早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集 冬 2

2018-12-29 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集

定本宋斤句集 冬 2

春を待つ  孫や生まれし病みも居られず春を待つ
春 近   鶯飼へばある日の聲が春近き
      春近き入日とおもふ帆澤山
         橿原神宮寒夜参拝
冬盡く   御まへの松夜を優ぐれ冬盡くる
初霜    初霜のひとつ落葉に濃かりけり
霜     比叡いくたび西塔を知らず霜を踏む
大霜    大霜の臼のうへにもこぼれ炭
          映画 昔の歌試寫会
雪     絲竹に娘のやるせ雪降りて
雪     雪ぬくし丹の大塔の四方に侘ち
風花    風花か煤か暮光の川にあり
      風花や庚申こんにゃく人の渦
冬晴れ   冬晴れや村の峠の切り通し
冬日    冬の日や餅の簀干しの端の減り
      鶸の觜籠にて見れば冬目透く
          御所拝観
冬日    高御座かしこくも冬日明かりかな
          清滝にて
      掌に撫でして硯の齢冬日なる
冬日南   冬日南もたいなけれど屎をする
      冬日南ちりばめば蝶しろくゆく
      香薬師拝み出てより冬うらゝ
           仙洞御所
冬霞    冬かすみ松の枝間の醒花亭
      枯柳に眼をのばしつれ冬がすみ
時雨    蜆はまぐり時雨の市場貝ばかり
冬の星   道頓堀西へ帰れば冬の星
           西大寺ほとり
寒霞    寒かすみ大和はぬくゝ寺の掘