契約金額の総額が「当初契約金額の範囲内での対応が可能」(書証:甲4)との理由からパネル展開催に係る事業委託金額を定めずに平成24年10月1日付けでパネル展に係る事業の履行を要請した(書証:甲3)ものであるが、これは、例えば当初の高額な仕様の物品Aが納入不能となり低額な仕様の物品Bで代用する際に同一業者への発注で当初契約金額の範囲内での対応が可能との理由から物品Bの金額を定めないままで納入させるなどということが認められないのと同様、パネル展に係る事業の履行の対価を定めずに(地方自治法第234条第5項規定の確定した支出負担行為(契約)なく)パネル展に関する事業の履行をなさしめたことは明らかに地方自治法第232条の3に違反した支出負担行為であり違法である。
 さらに、変更契約について、変更契約締結日は平成24年11月29日であるにもかかわらず、当該変更契約は既に行われた行為(10月10日から14日まで開催のパネル展開催に係る事業)の経費を補償する獅フ契約とはなっておらず、既に完遂した事業の(今後の)遂行という不能の内容を約した契約内容となっており(書証:甲4,5)、不当な契約である。
  ウ 変更後の契約に基づく支出の違法又は不当
支出の根拠となった変更契約を見るに、当初契約で約した二つの作品展(「王伝峰作品展」及び「浙江省文史研究館書画作品展」)に関する委託事業のうち「浙江省文史研究館書画作品展」に関する委託については開催中止を理由に変更契約では完全に削除され、支出の根拠を有しない契約内容(書証:甲2,5)となったにもかかわらず、同作品展に係る経費(利潤含む)相当の金員を同契約に係る債務が確定しているものとして支出している(書証:甲6,7,8)が、そもそもこの支出は、開催中止による補償(支出科目「補償、補填及び賠償金」)という受託業務の完遂に対する対価とは別の性格を持ち、契約当事者による精査を要する別の債務である。
これらのことから、地方自治法第232条の4第2項の「支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない」との規定に違背した違法な支出である。
また、前述アの契約日の違法に関連して、地方財務実務提要(ぎょうせい)によれば、「契約成立前において既に行われた特定の行為を当該契約上の行為とみなして契約条項を適用するという内容の特約をすることも法律上可能」(頁5829・104)とされ、「当該特約条項がない場合は、民法第705条の非債弁済として取り扱わざるを得ない」(同頁)と記述されているところ、当初契約においても変更契約においてもそのような特約条項は存在していない(書証:甲2,5)にもかかわらず、非債弁済との分別なく、前述のとおり一作品展の開催中止に伴う補償のための支出を混然と行った不当がある。
 さらに、一作品展の開催中止に代えて変更契約に新たに追加されたパネル展に関する契約部分についても、前述イのとおり、事業完了後に委託費額を決めるなどという違法な手続きで締結された契約(支出負担行為)に基づいて支出がなされており、これは「当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない」との地方自治法第232条の4第2項の規定に違背し違法である。
違法又は不当に財産の管理を怠る事実
   当初契約で約した二つの作品展に関する委託事業のうち「浙江省文史研究館書画作品展」については、開催の15日前の9月24日に展示書画を展示に供する事オていた浙江省文史研究館からの一方的な申し出により、同作品展の開催中止を余儀なくされた事情が、平成24年11月21日起案の「支出負担行為伺(変更)」文書(書証:甲4)から見て取れる中にあって、「浙江省文史研究館書画作品展」開催中止に伴う受託者の損害について、公文書上で認められる限り、県に何らの非(過失)がないにもかかわらず、県費から「浙江省文史研究館書画作品展」開催中止に伴う受託者の損害に係る支出がなされ、以降、何らの補填等の措置がなされていないで今日に至っている(書証:甲6,7,8)。
   このことについて、判例(最高裁昭和52年(行ツ)第128号)によれば「地方公共団体の有する損害賠償請求権は、法237条1項及び240条1項にいう地方公共団体の財産ないし債権に当たるものとみるべき」とされているところ、県と浙江省文史研究館との間には「浙江省文史研究館書画作品展」の開催に先立ち金銭負担を伴わないとはいえ契約(合意)が存在し、その契約の一方の当事者である浙江省文史研究館の事情から作品の提供の履行がなされず、よって、本県に損害を与えたと認められることから、本県は浙江省文史研究館に対する債務不履行に伴う損賠賠償請求権(同館との契約を行った職員に過失があれば当該職員に対する不法行為に基づく損害賠償請求権)を有すると認められる。
しかし、知事においては、当該請求権について今日に至るまで何らの対応の着手の事実も認められず、開催中止の起因者である浙江省文史研究館に対する損害賠償請求権に係る行使、和解又は免除等の財産管理上の正当な手続きを不当に怠っている不作為が認められる。
行為又は怠る事実の結果としての損害の発生
ア 主位的損害
前述(2)所論の違法又は不当な財務会計行為により、県支出額のうち「浙江省友好提携30周年記念書画展開催業務委託契約」中の「王伝峰作品展」に係る支出額相当を控除した額が現に県の損害と認められる。
イ 予備的損害
    主位的損害が補てんされない場合にあっては、開催中止となり発生した県支出額相当額について、前述(3)所論のとおり、浙江省文史研究館又は同館との間で契約を行った職員に対する損害賠償請求権に係る損害が認められる。
請求する措置
最高裁は住民監査請求の制度について、「監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は当該怠る事実の違法、不当を当該地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させることを目的とするもの」(最高裁昭和57年(行ツ)第164号)とし、「住民は、監査請求をする際、監査の対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して、必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り、措置の内容及び相手方を具体的に明示することは必須ではなく、仮に、執るべき措置内容等が具体的に明示されている場合でも、監査委員は、監査請求に理由があると認めるときは、明示された措置内容に拘束されずに必要な措置を講ずることができると解される」(最高裁平成6年(行ツ)第53号)と論じており、住民監査請求に基づく具体的措置の段階においては当該自治体における自治的裁量による解決が第一義たるべきと見ているものと認められる。
かかる趣獅・まえて本事件を観察するに、本事件に係る損害の発生については、その遠因として、当時の日中間の政治的事情によるところも推察されるものの、一方で本県県民がその損失を全額負担すべき道理もなく、これについては結局のところ政治的裁量判断を要する事情も認められるべきところ、地方自治法第96条第1項第10号において(損害賠償請求権等の)権利放棄が、同第12号において和解が、同第13号において損害賠償額の査定が、県民の代表たる議会の権限とされている事実も考慮した上で、包括的に以下のとおり請求するものである。
  <請求内容>
監査委員は知事に対して、違法な財務会計行為の事後的是正を行うとともに、是正によっても治癒できない瑕疵に基づく損害については当該瑕疵の原因者に対して損害の補てんを求めるべき獅フ勧告をなすべきこと。

2 請求者
住 所 
職 業 
氏 名                印

地方自治法第242条第1項の規定により別紙事実証明書を添え必要な措置を請求します。

平成25年8月12日

静岡県監査委員 様

事実証明書.doc
25k1.pdf
25k2.pdf
25k3.pdf
25k4.pdf
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25k6.pdf
25k7.pdf
25k8.pdf