1) COVID-19の救命率は昨年5月以降有意に改善したが、8月以降はほぼ変化なし
2) モノクローナル抗体バムラニビマブがFDAのEUA取り消し
3) 菅首相がバイデン大統領に五輪開催の決意表明
4) ドイツが新型コロナの感染警戒地域からイギリスを除外する
5) メルケル首相、アストラゼネカワクチンを接種
●COVID-19の救命率は昨年5月以降有意に改善したが、8月以降はほぼ変化なし
→現在の標準治療が、患者の生命予後を改善しているのか?という非常に重要な問いに答える検討です
怪しい不穏な流れはありながらも、RDVがFDAにEUA発行されたのは5月2日。
DEXがRCT(RECOVERY試験)で死亡率減少傾向を示したのは6月中旬で、その一気に臨床での使用が進んだと記憶しています。
そのうえで死亡率の時系列を見てみると、多因子なので断定はできませんが、この2薬剤が予後を改善した可能性を示す結果かと。
ただし2020年8月以降は、ほぼ救命率に改善が見られていない事も同時に示しています。
ステロイドの使い方を患者の重症度に応じて個別化し、超重症ではさらに強い免疫抑制をかける事に予後改善の道があるのではと個人的には推測します。
Mortality Among US Patients Hospitalized With SARS-CoV-2 Infection in 2020
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・本検討では、SARS-CoV-2に感染した入院患者の年齢別の院内死亡率の経時的変化を調べた
・後ろ向き検討。2020年3月1日から11月21日の期間に都市部や農村部の規模の異なる209の米国の急性期病院に1日以上入院した例のうち、入院前7日以内あるいは入院中にPCRまたは抗原検査を受け、退院または院内死亡の記録がある患者を解析対象とした。
・SARS-CoV-2感染は、入院前7日以内あるいは入院中の検査でPCRまたは抗原検査が陽性である場合と定義した。死亡率は電子的に入手可能なデータから抽出した。
(結果)
・入院患者503,409人のうち、42,604人(8.5%)がSARS-CoV-2の検査が陽性であった。50.7%が男性だった。・この陽性者の中では、65歳以上が最も多く(19,929人, 46.8%)、ついで50-64歳(11,602人、27.2%)、18-49歳(10,619人、24.9%)だった。
・18-49歳の入院患者は4月の20.7%( 1099/5319)から、6月に30.3%( 1266/4184)、7月には29.6%(2156/7280)と増加を示し、50-64歳の入院患者(6月28.5%, 7月28.0%)を一時的に上回った。
・SARS-CoV-2陽性患者は、陰性患者よりも院内死亡率が高かった(11% vs 2.5%, p<0.001)。
・両群とも院内死亡率は年齢が高くなるにつれて上昇した。陰性患者では18歳未満の0.4%から75歳以上で4.5%へ増加。陽性患者では18歳未満の0.2%から75歳以上で20.9%に増加していた。
・陰性患者の死亡率は男女とも同等であったが(3.0%vs 2.2%)、陽性患者では男性患者で死亡率が高かった(12.5% vs 9.60%)
・全体として、死亡率は3月から4月にかけて増加し(10.6%→19.7%)、その後11月まで有意な減少が見られた(9.3%, p=0.04)。高齢の年齢層での死亡率低下が著明だった(50-64歳:12.8%→5.4%, p=0.02, 65-75歳:22.8%→10.3%, p=0.006、76歳以上:36.2%→17.4%, p=0.03)。
・死亡率が低下した理由として、人工呼吸器患者のケアなどの臨床経験値の増加、腹臥位やステロイド(DEX)、レムデシビル(RDV)の使用が考えられる。
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・対象患者の年齢構成
月により若干の変動がありますが、概ね65歳以上が最も多く、18歳未満が一番少ない。
18-64歳までの年齢層は入院数はどの月も同程度と読めます。
・年齢別死亡率
丸が女性、三角が男性。
青が陽性者、オレンジが陰性者で表示されています。
陽性者死亡率が高く、陽性者では死亡率に男女差があることが分かります。
・各年齢群の死亡率の推移
全年齢で死亡率低下が見られています。
ただし、2020年8月以降は全く変化ないとも読めます。
●モノクローナル抗体バムラニビマブがFDAのEUA取り消し
→イーライリリーのLY-CoV555(bamlanivimab)です。
早期治療で使用して重症化を防ぐという目的で昨年11月にFDAからEUAが発行されていました。
その後、変異株に対する中和活性が低い事が判明し、3月下旬には米国政府よりすでに単剤での配布を中止されています。
エテセビマブ(LY-CoV016, Etesevimab)との併用ならOKです。
米FDA コロナ抗体医薬「バムラニビマブ」緊急使用許可取り消し
https://t.co/hq6HTaAzTy?amp=1
●日本の状況
→東京都の推移
東京都 新型コロナ 759人感染確認
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210417/k10012980781000.html
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都内で新たに759人が新型コロナウイルスに感染
都の基準で集計した17日時点の重症の患者は16日より2人増えて45人
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本日の全国の感染数・推移
大阪1161人、兵庫541人、神奈川247人、愛知230人、埼玉207人、
沖縄167人、千葉156人、福岡137人、北海道109人、
京都92人、奈良91人、宮城65人、茨城64人、長野57人、岡山53人、
徳島44人、愛媛43人、滋賀39人、岐阜38人、山口37人、群馬36人、
和歌山35人、新潟33人、広島32人、栃木30人
4月17日 新たに確認された感染者数
https://t.co/90gSdETBQF?amp=1
1日の死者数報告の推移
4/16までの累計死亡者数は9592人
直近7日の平均死亡数は32.4人/日。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/
→ドイツが新型コロナの感染警戒地域からイギリスを除外すると発表したようです。
イギリスは制限の段階的解除を始めたばかりなので、判断が早くないか?とも思いますが、それなりの分析結果からの決定なのでしょう。
コロナ警戒地域から英除外
https://t.co/3xJNslgY3e?amp=1
→メルケル首相、アストラゼネカワクチンを接種
ドイツは昨年11月より部分的、12/16からは全土ロックダウンを行っています。
その後、延長に次ぐ延長でロックダウンは5か月目ですが、現時点で患者は増加傾向。
もう頼みの綱はワクチンしかなく、アストラゼネカワクチンを打たざるを得ない状況まで追い込まれているのでしょう。
すでに血栓症の有害事象であることがほぼ明らかなアストラゼネカワクチンを、メルケル首相自ら接種して見せています。
https://t.co/Nj1jNLzM6T?amp=1
・欧州各国の患者数は一旦減少傾向になったものの、その後に増加傾向というパターンです。
これだけでは断言できませんが、イギリス変異株の拡大と関連があると考えるのは確度の高い推測かと思います
・欧州のワクチン接種率は12.9%とイギリスの1/4程度にとどまっています。
感染制圧に成功しているイギリスとの違いを考えると、やはりワクチン接種が望みの綱なのでしょう。
それがアストラゼネカであってもワクチン接種率を引き上げるという作戦につながるのだと思います。
さて・・・この状況下で、日本はベルギーからmRNAワクチンを順調に輸入できるのでしょうか?
しかも日本は「オリンピックを開催する事がコロナに打ち勝った証」と首相がコメントするほどの余裕です。
EUが日本へのワクチン輸出を止める口実には十分なりうるでしょう。
しかも日本はアストラゼネカワクチンが国産できる状況にあるのです。
日本はアストラゼネカワクチンを接種すれば良いではないか?と言われたら、政府はなんと反論するつもりなのでしょうか?
mRNAワクチンの確保はかなり厳しくなっているような気がします。