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人生100年の自転車旅 夢の中で

2015-10-06 11:34:42 | 自転車でコスモスの島へ

 

 9月13日

 

 層雲峡のテントの中で、テントを叩く雨の音に目を覚ましました。

 

 テントのチャックを開いて空を覗くと、層雲峡の狭い空が雨雲に覆われていました。

 

 「今日は休みなさい」と言うことかと悟り、もう一度シュラフの中に潜り込みました。

 

 腰の辺りに筋肉の強張りを感じます。

 

 大福餅と一口羊羹で空腹を紛らわし、ザックの底のジンを睡眠薬に午前中をシュラフの中で過ごしました。

 

 昼近くになって、雨が小止みになった隙をついてテントを畳み、上川方面に向けてはしり始めました。

 

 食料が底をついていたのです。

 

 上川町に着く頃には、また雨が降り始めていました。

 

 そのまま愛別町まではしり、公園の片隅にスペースを見付けると、再びテントを張って、コンビニで買ったワンカップを空け、そのまま夢の中へと入ってゆきました。

 

 どれくらい眠っていたでしょうか、目を覚ましてテントを出ると、公園の片隅に石造りの祠が見えました。

 

 かなり立派な造りで、歴史のある建物のように思えました。

 

 その祠の中に、地下へと続く階段が見えました。

 

 何があるのだろうと思い、好奇心が募り、ドキドキしながら石の階段を下りてみました。

 

 鳥居の幅ほどの階段の先は暗くてよく見えませんが、不思議なことに、下るに従って暗さが薄れてきます。

 

 そして階段を下りきった先の、城門のような扉に近づくと、自動的に扉が開きました。

 

 その扉の奥の部屋の中には、赤ら顔の大男が台座の上にあぐらを組んで、私を睨み付けていました。

 

 「えっ、もしかして閻魔様? 私はもうお招きにあずかったのですか」と訊ねてみました。

 

 すると閻魔様は即座に、

 

 「馬鹿者! 64、5歳の未熟者が何を寝ぼけたことを言ってるんだ。早く帰れ、もう二度と来るな。」と、一喝されてしまいました。

 

 チャンチャン。

 

 大変失礼致しました。

 

 とても暇だったので、どう書いたら面白いだろうかと、シュラフの中で考えていたことです。

 

 

 9月14日

 

 テントの中で目を覚まし、外に出ると、朝の空は青く澄み渡っていました。

 

 何時ものように、ジャムパンとコーヒー飲料で朝食を済ますと、愛別の街を出て、比布町で国道40号線に入りました。

 

 

 周囲に広がる稲田の上には、昨日の雨が嘘のような、秋雲をたなびかせた空が広がっていました。

 

 

 道路脇のオオハンゴンソウが、秋の稲田に彩りを添えていました。

 

 

 そして、秋の到来を告げるこんなものも。

 

 

 来るべき冬に備えて、彼らも忙しい季節を迎えたようです。

 

 

 

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三国峠を下る 旅と人生ごっちゃごちゃ

2015-10-06 00:14:11 | 自転車でコスモスの島へ

 

 三国峠のトンネルに入りました。

 

 少し登り坂になっていますので、最高地点はトンネルの中なのかもしれません。

 

 このブログを書くに当って、確認の為に「三国峠 北海道」で検索してみました。

 

 すると、ウィキペディアに「三国峠は北海道の国道の中で最も高い峠である」と記されていました。

 

 と言うことは、国道でない峠で、三国峠よりも高い場所があるのかもしれません。

 

 あるとすれば、大雪山か日高山系だろうと思い、地図を探したのですが、分かりませんでした。

 

 どなたか、ご存知の方、いらっしゃいませんか?

 

 

 トンネルを抜けると、目の前に下り坂が続いていました。

 

 

 当たり前ですが、ペダルをこがなくても、びゅんびゅんと自転車は進んで行きます。

 

 風が冷たくて、ウインドヤッケを着るべきだと気付いたのですが、ブレーキをかけるのが勿体無くて、そのまま突進しました。

 

 

 自転車で坂を下るという、労せず、努力もせずに成果が得られるという経験は、そうめったに得られるものではありません。

 

 今までの60有余年という永い年月を振り返っても、高校生の頃に、最後のお年玉をもらって以来のことかもしれません。

 

 

 あまりにも楽ちんで、心地好いので、坂を下る自転車の上から、数えきれぬほどに写真を写しました。

 

 

 交通量は少なく、通行人やオートバイも現われませんので、私の為に道があるようなものです。

 

 

 やがて国道273は由仁石狩川を越え、

 

 

 

 その先で石狩川本流に掛かる高原大橋を渡りました。

 

 

 そして、何ということでしょう。

 

 高原大橋を過ぎた辺りで、ぬれ手に粟だった下り坂は終わりを告げたのです。

 

 再び、努力しなければ成果が得られぬという、厳しい現実を悟らしめる、あの登り坂が待っていました。

 

 

 怠惰の後に求められる努力ほど辛いものはありません。

 

 こんなことなら坂を下りなきゃよかったと思っても、後悔先に立たず。

 

 旅と人生がごっちゃごちゃになったような気分で、最後の坂を登りきりました。

 

 そして、その先のトンネルを抜けると、

 

 

 霧に濡れた国道273号線の最後の路面が、大雪ダムの上に姿を見せました。

 

 

 大雪ダムから見下ろす層雲峡は、谷の中に雲が流れ、僅かに色付いた木々が、秋の到来を告げていました。

 

 

 この後私は、安堵の思いを胸に層雲峡まで下り、小さな空き地にテントを張りました。

 

 この日は120㎞程の距離と、1000m程の標高差を、10時間30分前後で走破したことになります。

 

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