園子温監督最新作ということで、また テーマが"3.11を題材とした”ものだけに、世界からも注目を浴び
カンヌ映画祭、トロント映画祭などでは評価された作品。
園監督映画はレビューを書いてない過去作含め、1作以外は全部観てる。
過激な作風だとか、衝撃的な内容が多くて面白いけどとくにファンでもない。
それでも新しい作品が出たとなるとやっぱり気になる監督。
この作品を撮るにあたってのドキュメンタリーが先日NHKで放送されていて観てたので
だいたいはどういう内容か、どう描こうとしてるのかは輪郭はしっていた。
ある実際のご家庭をモデルに密着取材をして、そのお家で鑑賞会をして出来上がった映画を
ご家族の方に見てもらうというところ、その反応も映し出されていた。
それを観て、まぁ映画だからなんだけど やっぱり現実をラストには大きく衝撃的に変えていて
園監督やっぱり そういう風に持ってく要素をなにかいれてるの、それってどうなんだろうと不安に思いながらの鑑賞。
ほんとは結構前に観てたんだけどなんだか書く気がしなくて。
でも劇場で観た作品は漏れなくレビューしてるので書いとこう。
舞台は3.11の震災のあと、別の県でまた大震災の被害を受けた。
その原発付近に住む、普通の幸せだった二つの家庭、3組の男女を軸に話は進む。
舞台はあくまでもドキュメンタリーではないので、長島県という架空の県。
(広島、長崎、福島県を足したらしい)
酪農家の小野泰彦は、妻や息子夫婦と平和でつつましい日々を送っていた。
一方、お向かいの家の息子は家業を手伝わずに恋人と遊んでばかり。
ある日、大地震が 発生し一帯の住民は避難を強いられるが、お向かいの家は非難区域に指定され
退去を命じられ、泰彦の家は 残る方の境界線を引かれる。
が、しばらくすると結局泰彦の家も退去するように国から命じられるが
長く住み着いた大事な家を離れることができない。
そんな中、息子の妻いずみが妊娠していることが発覚する。
この泰彦演じる、夏八木勲さんがいい!
認知症の妻に大谷直子
息子夫婦を 園映画ではおなじみ村上淳と(監督の妻)神楽坂恵。
お向かいの非難した一家の父親に、また でんでん。
その息子とその恋人を清水優、梶原ひかり。
3/10(38点)
※あとから点数さらに下げました
ちょこっとネタバレ レビュー
今しかできない。という見方もあるかもしれないけど、
映画にするには早いんじゃないだろうか?
監督が、このテーマを覚悟の上で撮ったのは十分わかるし伝わるけど、
なんというか、そこに込められたメッセージというか
妻を認知症という設定にしたり、ラストを哀しい展開に変えて、より希望を持たせたい
だとか衝撃を与えるものにしたいという意図が感じられてわたしなんかは
あざとく思えちゃった。
原発問題、行政の問題、東電の問題、
今この国が抱えるさまざまな問題を巻き込みながら
裏では愛のメッセージを含むような描き方。
もちろんフィクションとして観るんだけど、実際に最近起こった出来事であり
皆が知っている現実に近い話であるから共感したり、反対にこんなもんじゃないと思えたり
当然、様々な感情を与えることになる。
神楽坂恵が演じる泰彦の息子の若い妻は、
子供を身ごもったと分かってから放射能恐怖症になっていき
突然、マスクを買い、防御服を着、完璧な装備で町を歩き、
スーパーでは野菜の放射能数値を機械持参でひとつひとつチェック。
そんな姿を町の人たちは笑い、大袈裟だと、この町を侮辱してるとまで言う。
夫ははじめはやめてくれと頼むが、次第に考えが変わる。
愛する人と自分の子供を守りたい、と。
お前達は出て行け、非難しろという父親を放っておけなくて
ギリギリ自分も出て行きたくないといいながら、母親の心配はぜんぜんしないのが違和感。
残したくないっていったって、わたしなら2人だけ残して町を離れることは出来ないな。
見殺しにして置き去りとおなじこと。
まぁ、でもこの映画の中ではそういう設定だから仕方ない。
泰彦の、妻への愛情。
後半へと徐々に強調されていく。
雪の中、どこまでいっちゃってるの?とつっこみたくなるほど
泰彦が車で後で追いかけてもはるか遠くまで歩いて行っちゃってた妻。
寒さの中、必死で探して見つけたとき
一緒に盆踊りを踊り、おんぶしてあげる姿は優しく、印象的だった。
だけどラスト近くの泰彦の行動はどうかんがえてもやりすぎ。
あれはないわ~。
衝撃を持たせるっていう意味でどかんとやるのはわかってたけどラストで興ざめ。
決心した泰彦は手に銃を持ち、牛小屋へ。そして、連発する銃声。
それは、まぁわかる。自分の育てた牛たちが、放射能を浴びて、もうお乳も価値がない。
それなら自らの手で、、、、。
その後、
庭の花壇の手入れをしてる妻に近づき
気持ち悪いほどの濃厚なキスをして、、、、
そして、、、、
園監督はインタビューで、考えるのではなく、感じる映画にしたかった。と言う。
そして、観る事で、体験した気になって欲しいとも言う。
観る事で体験なんて出来ないと思う。体験した人しかきっとわからないと思うよ。
そこで共感を求めたりするのもちがうと思う。映画は映画。
ドキュメンタリーではないし、
わたしはいつも映画として面白いか、ということで観るけど(もちろん全てがそういう作品ばかりじゃないけど)
NHKの撮影風景を追ったドキュメンタリーでは、
モデルにしたご家族に見せて、「あのラストはどうにかならないのか」と
家のご主人は言っていた。
園監督は「あの衝撃が必要なんです」みたいなことを言ってたけど、
確かに誠実になぞらえて実話、ということで撮った映画ではないし
映画的に変えるのは仕方ないだろうけど、こういう題材で、しかも人々に感じてもらうという
意味で撮ったのなら、いくら愛とはいえ、自らの手で命を奪うという行為はエゴだとわたしは思う。
圏外と圏内のギリギリの境界線で運命が変わったということをクローズアップして描いた
着目点は園監督らしいと思うんだけど。
ラスト、無事に産まれて来た子供と海辺で家族のシーン。
それでも人は、愛し合いながら生きていく。
希望と絶望。
国や行政に振り回される国民。そんなの信用するなと釘を刺しながら。
この映画を作った意図とは? 映画として中途半端にしか感じない作品だった。
園監督作は「愛のむきだし」と「冷たい熱帯魚」がやっぱり好きだな。
堀部圭亮、伊勢谷友介、大鶴義丹、吹越満などがカメオ出演。
希望の国
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