早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」昭和二年十二月 第四巻六号 近詠 俳句

2020-09-06 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
 
宋斤の俳句 「早春」昭和二年十二月 第四巻六号 近詠 俳句

枯草之稱 近詠

草枯れの廣きはてなる鳥あがる

枯草や紅の去にたる茎の斑の

枯れくさの日南晴れ晴れ空の無し

村の音かれ草原を平らかに

枯れ草の水にぎやかや夕来たる

かれくさの岬に立ちて水の天

枯れはてゝ直ぐなる草に我ならぶ

草枯れて戸口のぞくはほの親たし

あめつちのやすむすがたに草の枯れ

草かれに臥てのけぞって雲は往く

枯草のなかにも萠ゆる浦の日々

霧ぬくゝ枯れたる草の潤へり

行き消ゆる人等にしげし草の枯れ

枯草を彼も往くなる背をぬくゝ

かるゝ草朝に稱へつ盧を出づる

  楓の宵  広島

久仁来て楓の宵の蚊を叩く

島山の夏にとまりて開く梟

欄に立てば句ができ青楓

茂る麓の方へ燈多し

滴りをうしろに立つに夜の蝉

葉桜を燈に見上げ散歩かな

  蘇芳君を訪ふ

門涼みそれが蘇芳でありし哉

夜をあるく軍港町の残暑哉

公園や水平のあるく夏の宵

  早春社十一月本會

裏坂や松に時雨の一草廬   

山茶花や冬の初風海へふく

  水曜会(尼崎)

家の間にちりこむばかりの柳かな

  打出句會

木犀や空十月のおぼろ月   

  市民俳句會

鵙はれて家内なかるゝ山の水

  初島俳句會

暮れかての雨の田の色山の色