早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」大正十五年二月創刊号より 早春社創立俳句会

2019-08-06 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく


 早春社創立俳句会 
 丙寅七日正月 今宵露の天神社に早春社創立並びに雑誌「早春」の記念俳句会を開く。
定刻六時既に来客者座席に満ち、更に充満し堂に溢れその数百五十名、遅刻者約三十数名は座席なく或いは空しく引き返されたるを遺憾とするまでの盛会を呈したり。六時十分 司会者神田南畝氏、発会式の旨を告げ神官粛々と神前に出てお祓いの儀を施す。 
司会者の紹介で永尾宋斤氏は立って、最も簡単に、然も誠意と喜悦を面に現して、俳句及び「早春」の前途を祝福し、来会者に對する満腔の感謝を述べると共に、文学に由緒ある菅公神前に氏の榮ある學式と會号とを倶に記念すべき旨の所感を言ふ。南畝氏の開式の旨を告げ、新種乾杯の挙あり、鯣、昆布、勝栗のさかなに次いで 各自前に宋斤氏が早春の句を銀泥を以って一句一個に親しく染めてある土器が置かれている。来会者に敬意を表すためにその方名簿を朗読す<中略>
兼題「七草」と席題「炬燵」の俳句会が行われた。暫く賑に面して静寂たりし記念会は夜半十二時過ぎ閉会。

    七草 宋斤選
      野の七日行けばほのかな芽草の香  雪魚
      七草や霜いたみ葉をとかくして   雪魚
      朝焼けの雲の鳥たつなづな打    櫻草
      なづなつみかゞめば近き水の音   櫻草
      あかし碁に七草の粥運び来し    赤松子
      小溝飛び飛び手籠にみちしなづな哉 圭荷
      打ちそめに溢れてなづな青き哉   秋影
      引きまどに海あけかかりなづな粥  うらゝ
      なづな粥小餅七日のかたさにて   露時雨
      なづな打つ音蔵の扉にこたへけり  禾水
      なづな粥のぬくもりに店開きけり  艸十
      山畑の日うけなづなをはやしけり  雨城
      なづな摘むに日の暖かさ窪地哉   秋更
      雪しづれ竹にしてゐてなづな粥   野竹
      やぶくろの雲明かりしてなづなつむ 縣城

      かはらけのほとりの色になづな哉 宋斤