
仕事の事務所が10月に引っ越して、お祝いに、大きな蘭が届いていた。
みんなで愛でて、花好きのお姉さま方がせっせと世話をしたけれど、そろそろ二か月になろうかという頃、冷房があたるあたりの花から、ひとつひとつ、茶色くなって落ちていった。
それから、みんなのお母さんみたいなカメリアさんが休憩時間にせっせと蘭を植え替えたり、なにやら毎日毎日お世話した。
三カ月くらい前に、謎の触手みたいなのが何本か伸びてきて、それは根っこだとカメリアさんが言った。
でも、これは違う気がする。と、そのうちの一本を指差した。
うーむ。とりわけ植物や動物に関心があるわけでもないわたしには、その違いはあまりわからなかった。
そうしている間に、一カ月くらい前、その一本から指の先っぽみたいなのが出てきて膨らんできた。
花芽だ!
そして、今週の月曜に花が咲いた。
9か月ぶり、二度目の蘭だ。
二度咲かせるのは、難しいのよ、と言いながら、カメリアさんが淡々とでもせっせと世話をする様子に、じつはわたしは
「コリャ、花咲くな。」
と、確信していた。
カメリアさんは、多分聖者ではないけれど(カメリアさんのマイッタなエピソードがものすごく人間くさいんです。いい意味で。)、ものすごい方で、
だから、逆に、窓辺に置いてある蘭からのカメリアさんへの「お母さんありがとう!」という愛情光線が事務所中に溢れてしまって、
だから、わたしは、一日中なんだかよくわからない幸せ感に包まれているのかもしれない。