以下は原稿ですが、読んでいただければ幸いです。
皆さん、ありがとうございます。始めに、体験談を二つ聞いていただきたいと思います。
一つ目は、神さまに手紙を書いた話ですが、わたしは50歳の時に会社から○○組合という労働組合に出向を命ぜられて、そこで3年間在籍し、○○○の○○会社10社を担当していました。その頃は、バブル崩壊後の不景気が続いていて、どの会社も経営を維持するのがやっとという状態でした。そんな或る日、一つの小さな会社の組合員から「社長がボーナスを出すと言っていたのに、今になって一銭も出せないと言いだした。なんとかしてくれ」という連絡がありました。
それでその会社へ交渉に出かけたのですが、交渉しているうちにお互いにだんだん頭に血が上って声が大きくなり、交渉というより、喧嘩口論しているような様相になったんですね。社長にすれば、先行きが不透明ですから倒産の不安もあったろうし、わたしはわたしで組合員の負託にこたえなければいかんという訳で、お互い譲れなかったわけです。
それでその交渉している部屋は間仕切りされているんですが、天井近くは開いていて、近くで事務仕事をしている人たちに聞こえるんですね。その従業員の中には40歳ぐらいになる社長の娘さんがいるんですが、その娘さんがたまりかねたのか私たちのところにやって来て、「お互いにだいぶ頭に血が登っているようですから、それでは良い交渉もできないと思いますので、また後日、あらためて交渉ということにしたらどうでか」と、こう言ってですね、仲裁に入られたんですね。その途端、何か悪いことをしていたような恥ずかしさを感じて「失礼しました」とも何とも云えず、すごすごと事務所を引き揚げたんですね。そして道を歩きながら、娘さんに仲裁に入られたことが何とも情けなく、自分がやくざの借金取りと同じことをしていた気がして、家に帰ってからも悶々としていました。
そして、悶々としながら「こんな無様なことになるのも仕方がないじゃないか。分かってもらいたい、聞いてもらいたい」という気持ちと、「会社は経営が苦しいし、組合員にすれば、ボーナスなしではやって行けない。こんな問題を、どうやってこの自分が解決できるんだ」と、神さまに訴えずにはおれない気持ちになり、手紙を書こうと思いついたんですね。それでパソコンに向かい、手紙を書きはじめました。そして神さまにわかってもらいたいと思うもんですから、一生懸命、順序だてて事の顛末や社長の言い分、組合員の言い分、そして間に立っている自分の気持ちなどを書いていったんですね。そうしたら、悶々としていた頭もだんだん冴えて来て、書き終わった時には、「よし、これで良し」と自分の書いた手紙にすっかり満足して、それを印刷して封筒に入れ神棚に供えました。
そしたらですね、それからボーナス支給日まで1ヶ月半ありましたが、その間、ウソみたいにこれっぽっちも気にならず、本当に雲ひとつない青空のような心境でいることができ、それが本当に不思議でした。それでその後一度も交渉しなかったのですが、ボーナスはどうなったかというと、ちゃんと出たんですね。その時は本当に組合員以上にうれしかったですね。しかし、ボーナスが出たことは会社だって経営が苦しいのですから、神様がそうしてくれたとは思いませんが、とにかく、普通なら気になって仕方がないはずのところを、一つも心配せずにすんだことが本当に助かりました。後にも先にもこの時ほど真剣な気持ちで神さまに向かいあったことはなく、下手な交渉をしたおかげでこのようなよい経験をさせてもらいました。また、神さまに手紙を書くことがこんなにも素晴らしい効果があることも知り、その後、2回神さまに手紙を書いたことがありますが、この時ほどではありませんが、2回ともうまくいきました。つづく